第24話 仕込み
「痛いのは嫌ずら」
「何言ってるんですか。痛くても動かさないとちゃんとくっつきませんよ。ほら、左手に負担掛けますよー」
「本当に痛いんだってば! アキちゃんのバカー!」
そしてぐいぐいと曲げられる接合箇所。
走る猛烈な痛み。
「ぎゃあぁぁ!! 痛い痛い痛い! いたぁぁぁい!!」
「叫ばない叫ばない。ほら、どんどんやりますよ」
「鬼! 悪魔! きつね!」
「きつねなのはご主人様も一緒でしょ。ほら、テレキネシスで引っ張りますから指の運動です。いっちに、さんし」
「ひょああぁぁ!! 神経に響くうぅぅぅ!!」
アキちゃんはテレキネシス10を持っているしステータスだって高い。
ペットな故、私のステータスを元にちょっと低いくらいで基本値は決まっているのだが、ステータス向上系のスキルも軒並み10で持っているから私よりステータスがバカ高い。そんなきつねのテレキネシスに対抗できるわけもなく。
毎日猛烈なリハビリに耐えるのであった。涙がほろり。
毎日リハビリが終わるころには息も絶え絶え。
エッチな吐息が出ちゃうわ、うふん。
「ご主人様全力で呼吸していて、鬼の形相にしか見えませんけど」
「うるさいうるさい、エッチなんだい! 今襲われたら無抵抗で為すすべなくやられちゃうわ」
「じゃあ遠慮なくリハビリの続きを」
「いやぁぁぁぁぁぁ」
ほぉら、エッチな響きだろぉ? 悲痛な叫びに聞こえる奴は全員耳の手術送りにしてやる。
あまりにも痛いので買っちまったぜ、痛み軽減レベル3。上級スキルで高かったけど。
耐性じゃなくて軽減なのは、熱とかかゆみ、皮膚の感触も痛みに入るので
耐性出来ちまうと、そういうのがわからなくて困っちゃうから、ってことらしい。ヘルプさんが言うんだから間違いない。
「痛み軽減とったんですか、じゃあもっと強くリハビリできますね。そーれ」
「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」
助けて、ウチのペットに殺される。
殺されかけること一ヶ月、ついに神の助けがやってきた。
夏芽が融合をはじめたのだ。元々の骨格と新しくぶっささった骨格とを自分をパテにつなぎ合わせてくれた。
「凄い、劇的に痛みが緩和された。凄い動かしやすい。どこかのリハビリより夏芽の融合だね! ありがとう!」
「ちっ」
「アキちゃんが舌打ちした!?」
「私だって精一杯やったんですよーだ」
「それはわかってるよ! デモデモダッテ」
「ふーんだ」
すねちゃったアキちゃんを揉み転がしてなだめつつディンゴの方を考える。そろそろ空母の
と、空母の工房に行ってみると本田さんの許可が必要らしい。へー、秘匿に努めてるじゃない。
んじゃあ行ってみよう。本田さーん。
「あらあら彼氏の方の事情を覗いて見るのね。良いわよ、移動の許可をあげる。はい、これ許可証」
「首から提げる許可証ってこれまた古風な。あと彼氏じゃありません」
あらあらまあまあ。新婚さんみたいねえ。
などと本田洋子は供述しており。
完全に間違われているけどまあ実害はないじゃろ、ということで許可証貰ってとーっとこ走るよ雪太郎。めーっちゃ道のりが長いよ雪太郎。だーいーすーきーなーのーはー。
「ここが空母の工房か。でっけー。四方数キロあるよね超巨大空母だけあって凄いねー。空中に浮かぶんだもんね」
工房の広さを見学していたら超巨大空母が帰ってきた。
へー、超巨大戦艦は動きが遅いのに比べて、空母の方はそこそこ機動力がある。運用方針の差ってやつか。
閲覧席で見てるとディンゴがワープしてきた。
「あれ、雪菜。お前手はもう大丈夫なのか?」
「うん、だいぶ良くなったよ。まだリハビリは必要だけどね」
「そうか、お前の叫びが聞こえなくなると思うと寂しい限りだ」
「お前聞いてたんかい!! 私のエッチなうめき声を!!」
「そら何度かお見舞いに行ったら常に叫んでたんで聞いてたが、エッチなうめき声ってのはどうも違和感が」
「なんでや! エロかったやろ!」
「野獣のうめきといった方が正解かな」
「なんだと! 夏芽、撃て!」
するとパカッと手首が折れて砲身がにょきっと生えてくる。
そしてバキューン。魔導砲が放たれた。
「痛っ! おま、新しい手に魔導砲仕込んだのか!?」
「痛っで済ませるなよ……この魔導砲だって強いんだぞ。いやいや、金属生命体が魔導砲を撃てるように改良してくれただけ。この砲身から刀身も発生させられるよ。魔力も金属生命体が使うから私特に何もやってないです。」
「なにもやってるんだよ! しかし仕込み銃に仕込み武器か。何か凄い方向に進化したな」
全部夏芽キュンのおかげです、ラブラブチュッチュ。
「ずるーい、わたしにもラブラブチュッチュしてくださいよ、リハビリ頑張ったじゃないですか」
「えー痛かったもん」
「アキちゃん、なんなら俺が……」
「お前じゃなーい!!」
アキちゃん渾身のドロップキック。
さすがのディンゴももんどり打って転がる。
「ああ、アキちゃんのドロップキック。幸せだぁ……」
「ディンゴ、お前わざと転がったな」
「え、私のドロップキックですよ?」
「ディンゴは相当に身体を魔導機械に置き換えてる。アキちゃん渾身でも体重が軽いから戦闘時のパッシブスキルがかからない今の状況じゃそこまでの威力にはならないと思うね」
「い、いいじゃねえか、俺は吹っ飛んだんだ! それでいいだろ!」
「おっさんわざとだったんですね、しつぼうしました」
「いや、わざとじゃないって! アキちゃんのドロップキックは最高だったって!」
「もう知りません、ふーん」
「そんな、アキちゃん――。雪菜、てめぇ!」
「もう知りません、ベーだ」
拗ねるアキちゃんを横目に追いかけっこが始まる私とディンゴ。
機械人間じゃスキル人間――しかもおきつね族――を捕まえることなんて出来ませんよーだ。
まあそんなこんなで空母に乗せて貰えることに。もう無人機は搭載済みなんだって。F-56というやつらしい。アメリカのF-55みたいなもんか。
超巨大なので4000メートル級滑走路そのものを2本搭載できるらしく、空軍の飛行機も使えるんだって。
「まあこの点が超巨大空母最大の強さだな。巨大空母じゃまだ海軍のしか使えねえ。空軍のはやはり頭一つ抜けて強い。特に空軍の爆撃機は脳がバグるほど桁違いにでかいし搭載量が違うからな。もちろん海軍の航空機も使えるぜ。海軍はカタパルト発進できるから発進の速さが違う。着陸は海軍の方式でも空軍の方式でもどちらでも大丈夫だ」
「今度の軍事小説にこれ出すわ。動く空軍の航空基地じゃない。B-62は積めるの?」
「現実そのままだと怒られるから、B-72として魔導航空機として積んでるな。B-3シャープネスは魔導化させた以外は現実ほぼそのままで動かしてるしコイツにも積んでるぜ。どちらも数は多くないがな。普通は専用航空基地使うしな」
「何と戦うんだこれ……」
「決戦兵器だな。これが無いとある所には絶対勝てない。5層に追いつくにはないといけねえ。俺たちは超巨大戦艦も超巨大空母も手に入れた。5層に追いついたんだ。拠点を一気に6層に引き上げるぜ」
「無いと勝てないのはよくわかる。私はTSSにおける人間の戦いには殆ど関与してないからよくわからないけど、現実世界の戦争は殆どそのまんまTSSに運ばれてるんだね。いやー現実世界に魔法がなくて良かったよ。こんな兵器があったら戦争がどうなることか」
「手にれた同士では仲良しこよしになるらしいぜ。5層が争った歴史は超巨大シリーズが生み出されて以降は殆どねえ」
「莫大な資産がここに注ぎ込まれてるから怖くて争えないってわけか。これ殆ど私の本からの利益なんだっけ?」
「前も言ったが、本の利益、アキちゃん派からの税金、アキちゃん同盟の利益で大体は作った。お前がいなかった間貯めてたんだよ、俺たちは」
「よかった、私のもんじゃんって言う所だった」
「お前も本を売った利益で作れば良いんじゃねえか?」
「出来なくはないし、わるかぁねぇなぁ」
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