第4話 旧友と再会

 4大都市レングスには少しだけ時間がかかって到着した。

 ジダンから遠いというのもあるけど最短ルートが消滅していたからなのだ。消滅て。消えちゃったよ。

 レングスとジダンの最短ルートにほど近い悪人街、ヘックスがあるのだが、この20年で規模を大きくしルートを塞いでしまったのだ。

 つまり最短ルートを通るにはヘックスという不良やヤクザのたむろっている街を通らないといけない。

 それはいやですわ。

 歩いていたら山賊でたり、輸送船で移動していたら攻撃船登場して荷物ぶんどられたりしそう。

 なので今は速達便とかしか通ってないらしい。みんな迂回してる。


 私たちも迂回して、4大都市ドティルティを経由してレングスに入ることになったよ。

 4大都市はジダンを中心に4つの頂点をとるように成立しているので迂回には時間かかったね。レクチとか経由した方が早かったかな? 今度新最短ルート控えておこうっと。


「ひとまずレングスに到着! 懐かしいなあ」


「ここでアルダスさんの開拓地の場所を聞き出して、そこに行くんですね」


「そゆこと。まずはここの友達と会いに行ってくるわぁ」


 すんごく巨大化したレングスの街をふらふらーと出歩き、友達のショップを探しに行く。場所を変えていなければ今では中心街に建っているはずだ。昔は端っこの方に建っていたんだけどね。


 ふらふら歩くと、人数制限がかかっているのか、行列が出来ている服飾店と遭遇した。服飾店で行列ってのは珍しいね。

 お店の名前を見ると「どざぁるの服屋さん」とある。どざぁるちゃんのお店だ!


 裏口で名前を出せばすぐ入れて貰えそうだけど、ここは堂々と前から侵入しよう。列の最後尾に並び、順番を待つ。


 ――2時間後――


「やっと入れたー。作るの機械化したのかな、洋服の種類が豊富だわー」


 この世界は実用性のある洋服の上に見せ衣装をAR化して重ねて着る上書き表示のが普通なんだけど、どざぁるちゃんのお店にはどっちもある。洋服は何でもござれである。

 ラインナップには榊雪菜シリーズとアキちゃんシリーズがあったりして、なんか名前使われてるけど少し恥ずかしい感じもしたよね。私は冒険服、アキちゃんはメイド服がシリーズ化されてた。


「このワンピース可愛いなあ。フレアスカートと合わせたら背も高くなったし見栄えがしそうだ。あーこのニットセーターは童貞に効きそう。Fあるからね。背だけじゃなくて体型も大きくなったわけでね。ボリューム凄く出たもんね」


「久しぶりに拳法着が着たいです」


「アキちゃんはそうかー、昔は拳法着だったよね。今はサイバーパンクスーツにエキストラARで作ったメイド服だもんね」


「エキストラARは外せないです。質感が完全に表現されているARなので、完璧にメイド服を着られます」


 でも拳法着は着やすいんですよーなどと話していたら奥からどざぁるちゃんがやってきた。この人は来訪人だから見た目変わってないなー。どう見ても歩く猫である。


「どざぁるちゃん! お久しぶり!」


「くるならいってにゃー。ゆきにゃとアキちゃん、お久しぶりだにゃ。おかげさまでお店が大変賑わってるにゃ」


「お久しぶりですー。商標権利関係はこのアキにお願いしますね」


「アキちゃん……。もちろん無料で使って良いからね、どざぁるちゃん」


「ありがとにゃ」


 ぺこりとお辞儀するどざぁるちゃん。猫がぺこりとお辞儀しているようにしか見えない。かわいい。せいぎ。


 レングスに遊びに来ただけと用件を伝えると、それじゃあカフェでも行こうという話になりそのまま行くことに。

 3人全員有名人なので歩くだけで人々がざわつく。これじゃ人が多い通りのお店は使えないなあ。


「おっちゃんちゃらすー、3名ですが空いてますか?」


「空いてますよ。ご自由な席をどうぞ」


 流れ流れてたどり着いたのは来訪人がやっている小さなカフェ。

 年季の入った椅子やテーブル、とろりとした色調の照明、店内にはコーヒーの良い香りが漂ってると、雰囲気は抜群。

 店主は年季の入ったおじいさん。

 こういうカフェやりたくてTSSやってるんだろうな。

 リアルじゃこういうお店は本当に少ない。


「まさか榊雪菜さんに出会えるとは。私、いや、ワシは”あっちょんぶりけの大冒険”シリーズの大ファンなんじゃよ、。現世でもTSSでも全巻所持しとる」


「あらー嬉しい。サイン書きます?」


「本当ですか!? あ、本当かの? それは大変に嬉しいが」


 素が出るほど興奮したおじいさんを前に、あっちょんぶりけの大冒険の本にささっとサインを書き上げる。


 震える手でそれを受け取る店主。今日は何時間でもここにいて良さそうだな、うん。


「おっす、雪菜はここか」


「あ、わんわんお!  ここだよー久しぶり! あんまり年取った感じしないね」


 次に来たのはレングスの傭兵の館を取り仕切っているわんわんお。今でも正式な名前は教えてくれないので出会ってからずっとわんわんおだ。名前は可愛いけどでっかいオオカミ系亜人なんだよ。


「俺たち傭兵はゲームの都合上寿命が長いんだよ。傭兵をやめたら普通の寿命になるんだがな」


「そっか、ログアウトして次ログインしたら寿命で死んでましたじゃさすがに駄目だよね。20年以上ぶりだけどなんか変わったことあるー?」


「お前に呼ばれてホイホイで歩くようになったのと、子どもが出来たことだな」


 子ども! なんでも二人いるらしい。18歳と6歳。男の子と女の子。


「へー、息子さんは傭兵家業を継ぎたいんだ」


「何に憧れているのかしらんがな。今はウチで下働きさせてる」


 今度あったら挨拶しようっと。わんわんおの息子とか見てみたいね、どんな顔なんだろう。


 みんなでひとしきり喋っていたら日が沈みはじめたので解散。わんわんおも、どざぁるちゃんも、頑張ってね。

 じゃあ明日はグゥレイトォ!のデキアルの所いってみようかな。


 次の日向かった先はデキアル銃器販売店、ではなくて共同墓地。

 デキアルはなんのバフもついていない本当に本当の現地民。5年前に病気で亡くなってしまったそうだ。デキアル結構高齢だったもんなぁ……。

 お墓には先客がいた。160センチメートルくらいで黒い長髪が特徴の女の子。お孫さんかな?


「あ、こんにちは」


 よそよそしーい! こんなんじゃ引かれるぞ私!


「こんにちは。おじいちゃんのお墓参りですか?」


「そそそそ、そうです。私は榊雪菜と申しまして」


「ふふ、知ってます。おじいちゃんに榊雪菜さんの戦闘シーンの映像やライドをよく見せられてましたからお姿は存じ上げております」


 お孫さんのお名前はキア。デル、らしい。初孫でよくかわいがってもらっていたとか。


「へえ、今はキアさんが銃器店を受け継いでいるのですね」


「ええ、おじいちゃんの店を守りたくて。あ、後でウチに来て下さい。おじいちゃんが作った、雪菜さんのための決戦用カスタム武器があるんです」


 それなら話は速いほうが良いとすぐに移動。また来るぜグゥレイトォ! ありがとうねグゥレイトォ!


「これが魔導銃『イクサXー5』です。超大型フルオートハンドガンで、スキルが揃っている雪菜さんだからこそ扱える品物です。でも圧縮マナタンクがまだ完成していなくて」


「だからXがついてるのね。今の私はスキルがないから扱えないだろうね。スキルが揃った頃に取りに来るよ、それまで圧縮マナタンクの開発頑張ってね」


「わかりました、頑張ります」


 といってグゥレイトォ!の所は終わり。武器を見てもらったけどフェンサーで十分らしい。強い武器使うには、もっとスキルを揃えないとね。



 これで全部回ったかな。最初の大都市、最初の大型イベント遭遇都市だけあって顔を出したい所がいっぱいだ。

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