第38話 グッドエンドに向けて 1

艦橋へと突入しようとする私たちに、世界統一の組員達が立ちはだかる。

とりあえず来たのは前衛達。まあそんな怖くはない。

しかし何か様子がおかしい。


「――目線がズレてない?」


まあこいつらには私の銃を掃射して一掃。遠距離舐めるなよ。楽勝楽勝。


って思ったんだけど。


「嘘でしょ、起き上がってくる!?」


「グアアアア」


「あ、バグってます!いくらでも起き上がるゾンビ化してる可能性が高いです!」


アキちゃん、どうすればいいのよ。

聞くところ動きを封じてくれればアキちゃんが波動弾で浄化してくれるらしい。


「頭ぶち抜いちゃえば良くない?」


「それだと死に戻って、予備の武器でまたここにくるでござるよ。彼らは来訪人でござる」


「多分リスポーンポイントは船のどこかにあるぴょん。そこを破壊するまでは出来るだけ無力化していくしかないぴょん」


そんなわけで無力化作業をしつつバグを消していく。ゾンビ化がなくなれた気絶してここに倒れているだけの来訪人になるね。


「しかし全員ゾンビ化になってるとか、世界統一はどうやってこんなことをしたんだろうねえ。作成器機がないとこんなこと出来ないよ」


「脳でも操ってるんじゃないかぴょん」


「ふーん。夏芽、わかる?」


夏芽はするするとまだ無力化しかしていない体に入っていく。

数秒後、拡声器が出現した。


「いんがかんけいはふめいですが、のうをしんしょくしている、えきたいきんぞくせいめいたい、がいます」


「え、夏芽以外の金属がいるってのかい」


「世界統一のトップは2000年以上TSSにいるといっていたでござる。実際はもっと長いかもしれないでござるよ。手に入れていてもおかしくはなかろう」


脳が侵食されているってことは操られているってことかい?

夏芽に詳しい検査を依頼する。スキル解析が欲しいとのご要望を頂いたのですが、目の前に脳が侵食されている人を見て脳に触らせるほど私は心が強くないのです。

アキちゃんが解析するということになった。


「これ酷いですね。脳が侵食されていて行動は液体金属生命体が操ってます。何より心が入っていません。解析のレベルが高いのでわかるのですが、っと、敵襲です!」


敵の第二陣が到着。


「ぴょん子はアキちゃんとその兵士に防壁を張って! アキちゃんは解析を継続! カザリン、行くよ! 今回は弓もいる!」


弓の腕に的確にキアスペシャルの弾丸を打ち抜いて撃てなくさせる。

弓の人の数がはちゃめちゃなので、かなりの数の射撃が飛んでくる。

普通の射撃なら突き刺さってもすぐ回復できるのであまり怖くはないんだけど、弓は属性攻撃や特殊攻撃が豊富に揃っているのだ。


「ぐ……う。雷撃か。少し時間が止まった。デカい艦橋を生かして大量の弓兵が配置されたね。そう簡単に避けられる練度の兵士じゃないから、ぐ! くそ、毒か、アンチドーテ! カザリン、そっちは大丈夫!?」


「弓は当たらないでござるが前衛の数が多すぎるでござるな、防戦気味でござる!」


「しょうがない、撃つか! いくよ夏芽! 爆発性マジカルミサイル100連射!」


艦橋を破壊したくなかったので封じてたんだけど、数が多すぎるので爆発性のマジカルミサイルを解禁。キアスペシャルから撃ったんで速度は十分威力も申し分なし。一気に弓兵の処理に成功した。艦橋の外側ボロボロだけどね。あと死に戻ったやつも結構いると思う。


弓が処理出来たので次は前衛を叩く。まあ、銃で一掃ですわな。どんだけどれだけ重装甲でも、夏芽がマッハ5以上の速度で飛び出すキアスペシャルの前には装甲なぞ無いも同然。ホーミング付与で確実に太ももに当て、太ももを粉砕する。動けなくするための処置。痛いのは知らん。


瞬く間に動けないゾンビの群れが出来上がった。400人はいるかなー?


アキちゃんの話の途中で襲撃が始まったのでその話を聞いていない。

今襲撃が止まったし、話を聞こう。


「それですね、心が無いんですよ、ログインされてないんです。運営に確認とっても良いと思いますが、体だけここにあるんです」


「ログインしてるように運営を欺いてるってこと? ……夏芽、脳の逆侵食開始できる?液体金属生命体をとっちゃえば良いんじゃない?」


「やってみます」


ここでも解析をお願いされたので血液脳関門を開き夏芽を脳に入れさせる。なんだかんだ夏芽が可愛いんだよね、ついつい言うこと聞いちゃう。

ちなみに私は血液脳関門を操れます。スキル持ってます。脳に作用する毒物が入ったとき関門を意図的に閉じれるのよ。


「夏芽、変なことしたら許さねえからな」


「えきたいきんぞくせいめいたいの、ちゅうせいしんを、あまくみないでください」


「ゆうてお前隙を見計らって私からスキル盗んでるだろ」


「それはそれ、これはこれ」


「あんたねえ」


夏芽が脳に触った瞬間は一瞬。左肩の下から内視鏡のように触手を入れたと思ったらすぐに出てきたからね。


「どう、夏芽」


「いやー何か、色々な物まで付いてきちゃってぇ。解析だけ取得は無理でした」


「なつめちゃんの声が完璧にご主人様になった。ご主人様の声が二つある」


「おーし夏芽、今夏芽のお仕置きを発表する。ライトニング魔法を私にぶつける! 私は死に戻るから、数日夜風に触れなさい。私以外に寄生できないんだから液体状のまま数日過ごせるよ、やったね液体生命ちゃん」


「すみませんでした雪菜様! 謝りますからそれだけは、液体状で放置するのだけはおやめください! 堪忍やぁ……!!」


必死に謝る私の声を私の声が拒否するというなんだかわからない展開になったあたりで第三陣がやってまいりました。


「面倒なのでこのまま解析続けちゃいます。ホーミング付与付きで私が飛ぶので、適当に連射しちゃってください。この脳をどうにかすればログインしてないって状態がわかってログアウトされるのかわかると思いますので」


そんな感じなので、戦いながら夏芽の解析を待つことに。ゆうて夏芽は伸びるのでそこにいなくていいんだけどね。今までと変わりなし。アキちゃんが前線出でるので波動弾を撃ててバグ取りが楽になる程度よ。


さくっと第三陣も退治し、夏芽の解析を待つ。

その間にカザリンの刀の修復を行う。骨もたたき切ってるから刃こぼれしやすいそうで。 夏芽液に浸して直しましょうねー。


「わかりました!」


「私の声で叫ぶな! で、何がわかったの」


「この液体金属生命体を私が吸収すれば即座に通常の脳に戻ります。ログインされてないこともわかるでしょうし、強制的に体もログアウトされると思います」


「私の波動弾でバグ取りする必要は無いのですか?」


「バグを吸収することになるので、まずバグをとってから私が吸収します」


私が頭いいこといってる……。


「私のスキルにあるバグ特効は効果無し? 2まで育ってるけど。育成方法が無いんだよね。妖精さんに貰ったスキルだからかな」


「ちょっと貰いますね」


許可を出す前にシュッととっていく夏芽。お仕置き3日追加な。


「バグ取れていない個体ください」


ほいよっと放り込まれるゾンビ君。まだまだゾンビいるからね。


「うーん、あ、取れますね。バグの解除としての効果はありそうです。これなら私が細かくなって脳に侵入すればバグとりつつ液体金属生命体を吸収してログアウトさせることが出来そうです」


「おーさいなら良かった。一個一個やっていくのは面倒すぎるからね。そいじゃあこの700体前後をまずは一気にやってもらおうか」


「わかりました」


ピュピュピュピュっと私の左手の指輪から夏芽が飛び出していく。そして人形の形になり……。


「この人形まるっきり私じゃねえかよ。しかも下着しか履いてねえ。もっとデータ無いの?」


「無いですね。記憶を頂いているのは夏芽様だけなので」


「死に戻っちゃってもいいから何体かバグ取ったあとに脳味噌食べちゃってよ。そうすればデータも集まるでしょ?」


渋々従う夏芽。何体か食べたみたいで、人形がバニースタイルの私になった。きみねぇ。わざとでしょ。


「バニー軍団、いけ!」


「いけじゃないんだよ夏芽君。声のデータも手に入れたはずなんだから声も変えてよ」


「これは死んでも譲りません! 雪菜様ラブラブチュッチュ」


もうなんだよ本当。そんなことをしつつ700体前後ある敵の群れを一気にログアウトさせる。


「よし、じゃあ艦橋に突っ込もう! 私が前に出るね、銃で夏芽を付着させてログアウトさせちゃうから」


「ぴょん子が障壁はるぴょん。鉄壁の守り!」


「拙者がバックアタックを警戒するでござる。こちらは背面であるため問答無用で切り捨てるでござる」


「じゃあアキちゃんがカザリンを守ります!」


ときの声を上げろー! 突っ込むぞー!

なお入り口はマジカルミサイルで作ってある。出入り口の扉わからんかった。

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