第3話 三方考えよし、ではなく三方考え全然違う。

 天買人が正式実装されてスキル購入の方法も整備された。


「100経験値で初級スキル、500で中級スキル、1000で上級スキルが購入でき、購入する度に基本なら100経験値ずつ、中級なら500経験値ずつ、そして上級では1000経験値ずつ、取得するための経験値が上昇していく。


「レベル上限は5のままですが、ご主人様だと5以上取れるかもしれません」


「ほう、そうなんだ。上限は後で調べてみようね。今回は300経験値だから初級を3種類か。『目標方向表示』、『GPS』、『ミニMAP』かな。探索スキルは最重要!」


 ということでヘルプさんを呼び出してスキル購入。チャリーンという効果音と共にスキルが購入された。お、今回はスキルのオンオフが出来るようになっているのか。使うかわからないけど覚えておこう。


「よし、これで探索に支障は少しだけしかない。これもレベル上げないとあまり効果ないしね。次は傭兵の館に行くのか。目標方向表示の矢印は転送装置を指し示しているね」


「傭兵の館へ直通の転送がありますからね。ご主人様のおかげで傭兵の地位が向上したんですよ」


「へー、それじゃあ行ってみようか」


 というわけで転送装置でワープ。

 ビュンという音と共に目の前が真っ白になる。

 次に視界が開ければ転送場所へ移動してるって寸法。


「さてと、傭兵の館だけどずいぶんと来訪人PCプレイヤーが多いじゃない。これが私のおかげなのかーむひひ」


「顔がニヤついてますよご主人様。天買人はお金があまり重要じゃないですからね、天買人が使っているのと、現地人NPCプレイヤーを沢山雇えるようにシステム変更が行われました」


 ふーん。まあ中に入ってみよう。


 中に入るとそこは酒場のような感じでお酒の香りがしてくる所だった。昼間から飲みやがって。

 その喧噪を縫うようにして総合カウンターへ近づいていく。カウンターに立っていたのは……。


「ルウラさん! ルウラさんじゃないですか!」


 なんとそこにいたのは前回支援役で大活躍した、僧侶系傭兵のルウラさんだったのだ!


「あら雪菜さん! もう何年ぶりかしら。会いたかったですわ」


「最後に入ったのは20数年前ですけど、別れたのはもうちょっと前ですね。ルウラさん傭兵を管轄する側になってたんですね」


「そうですね、お声がけさせてもらったのでやってみようと。ジダンは現地人も増えましたし来訪人も増えましたし大賑わいですよ」


「それは見ればわかります、昼間からお酒の香りがプンプンと」


 おきつね族になっているので五感が鋭い。本当鼻につくよ。


「あら、わたくしも一杯やっていますわよ。雪菜さんもいかがですか?」


 ガクッ、っとうなだれる私。

 わーいわーいと言いながらお酒にありつくアキちゃん。

 まあ良いか、飲むか。



「ぷっはー生き返る。そっか、アルダスさんも遠くの開拓地へ行ってしまわれたんですね。昔のパーティはもう無理だなぁ」


「みなさんの生きる方向が変わりましたね。わたくしは今経営学の勉強をしていますもの」


「私はご主人様といつまでも一緒です」


 三方考えよし、ではなく三方考え全然違う。

 くだを巻きながら、ほろほろ鳥の刺身を食べる。あー美味しい。歯ごたえが良い。鳥が刺身で食えるあたり世界の中心地ジダンはさすがと言った所か。

 まさに鳥って感じの味がするなあ。たまらん。

 つぎはウナギのオムレツでも食べようか。


「ここの酒場? は現地人が多いの? あまり私だとわかっても寄ってこないみたいだけど」


「そうですね、現地民の酒場です。とりわけ傭兵の酒場ですかね。どれだけ有名人でも自分に関係ない人には傭兵ってあまり絡まないので」


「ふーん。まあ過ごしやすくて便利だね。来訪人はここでも現世といっしょでさ、私ってだけで騒ぐからなあ」


「このウナギおいしいです! 卵と一緒に食べるとふわとろ食感!」


 そうか、美味いかウナ太郎。


 この後も少し飲んでからめでたくミッションクリアとなった。わほーい。


「これで残るは大ミッションだけ。目標方向表示の矢印はレングスの方を向いているけど、どうだろ」


 レベル1のスキルじゃ全然当てにならないからねえ。


『オーバードライブして見てはいかがでしょうか。新スキル[臨時購入]がありますのでそれで一時的にスキルを補うとよろしいかと』


 とのことです。ヘルプさんが言うならそうなんでしょう。


 戦闘スキルだと言うことなので館の外に出てオーバードライブを発動。システム整備されてからのオーバードライブは初めてだなあ。

 整備される前のオーバードライブは接続者の魂と接触アクセスして爆発的な能力と一時的なスキルを扱えるようになるシロモノだった。恐ろしく強かったけど今考えるとデータの塊が魂と接触アクセスするなんておっかねぇにもほどがあるぜ……。


「ん、なにこれ、オーバードライブにもレベルがあるのか。3まで出力上げてみようか」


 どどーん。周辺の岩がヘコみ、魔力が原子化しマナとなって外に放たれる。気のオーラを纏っているようになってら。

 爆発的な能力の向上はなくなったけど、割合で能力向上が行われるらしい。私バカみたいにステータス高いからなあ。世間一般的には爆発的に能力向上しているのではないだろうか。

 いきなり魔力が3割くらい上がったら体内から魔力があふれ出てしまうのも無理はない。


「ご主人様出力上げすぎです! 自然が害されてますよ!」


「んでも『オーバードライブ』の出力上げないと臨時購入が一杯出来ないって今し方ヘルプさんに言われたんだけど」


オーバードライブのレベル1つにつき3レベル取得してあるスキルを購入できるんだって


「じゃあ『目標方向表示』に4振って、『目的地の座標』でも4振ってください。レベル5のマックスレベルでスキルが扱えます。あ、目的地の座標は取得しないといけませんね」


「りー」


 ということで目標方向表示と目的地の座標を5と5にする。

 あ、臨時購入で使う資源はドルエンだわ。私臨時購入無限に出来るな。


「目標方向表示はこっち方面。んで座標はXがこれこれで、Yがそれそれ。Zがこんなかんじ」


「傭兵の館MAPによれば、アルダスさんの開拓地に近いですね。よってみたらいかがでしょう、よければ、ついでに開拓地に傭兵を運んでいただけませんか? 私が依頼した通常ミッションですよ」


『通常ミッションというのは、デイリーミッションではなく、普遍的に存在している頼み事や困りごとをミッションに変換した要素です。クリアすれば様々な報酬が貰えます』


 ヘルプさんの説明が脳内に響く。


「ほーん? つまりアルダスさんに出会うチャーンス。傭兵はお任せあれ。何人持って行けば良いんですか? 5人? 10人?」


「ざっと200人ほどと雇用契約してください。今の名声に加え、傭兵女王の称号をお持ちでしたらこれくらいは余裕で運べます。護衛の傭兵だって契約できてしまいますよ」


 多過ぎ!


 まあ運ぶには問題ないのでジダンの船着き場で輸送船「ATHー200」を借りて乗船してもらうことにしたよ。「A」クラス 「T」ransport 「H」umanの輸送船。クラスがAなので数日でレングスに到着するでっしゃろ。そこから開拓地へブーンだね。


 護衛の傭兵も雇えるということで、おっぱいのおおきいおねーちゃんとしりがきれーなおねーちゃんを……選ばずに、前衛一名と後衛一名を見繕ってもらった。


「我はシャドーエルフのカザリン。剣術が得意だ。よろしく頼もう、傭兵女王」


「あたしは支援系魔法使いのぴょん子。回復も支援も、攻撃しなければ何でもござれ! よろしくぴょんっ」


 こわ。個性的でこわ。

 ござるっぽいシャドーエルフさん2メートルくらいの身長と、140センチあるかどうかのパリピうさぎ亜人さん。

 まあ気に入らなければ外せば良いし、護衛してもらうか。

 よろしくねー。

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