第23話 二回否定しておきます
「レングスの外地は自然が豊富な所にある。その代わりジャングルを歩くような物だから綺麗な地面はないし休める所も殆ど無い、心してかかれよ」
などとディンゴは申しており。カリダリ外地とはえらい差だね。
防湿処理をするために一度エリーさんのお店を訪れる。
「これはこれは雪菜様。お待ち申しておりました」
「執事さんまいどー。久しぶりに防具の更新に来ました。今回も最新型でよろしく」
最新防具はサイバーパンクシリーズからマジカルスーツシリーズへと変貌しており、防湿はもちろん防汚性にも優れており、おしっこなどを積極的に取り出して分解、外部に放出するなど長期間活動するのにも便利な物になっていた。ぴっちりスーツだからこれまで汚物処理ちょっと面倒だったのよね。
マジカルスーツBLOCK3.34Cを用意して貰っていて、それに着替える。左手は、現在丸出しとなっている。夏芽が自由に大きくなったりするために開けてあるのだ。
「エキストラARチップはジャングルでも動きやすい服装にして、と。これでよし。また来るね執事さん」
「ええ、お待ち申しております」
それじゃあ外地へ出発だ!
レングスでディンゴと合流しドローンで外地まで進む。
「外地ってアルダス村の方にあるんだねえ」
「入り口はあっちの方だな、それからぐぐっと西へ進んでいく」
ドローンを降りたのはあのウンディーネさんの湖だった。
「あれ、ここってウンディーネさんがいる所じゃん」
「お前も来たことがあるのか? ウンディーネが門番で、気に入られなければ入り口すら通れないんだぜ」
「来たも何も、みんなとは親友だよ」
そんな話をしているとウンディーネさんがやってきた。
うん、綺麗な色をしているし大丈夫そうだね。
「雪菜さーん! お久しぶりです!」
「やっほー。外地に行くためにここへ来たんだ」
「あ、そうなんですね。今連絡を取ります。許可取れたら外地まで一気に運んじゃいますね! そこの男性も一緒ですね」
まじか、あのとき頑張って良かった。
連絡を待ち、そのままウンディーネの集団で運んで貰う。
現在ウンディーネは20数体まで数が回復しており順調に元に戻ってきているとのこと。良かったねー本当に良かった。
おっぱいぷるるんだなーなんて思いながら外地のレンジャーの人――弓に完全特化しており、私より強いと思う――と挨拶したりしつつ川を遡上。一気に外地の中心地までたどり着いた。
「到着しました。ゆっくり楽しんできて下さいね」
「はーい。またね」
レングスの外地はジャングルの秘境に佇む魔法都市といった感じでジダンより魔法の色合いが濃い。
街灯は全部魔導製だと思うし、家のランプも魔導製だな。
こうなるとコンロも、水を出す装置も、全部魔導製だろう。
衣類も魔導型乾燥機で干しているかもしれない。
森を切り開いてはいるものの最小限度なまでにしており調和が取れている。街を囲むようにドーム型バリアが展開されており、森はそれを避けて成長している。
「こりゃあ飽きるまで見ることが出来るな」
「そりゃあ飽きたら見ないだろうよ。ほら、長のところへ行くぞ。俺はもうアポ取っているが、お前のことは左手を治したい人物を連れて行くとしか伝えてないからな」
はーい。そういって病院のマークがある所へと向かう。超巨大空母の影は今のところないなあ。病院と魔法、魔導、といったところだ。
でっっっかい病院の内部へと入り、面談室で待つ。少し待つとドアにノックの音が聞こえ、小綺麗な女性が入室してきた。
「お待たせしてごめんなさい、ディンゴさんと榊雪菜さんですね。あとアキちゃん」
「はい、アキちゃんでーす!」
「元気がよろしい! おばさんそういう子だーいすき!」
つ。つかみはOKなのかな?
「かわいいですよね、アキちゃん。それで本題の要件なのですが」
「はいはい。あ、自己紹介がまだだったわね。私はこのレングス外地を率いる本間洋子よ。日系のプレイヤーなの。よろしくね」
「じゃあ話が早い。ヨネダから排除されたくなければ……」
「おい、そういうのは御法度だぞ雪菜」
「嘘だよ。私はいたって真面目なバグに会いやすいプレイヤーだよ」
「おほほ、お二人は仲いいのね」
「うーん、仲が良いというかんじではなく、会って長いので勝手知ったる仲という感じですね。仲が良いというかんじではなく」
「二度も否定しなくて良いだろ。お前を匿ったの誰だか覚えてないのか」
「本当に仲が良いわ。さて、空母はもう出来ているわ。あとは発注者好みに微調整するだけよ。雪菜さんの左腕はまずは精密検査からね。お二人とも係員に案内させるわ」
というわけで案内してもらいました。機械に通されていろいろと検査したよ。
ついでに血液検査もしたんだけど完璧だった。そりゃあ基本スキルで各種内臓能力向上スキルを10まで鍛えてあるし、上位スキルの内臓強化も5にしてあるし、夏芽に食べさせるために造血も10に強化してあるからね。ついでに傷口修復は20にしてある。
ふふん、と思いながら今度は腕の方の話を聞く。
「雪菜さんの欠損箇所はスパッと切れているので、ここに疑似腕を捻り込む形が良いかと思います。骨髄にぐりぐりとねじ込む形ですね。そうすれば神経細胞と疑似神経細胞がくっつきますので普通に使えるようになりますよ。それで、骨が硬くて超出力のレーザーでもほんの少ししか削れなかったのですが、なにかコーティングしてありますか?」
「あ、液体金属生命体を融合させてあります。手術前に融合を解いた方が良いですかね?」
「え、あの伝説の金属をですか?」
「伝説の金属です。知ってるんですか?」
「レングス外地の医療関係者なら誰でも知っていると思いますよ。伝説の存在だと思われてますが。検査では引っかからなかったな。後で精密検査受けてもらって良いですか、研究用に資料とっておきたい」
あはは……。まあなんでもご自由にどうぞ。
とか言ったら本当に何でもかんでもとられてえらい大変だった。
何でも優しくすれば良いってもんじゃないね……。
手術前には融合解いて貰いたいというので、1週間かけて夏芽が融合を解いた。融合するのも解くのも時間かかるんよね。手術終わったらまた融合しようね。首の骨と心臓の肋骨だけは融合を解かなかったあたり愛を感じた。夏芽大好きだよー! でも手術の邪魔だから解いてね。
特注の手を作って貰うために一ヶ月かかった。まあ日数がかかるのは織り込み済み。毎日小ミッションを繰り返して経験値を稼ぐチャンスと捉えたよ。最近忙しかったしなー。
手術当日! ちょっとしたトラブルがあった。麻酔が効かないのだ。
麻酔も毒と言えば毒。毒耐性5の私には効かなかったのだ! どーしよー!
ヘルプさんに泣きついたらスキルはオンオフが出来るということを再度教えてもらい無事解決。そういえばオンオフできるんだった……忘れてた。
麻酔の睡眠は夢を見ないと言うけれど、この最強強靱肉体人間はそんなことがあるわけもなく、夢を見た、気がする。
紫の巨人が枕元に立つ
「この女は殺すべし」
紫の甲冑が枕元に立つ
「この女は存在してはならない」
紫の騎士が枕元に立つ
「この女のせいで我らは壊滅させられた。存在してはならない」
「コロスベシ。コロスベシ。コロスベシ。コロスベシ。コロスベシ」
「うわぁぁ――」
「お、起きましたよアキちゃん! だから言ったじゃないですか、絶対起きるって」
「――でぃんご?」
「ん? なんか言ったか? ささ、アキちゃんご主人様に一言掛けてやってくだせえ!」
「ご主人様おはようございます! 麻酔が強くて3日間起きなかったんですよ! 死んじゃうのかと思いました」
「3日も。そっか」
麻酔が完全に切れるまで集中治療室で待機。ご飯食べたい。
そしてだんだん痛み始める左腕。痛いってことはくっついてるってことなんだけど。
腕がなくなって久しいから左手を動かすことも忘れちゃっていて、リハビリが必要とのこと。
でも手に入れたよ、新しい腕。これでまた冒険に、冒険に、出れる。
しかし痛ぇ! 骨髄にぐりぐりとぶっさしたからめちゃくちゃ痛ぇ!
痛みが消えるまでまた麻酔で眠らせてくれー!
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