第30話 あきさま
この話には明確に残虐なシーン、拷問に近いシーンが描写されています。
R15ではありますが閲覧する際はお気をつけください。
話の要点
TSSに帰るとアキちゃんがぶち切れて鬼になっていた
アキちゃんは命令されて移動させられたのが不服らしい。
シルフをレングスに送ったりしてるなんだかんだ真面目なアキちゃんに嬲られる雪菜。もうぼっこぼこですよ。
アキちゃんに土下座して謝り、逃がさないといけなかった理由、感謝を伝えてアキちゃんの怒りは解ける。
めでたしめでたし。
こんな感じ。
_______________
久しぶりに一週間、人間らしい生活を送ったよ。
友達と遊んだし、親友の美代ちゃんとカフェ行ったりね。
TSSにハマりすぎて現実世界をおろそかにしていたね、反省反省。
一週間ノンビリしてから――
――さあ、TSSにログインだ。所詮現実は偽物。TSSこそ現実なのだよヒッヒッヒ。
ログイン時間まで後数分。もうTSSには入っていて、膨大な数の人がジダンの上空で待機している。1億人いるかなー?
ログイン時間10秒前。みんなが「10!」「9!」
「8!」「7!」とかけ声を会わせてくる。さー楽しみだなあ!
「2! 1! スタート!」
みんなは「0!」だった。ちょっと恥ずかしい。
住民の一斉降下が始まる。
ある人はドティルティの方向に。ある人はジダンに真っ逆さま。びゅーんと外地の方まで飛んでいる人もいる。圧巻ですねぇ。
私はびゅーんとアマールの外地の方へ飛んで行き――。
痛い! え、なに? 顔が痛い! めっちゃ痛い!
まさか倒せなかった? 顔を殴られている?
「――ら、おら、早く起きろよ」
聞き覚えのある声がする。
「死なねー程度に殴ってんだ。早く起きろ」
この声は、聞いたことがある。
「もう肉体は存在してるんだからそろそろ意識は戻ってるんだろ、早く起きろ」
――アキちゃんじゃないか?
「ひゃにょ、ふぁひふぁ」
上手く言葉が出てこない。ボコボコに殴られて顔腫れてるんかな。
「起きたか。おい、私が何で殴ってるかわかってるんだろうな」
「ふぁんふぇ」
なぜだか知らないけどめちゃくちゃ怒ってる、怒ってるよ。
めちゃくちゃ顔が痛い。上手くしゃべれない。
「ああ、歯は全て抜いておいたから。嬉しいでしょ?」
え、ちょ、まじ?
「おら、殴ってやるから嬉しがれよ。嬉しいだろ殴って貰えて」
もしかして倒しきれなくて、それでログイン待機の時間に何らかの方法で戻ってきて、戦闘して切られてバグっちゃったんじゃ。
「ひゃふっふぇひゃひ?」
「バグってねえよ。むしろバグってた魔物は死んでたし、エラー回復で消滅させておいてあるよ」
「ひょひゃっはあ」
「よくねーんだよハゲ。お前自分が置かれた状況わかってねえのか」
ライドしとくか。
「ったくよー、ペットコマンド服従使いやがってよー、こっちがどれだけ心配したのかわかってねえだろ」
「ひょへは」
「黙って聞けよくそアマ。戻ってくる前にサーバー壊れて動けなくなったらしくてよー。運営に問い合わせたらお前のせいじゃねえか。ふざけんなよ。死んだかと思ったよ」
アキちゃん運営に問い合わせられる存在だったのか……。
「それによー、フリゲートの行き先はジダンだしよー。慣れない中、人工知能さんに助けてもらいながら再設定してレングス外地まで行った苦労わかってんのか。シルフさん届けないといけねえからな。お前の意志を継いでよー」
「ひゃひ」
「だから黙って聞けよつってんだろ。一度死ね。桜花・打」
アキちゃん相当ヤバい。なんかブチ切れてる。
この至近距離で打を撃たれたらグチャる。死に戻りしか選択肢がなくなる。
なんかないかな。スキルで。
あ、あれがある。
「ふひふひゅほふ! ひひ!」
経験値消費量たったの1なのでレベル5まで取る。
このスキル自死は自殺なのだが、普通の死に戻りと違ってドロップしない。
ここで通常の手段で死に戻ったら夏芽がやべえ。
「ああん? 何取ったんだ? この期に及んで命乞いか?」
「ひひ」
スキル自死実行。苦しみもなく綺麗に死んでいった。
もともと生け贄になるときに使うスキルらしくて、そっち系の怪しい職業の人は持って居るみたい。これ持ってる人、死に戻りポイント押さえないと追い詰めるの大変そうだね。
4層の自宅へと死に戻る。よかった、本当にドロップしてない。
これで距離も取れたし落ち着いてアキちゃんがブチ切れている要因を――。
「逃げられると思ったのか?」
「ひゃあ!?」
なぜかそこにはアキちゃんがいた。鬼の仮面を被って。
何でいるんだと思ったけどどう考えても転移したとしか思えない。
雪菜騒動の時に転移は取ってない。アキちゃんが怒りの中覚えたんだろう。なんなんだこの生物は。
「まあいい、ドロップしたくなかったんだろう。夏芽さんとかマジカルポーチの中身とか大変だろうしな。ほら、ボコボコにされ死ぬ準備は出来たか」
「ちょ、ちょっと待って!」
「3秒だけ待ってやる」
「は、はいぃ」
とにかくアキちゃんの怒りを解かなければならない。
ライドをつけ直す。
「支度、できました」
「お前、夏芽はどうするんだ」
「ここで死に戻っても4層の自宅が潰れるだけで大丈夫なはずです。家は建て直せば良いだけです」
「んじゃあ死ぬ用意は出来たな」
「あの、死ぬ前に殺す理由を。怒っている理由をお聞かせ願えませんか」
「それがわかってねえから殺すんだよ。桜花・貫通打!」
私は首から上を木っ端みじんにされて死んだ。
死に戻る。普通の死に戻りだったので夏芽がドロップされてしまった。
前見た時より数倍大きくなってるね。もっと大きくなるんだよ。
ただ、家が崩れ落ちたのは残念だな。
「まだまだ殺したりない! 桜花・気功乱斬!」
「死んだだけじゃおわんねえんだよ。リザレクション」
「次はこれだ。マジカルキャノン!」
「し、死に戻りました」
「一閃!」
「リザレクション」
「桜花・竜巻脚!」
「はぁ、はぁ、死に戻りました」
どんどん殺されていく私。こんな中怒っている理由を考えろなんて無理がある。
あるとすれば――
「アキちゃん」
「アキ様だろ」
「アキ様。服従つかって戦場から引き剥がしてごめんね」
「……それで」
「アキちゃ――様はね、バグ人間とは戦えないの。バグで死んだら特殊ペットはそのまま死んじゃうかもしれないから。あのとき一緒に戦う気満々だったからさ、万一をとって。それで」
「――――――なる、ほど。それで」
「えっと、だからフリゲート艦に載せて服従をしたの。フリゲート艦は退避モードにさせたからジダンまで戻るし。シルフさんはゆっくりレングスの外地へ戻せば良いし」
「――私がどれだけ泣いたと思ってるんですか」
「わからない。でも何も知らされてないから相当なショックだっただろうなと言うのはわかる」
「一言言ってくださいよ! 桜花奥義・千打!」
千打でボコボコに殴られて倒れる。スキルがあるから死ななかったか。
「ああ、スキルあるから死にませんね。スキル凍結、っと」
へ? スキルがオフになってオンに戻せない。どいうこと?
「痛み倍増、気絶無効化。よしよし、地獄はまだ始まったばかりですよ」
「アキちゃん、お願い元に戻って」
この後はまるっきり拷問だった。
「ボロボロ泣くなあ。泣くってことはまだ泣ける余裕があるってことだよなあ」
「もう、無理……」
「今日は1日拷問で遊んでやるかぁ」
その一言で私の脳味噌は限界が来てショック死した。ショック死はリザレクションでは治せない。フルリザレクションじゃないと。アキちゃんは多分知らない。
死に戻った、6層の自宅に。自宅は死に戻りポイントとして自動で追加されるのだ。
ちょっとでも逃げたかった。アキちゃんが転移するのはわかっていても。
今のアキちゃんは本当に鬼だった。地獄に居るという鬼。まさにそれ。
なぜかアキちゃんは転移してこなかった。なんでだろう。
とにかく精神がもうだめだった私は、死に戻って身体が綺麗だったこともあるし、ふらふらになりながら自室のベッドで眠った。内装が終わっていて良かった。
(ったくよー、ペットコマンド服従使いやがってよー、こっちがどれだけ心配したのかわかってねえだろ)
(黙って聞けよくそアマ。戻ってくる前にサーバー壊れて動けなくなったらしくてよー。運営に問い合わせたらお前のせいじゃねえか。ふざけんなよ。死んだかと思ったよ)
(それによー、フリゲートの行き先はジダンだしよー。慣れない中、人工知能さんに助けてもらいながら再設定してレングス外地まで行った苦労わかってんのか。シルフさん届けないといけねえからな。お前の意志を継いでよー)
夢の中でアキちゃんの言葉を思い返す。
――そっか、アキちゃん、心配してくれていたんだね。そんななかシルフさんを助けたりしていてくれたんだね。ありがとう。
【40万経験値と2000スキルポイント、2000万ドルエンを入手しました】
ああ、シルフさんが助かったんだ。ありがとうアキちゃん。
大ミッション獲得の音で目が覚める。ずいぶん時間が経ったように思える。アキちゃんはいない。転移してくると思ったんだけどな。マークし忘れは考えにくい。ちゃんと1回目は転移したんだし。
4層行くか。土下座して謝ろう。そして感謝の言葉を述べよう。それで許してもらえなくても。受ける罰は受け続けよう。
ふらふらしながら自室のドアを開ける。
4層は2つ下の階層か。転移装置があるから一瞬だけど。
「そんな格好で出歩いたらレイプされますよ」
ドアを開けたら左隣の壁にアキちゃんが壁に背を持たれて座っていた。もう鬼の仮面はつけていない。
「アキ様。いらっしゃったんですか」
「敬語も止めてください。恥ずかしい」
「え? あ、はい。ええと、私はアキちゃんに謝罪と感謝をしないといけないと思うの。だからするね」
私はアキちゃんと対面して正座し、深々と頭を下げる。地に頭がつく位に。そう、土下座だ。
アキちゃんが土下座を知ってるとは思わないけど、誠意を見せないと。
「アキちゃん、不安にさせてごめんなさい。引き剥がされたと思わせてごめんなさい」
「――ばか」
じっと地に頭を着けつづける。
「申し訳ありませんでした」
「ばか!」
「謝罪の言葉もありません」
「うるさいんですよ! ばか!」
一分くらい地面に頭をつけていただろうか。
ゆっくりと頭を起こす。
「――そんな中でシルフさんのことをやってくれてありがとう。私のことを心配してくれてありがとう」
「ばかばかばか! どれだけ心配したと思ってるんですかぁ!」
「うん」
「もう置いていかないでください! 一緒に居させてください!」
「――それは出来ない。またバグ人間が出現したら絶対に引き離す手段を考える」
「ご主人様の、ばか」
「馬鹿でごめんよ、実際馬鹿なんだ。どうしょうもないほど馬鹿なんだ」
「鬼になって、ごめんなさい。ご主人様の身体で遊んでごめんなさい」
「アキちゃんが怒ったのだから、それは受け止めないとね」
「あぁぁぁん! ごめんなさぁぁぁぁい! ご主人様、ごめんなさぁぁぁぁい!」
ひしと抱き締め合う2人。
「いいのよ、説明もせずに押しつけた私も悪かったんだから」
「あぁぁぁぁん、あぁぁぁぁぁん!!」
「ごめんね、ごめんね、ありがとね」
2人で一生分泣いたと思うな。
この後ARチップはもちろんつけて外出したからね! 4艘自宅の後処理と、ご飯食べに行った。
ライドは死に戻った時に切れる仕様みたいだね。でもある程度はライドで放送されちゃったかなあ。さすがに今回は失敗ライドだった。あんなに怒ってるとは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます