ゼロからはじめる異世界ゲーム生活

「おばんでーす。みんな始めてる?」


 L85-5番開拓地、つまりアルダス村の酒場に到着する。そう、最近酒場が出来たそうだ。


「お、本日の主役のお出ましか」


「やあ、雪菜殿」


「よう雪菜、ありったけの食材を用意したぜ!」


 ディンゴにオットーさん、アルダスさんが出迎えてくれる。


「おっすおっす。もう少ししたらソフィアさんにカザリン夫婦も来ると思うよ。来訪人組、さすがに今日はライドしないでね」


「それはこっちの台詞だよ、お前が一番ライドしてるんだからな、アキちゃんを」


 そうディンゴが突っ込む。まあ確かに私が一番ライドしているかもしれない。


「そういやディンゴ、世界統一はどうなったの?」


うまそうに鶏肉のステーキを食べていたディンゴがこちらを向く。そのまま喋ろうとするのでまず飲み込ませた。口も拭き拭きさせた。


「くー、うめぇ。ええとな、運営によって全部消されたよ。団員はほぼ全員が操られていて、操られていた連中は現実ではログアウトしていたからな、ログイン詐欺という重大な違反でアカウント凍結された。どうやら金で関係ない人にアカウントを作らせていたみたいだ」


「あー、だから運営に連絡がなかったのか。普通なら脳を取られてログアウト、再度ログインしようとしてできないなら運営に連絡いれるもんね」


「グリムなんたらは完全追放だ。既存アカウントは消されたし、新規アカウント作成ができない。おまけに生体情報を取られたからもう運営を欺けない。どういう人物かは秘匿されたんでわからねえ。運営がここまで動くってことは相当なことだ」


「そっか。バグ組織はもうないんだね」


「バグには雪菜をぶつければなんとかなるな。バグを破壊する女神様だ」


 いやー、それはどうなんだろー。バグ触るの嫌なんですけどねー。


「それで種族の女神様よ、唯一の信仰者であるアキちゃんはいつ来るんだ?」


「オットーさんがそこまで述べるの珍しいな。そろそろ来ると思うよ。衣装を恥ずかしがっていたから、来たら盛大に出迎えてあげてね」


 アキちゃんより先にソフィアさんとカザリン夫婦が到着する。

 ソフィアさんの服装とても綺麗だね。夜会に出るような衣装だ。

 全部終わっためでたいめでたい大打ち上げ会だから、気合い入れたんだな。


「おいおい、カザリンさんとぴょん子さんはタキシードにウェディングドレスかよ。アキちゃんが霞んじまうぜ」


「まあまあディンゴ。こんなに集まってワイワイできるの今日だけだから。みんなえらい人忙しい人で予定合わせるのかなり無理があったんだから。どざぁるちゃんやキアちゃんも加わってくれるんだし」


「拙者達の結婚まで祝って貰えるとは、なんて幸せなことでござろうか」


「精一杯祝って貰ってね。それでぴょん子、妊娠何ヶ月目なの? バグ禿げ野郎との最後の戦闘の時に、既に妊娠してたとはねえ。逃がして正解だったよ。やることやってたんだねえニヤニヤ」


 ぴょん子が恥ずかしそうに体をよじる。


「もうすぐ4ヶ月目だぴょん。兎族同士だとそろそろ出産なんだけど、かざちゃんエルフだから12ヶ月程度で出産になりそうだぴょん。エルフは出産がお遅いぴょん。もろに影響食らうぴょん」


「そっか、良い子を産むんだよ」


「頑張るぴょん。男の子でも女の子でも、雪菜の名前を一文字貰うぴょん」


「ありがと。良い名前つけてあげてね。赤ちゃん見るのが楽しみだわ」


 そんなことを喋っていると、キアちゃんとどざぁるちゃんが合流する。


「こ、こんばんは。なんか凄いところに招待して貰って恐縮です」


「なんで私たちが招待されたんだにゃあ……」


「恩人だからね。どっちの武具も大活躍したんだよ。あ、今日ジュディ呼んでるからどざぁるちゃん会いに行きなよ。ファンに会えるの楽しみにしてたよ。ただ、一般人がここにいていいのかって震えてた」


 するとどざぁるちゃんの目が変わり。


「ジュディ先生いるのかにゃ!? どこ! どこにゃ! 一度ご挨拶にいいいいきたいにゃ!」


 叫び始めた。いいかんじにくさっておる。


「お、アキちゃん来たね。アキちゃーん、入って来なー」


「は、恥ずかしいです」


 そう言いながら入ってきたアキちゃんは、王族がつけるような豪華なドレスを身に纏っていた。


「す、すげえぜアキちゃん! くーこれが同士にライドできないとは!」


「アキちゃん、かわいいね」


「これは綺麗って言うんだぜ、オットーの旦那。いやーアキちゃん、今までで最高に綺麗だなあ! ガハハ」


「アキちゃんはあの禿げを完全消滅させたから最大の功労者だもんね。一番着飾らないとね」


 そう、アキちゃんの一撃で全てを消し去ったのだ。禿げが私に打ち込んで私を蝕んでいたバグも。


「そういえばご主人様のバグはどうなったんですか?」


「んー別にどうってことは無いんだけど、所持していたスキルとステータスを完全に壊されちゃった。経験値システムも壊れちゃったかな。ステータスは買い直せるけど凄く料金が高くなったし、経験値が無いからスキル購入はスキルポイントだけ。これでまーた最初からだよ。でもまあ、私にはおきつね族の女神による一族支援モードもあるし、なによりこの子がいるしね。出ておいで、夏芽」


 そういって夏芽を呼ぶ。夏芽は私の指輪からするすると液体を出して――私の体を模して人間になる。


「ふ、服着て!」


「今作ってます、雪菜様」


「今度から服から作ろうね!」


 銀色とはいえ私の体だ、ディンゴとか顔真っ赤にしてる。酔ってるわけではなさそうだ。


「ま、まあ。夏芽がいるからなんとかなるよ。禿げが飛び散らかした液体金属も全部吸収して、膨大な量の液体金属を内包したしね。ほら見て、これ」


 そういって左腕のブレスレッドを見せる。


「指輪じゃ容量足りなくなってブレスレッド2個作ることになっちゃった。銀色と赤色のブレスレッド、結構似合うでしょ?」


「ご主人様、凄いですー!」


「バグなんだから直せねえのか? お前でもキツくないか?」


ディンゴが問う。


「まあそうなんだけど、直すとアキちゃん消えちゃうからね。女神の力が強くなって、一般NPCとして生まれ変われさせればアキちゃん消えなくなるから、それまではこれでいくよ」


「長い道になりそうだな。ま、なんかあったら言ってくれや。お前はアキちゃん派副総裁だからよ、手伝えることは手伝ってやる」


「キモい人がデレてキモいけど、御主人様のお手伝いをするとは偉いですね、頭なでてあげましょう。撫で撫で」


頭を撫でてもらい男泣きをするディンゴ。うーん、キモい。まあ利用させてもらいますかね。



 そんなことをしている内にカルダリとレングスの外地の人も、妖精さんもきて大宴会となった。


 今回は巻き込まれて大騒動になったけど、ま、私にかかればこんなもんよ。


 よーしスキル集めてステータス伸ばして! 再度頑張りますか!


 またまた、ゼロからはじめる異世界ゲーム生活だー!!

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ゼロからはじまる異世界ゲーム生活~27年ぶりにログインしたら最強はペットのアキちゃんになってました。どうしよう、ペットにステータスが敵わない。助けてください~ きつねのなにか @nekononanika

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