ゼロからはじまる異世界ゲーム生活~27年ぶりにログインしたら最強はペットのアキちゃんになってました。どうしよう、ペットにステータスが敵わない。助けてください~
きつねのなにか
第1話 久しぶりのログイン
フルダイブ式VRMMO「The Second Story」
内部ではどんなことでもできる、どんなことも起こせると聞いて、私、超天才高校生作家「榊雪菜」も参加した世界。でも私はログイン障害によってバグまみれの身体になってしまう。
システムの正常な機能は動いていない。ログアウトも出来ないし、死に戻りポイントが作成できないから死んだらどうなるかもわからない。
バグを直せる能力を持つ天然きつね娘「アキちゃん」と共に旅をして方法を歩き渡り、空中戦艦などに乗ったりもして、今回のバグの根本「私」を直して大団円だったのだ。
通称「雪菜騒動」ってやつである。
私がバグって転職した職業は「天買人」というバグ職業で、お金でスキルと特徴を買う職業だったんだけど、雪菜騒動の後に正式実装されることになったそう。スキルを買うのはお金じゃなくてスキルポイントと経験値に変更になったそうだけどね。金に物を言わせて最強になることは出来なくなったらしい。ちっ。TSS内で大々的に小説を売りさばいてスキルのためのお金を稼ぐ計画がいみなくなっちまったい。
雪菜騒動から半年、高校生だった私も大学生になり、いろいろとドタバタの生活も過ぎ、高校卒業と同時に飲めるようになったお酒の味を覚えて吐き倒し、大学でも寄ってくる人間は私の資産(世界四位)を狙う人ばかりで辟易とし、そしてこの世界に戻ってきたのである。この世界なら自由。資産で寄ってくる人もいない。まあ、こっちにも資産はあるけど、ね。
さて、季節はゴールデンウィークでこれから五月いっぱいはほぼ休み。ノンビリしてくるぞー。ヨネダグループの作った意識加速技術も性能が上がって一日だけで内部空間は驚くほど早く進んでいると言うし、ながーいバカンスを楽しむのだ。ぐふふ。
さっそく世界二位の企業グループであるヨネダグループのネットカフェに入店して、ネットダイブするための準備を進める。フルダイブするタイプのネットダイブは栄養補給も下の世話もするので、専用スーツに着替え専用機械でネットダイブするのが普通なのだ。
そういう設備が必要だからフルダイブする際は専用のお店に行くのも普通。なーんかここらへんえすえふだねぇ。
ちなみにネットダイブするのも種類があって映画鑑賞からクリエイター用カフェまで様々だ。
クリエイター用カフェは意識加速技術が凄い高度で、現実の一日が内部の一年とかもざらにある。私も利用している。どうしたって執筆やお絵かき、NFTアートは時間かかるからね。精神と時の部屋は利用するっきゃないよね。私は内部半年もこもって十冊も書いてくれば凄い額の印税がはいってくるんですよ。ぐふふ。
執筆用の最新設備は私の家に配置してある。ヨネダ最高の力の粋を集めて作った設備だけど、あんま使わん。ネットカフェでやるから良いんですよ。
ネットダイブするための準備が整ったのでさっそくネットにダイブする。ネットは電子空間の通称で、ネット上に町がある。そこにはいろんな広告やただ歩いている人、電子ドラッグ(さけ)でラリっている人がわんさかいる。昔思い描いた電子空間がここにはある。その電子街でもひときわ大きな施設に赴く。TSSのログイン設備だ。そそ、ネットにダイブして即ゲームにログインではなく、一度電子街にはいってからログインし直さなければならない。
これはちょっと手間だけど昔の設計だからしょうがない。二段階手法によるセキュリティの確保もあるってことらしい。
受付を済ませ個室へ入り、首筋にあるジャックインポッドに個室からにょきっと伸びているケーブルをぶっさす。ここからがTSSの世界だぜ! いくぞいくぞいくぞ!
TSSにダイブすると目の前に巨大な大地と大空が見えてくる。ダイブした瞬間、空中から投げ落とされているんだが、降下速度がゆっくりなのでびっくりするのは最初だけ。
ただ、この瞬間がTSSにきたぁ! って感じがするんだよね! どこまでも蒼い青空と、どこまでも広大な大地が目の前いっぱいに広がったらやっぱり凄いよ!
んで、地上真下に見える超絶巨大都市はジダン、この世界で最も大きな都市だ。なんか前より拡張している気もするね。常に拡張している都市なんだけど、なんか前よりもはっきりと大きい。内部時間で大体だけど20年ほどここに来なかったから見慣れていないだけかな。
まあええか、ディンゴあたりに聞こーっと。
私が最後にログアウトした場所は自宅の寝室。ジダンの高級街「四階層住宅地」の、しかも特等席だ。お金あったからね、買っちゃったよね。
身の回りのことはメイドさんを雇って行ってもらっていたので多分綺麗なはず。アキちゃんもいるかな、行ってみよう!
ログインする所を決めると、ぐぐっとGがかかって飛ぶ方角が固定されてスピードアップ。ぐんぐんと落ちていき、視界が真っ白に。そして――。
「無事にログイン成功っと。ちょっと緊張したよね」
ログイン事故でTSSから出られなくなった身としてはやっぱりログインは気がかりだ。
別にまったく入っていなかったわけでもなく、ちょこちょこ短時間ログインはしていたんだけど、気にならなくなるまでには時間がかかろうという物だ。
「むむ、ご主人様がログインしたのにお出迎えがないぞ。これは遭難したな」
普通ならアキちゃんが突っ込んでくる勢いで出迎えてくれるのに今回はそれがないもんだから、勝手に探偵活劇物をはじめる私。
アキちゃんは前回バグまみれだった私のデータからバグを取り除き、これまたバグまみれで機能していなかったヘルプさんというシステムをバグから解放するために生まれたきつね亜人の少女。
鬼可愛い。
だが、その役目が終わった今でも存在は消えず、私の特殊ペットとして登録されている。私は特殊職業の「天買神」だし、特殊コンビである。
「ふーむ、ベッド周りには埃一つ落ちてない。アキちゃんのかわいいおきつねしっぽからの脱毛はなさそうだ」
そういいながら自室をぐるぐる回る。ふーむ、本棚、サイドテーブル、明かり取りの窓の縁、どこをとっても埃がない。とても艶やかだ。やはり高級メイドを雇っただけのことはあるなあ。困ったら高い金を払え、困る前に高い金を払え。昔からの格言は本当である。
「しかし、私がこんなに歩き回っているのにアキちゃんがお迎えに来ないってのはなんでだ?」
前回の最終場面で私はハーフエルフからアキちゃんと同じおきつね族に種族チェンジされた。だからおきつね族の鋭い五感は持っている。んでもアキちゃんの気配は見当たらない。
「寝ているとも思えないしな。この件、なにかからくりがある……!」
ようしと腕まくりをして自室を出ようとドアを開ける。
ガチャ、ガンッ!
「痛たっ!」
「え、アキちゃん? なんでここに?」
なんとそこには頭をドアにぶつけてうずくまっているアキちゃんがいるじゃありませんか。
「なんでじゃないですよ、鍵がなくて入れなかったんです!」
「あ、全部の鍵持ち込んでログアウトしたんだっけ?」
「そうです!」
「そのわりには埃一つなかったような」
「ご主人様が掃除用ナノマシン散布機を設置しているから、この家に埃が落ちているわけないじゃないですか!」
「あ、そだっけ」
「ログインを感じたので部屋の前で待機していたらおもいきり弾き飛ばされるし! これじゃせっかくお出迎えしようとしたのに全部台無しじゃないですかぁ! うぅ、うぅ」
アキちゃんは今にも泣きそうだ。アタフタ、ワタワタ。
「そ、その心が嬉しいよ。アキちゃんバンザイ、アキちゃんバンザイ!」
「もう拗ねちゃったのでそんな言葉効きませんー」
「拗ねた姿も可愛いよ! ライドして『アキちゃん派』のみんなに見せようねーライドオン!」
そういってシステムを操作し、私の身体や感覚を視聴者と同期させる「ライドシステム」をオンにする。昔はこれで経験者のライドを視聴して、体捌きを学んで、緊張感とかを感じて、冒険の糧としたもんだ……。
「ライド通知行ったな、二十万人が
「ご主人様の馬鹿ー!」
ズドドドド、と逃げ去るアキちゃん。それを追いかける私。
「逃がさないよアキちゃん!」
「スキル『隠れ蓑』!」
「くそ、見えなくなった! 雪菜騒動の最後に私のスキルを全て取り込んだからほぼ全てのスキルをレベル10で持ってるんだよなあ。いいなーいいなー、ご主人様は寂しいぞ」
わざといじけてみたら背後からぞくりとするような声で。
「私も寂しかったんですよ」
「ヒィッ」
「謝る準備は出来ましたか」
「アキ様寂しがらせてすみませんでした」
虚空へぺこりと頭を下げる。するとアキちゃんが隠れ蓑を解除して後ろから飛びついてくる。
アキちゃんは身長120cmしかないし身体も軽い。きつね亜人だからなおさら。それがぽふっと背中に乗っかった感じだ。
「お帰りなさいませご主人様!今度もまた一緒に遊びましょう!」
「うん! またよろしくね!」
それじゃあ新しい冒険をはじめようか!
あ、ライド切ってない。60万人にこの触れ合いを見せてしまった……。
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