第8話 『 が ら ん ご ろ ー ん 』

『 が ら ん ご ろ ー ん 』


 寝ていたら突然、大きな鐘の音とドラムロールの音がして目が覚めた。何事!?


「なに、この巨大な音は!?」


「すーすー」


「寝てるのか……逆に怪しい。今ミッションが確定したってでたし、スキル組み合わせてミッション関連の音をでかい音でなるようにしたな! アキちゃん! 起きてるでしょ!」


「ぷぷ、すーすーすー」


「アキちゃんは寝坊しまくるので実用に耐えられず、我が自宅に監禁して外には出さないことにするか」


 慌てて飛び起きるアキちゃん。


「ごめんなさいご主人様! 私が犯人です!」


「許しません。なんでこんなことしたの」


 アキちゃんを抱き上げつつ話を聞く。


「だって、その、昨日、その」


「昨日がどうしたの。なんもなかったでしょ」


「おっぱい……」


 ガクッ。


「おっぱい枕させてくれなかったからやったのかい! 子どもか!」


 えーんえーんと泣くアキちゃん。子どもなんだよな。


「まったく。もう目覚まし代わりにがらんごろーんしない?」


「しません、ヒックヒック」


「普通の日は、普通の枕か自分のしっぽ枕で寝る?」


「え、それはちょっと」


 アーキーちゃーん!!


 お説教をしようと私の前に正座させたらノックの音。ドアの向こうから聞こえた声はアルダスさんかな。


「アキが今開けまーす、ガチャリとな」


「よう、朝から元気だな。飯の時間だぞ」


「あ、はい。わかりました。それじゃあアキちゃん、準備していくよ」


「はーい」


 カザリンとぴょん子とも合流し、朝ご飯を食べに出る。

 今日は納豆がある! まさかTSSで納豆ご飯とは! そっか、大豆生産してるのか。


「拙者はパス、臭くて無理でござる」


「カザリンは納豆駄目か。ぴょん子は?」


「納豆って肌に良いから、パリピになるために時折だけど食べてるよ」


「パリピつよ。私は大丈夫だし、アキちゃんも食べれるよね?」


「ムシャムシャ。おいひーれす」


 そんなに頬張るとむせるよと言いつつアキちゃんのお口の周りをふきふき。

 私もたーべよっと。



「ごちそうさまでした。ご主人様、次の大ミッションはどんなのが出たんですか?」


「ごちそうさまでした。えっとね、ウンディーネの集団を助けろ、だってさ。目標方向表示はあっちのほうを示してる」


「お粗末さん。あっちは未開の地だな。まあ人の手が入っている土地にウンディーネが生息しているはずはないが」


 なるほど、それじゃあ行ってみますか!


 ということでAクラス200名搭載可能人員運搬船ATH-200に乗り込んで目標方向表示の示す方向へ進む。


 数刻進むと、なんか変な匂いがし始めた。なんぞなんぞ?


「なんか臭うね、ドブ臭いというかなんというか」


「船を下りた方がいいんじゃねー?」


「ぴょん子さんの言うとおりかもしれませんぴょんね、ご主人様」


 それじゃあということで下船。船の場所忘れずにマークしとこう。

 んんー、地面に近い方がより臭い。目標地点ではどんなことになっているんだろう。


 野原をぼちぼち歩いていると地面に違和感が。草が生えなくなってきたのだ。

 ここは空気は乾燥していない士日差しも強くないから荒野にはなりにくいと思う。


「よくみると、あの先、草が枯れてますよ」


 目星スキルも10な我がパーティのエース、アキちゃんがいち早く気づく。


 移動してみると、その枯れていた草はかなり環境汚染されていても枯れない植物である、ハナダマシイだった。


「種類とかはわからないんですが、これ、毒にやられてますね。毒じゃさすがのハナダマシイでも駄目でしょうね」


 アキちゃんがそう言うならそうだ。アキちゃんは、私がラスボスと対峙したときに持っていたスキルを全て取り込んでいるんだ。判断力以外では今の彼女に勝る分野はない。


「毒に巻き込まれないよう、警戒して移動した方が良いってコトだね」


「草が消えたのはこの毒のせいかもしれないってことでござるな」


「かも、ってところだけどぴょん。ハナダマシイが枯れるくらいの毒だぴょん」


 草を離れ先へ進む。すると川が見えた。汚れた川が。


「くっさー、ぴょん子もう帰っていい? ぴょん子もう帰りたいぴょん(ぴょんぴょんねだりのポーズ)」


「かわいー! でもかわいこぶっても駄目です。ここも怪しいけどまだ目標はあっちって言ってる。アキちゃん、ここにハナダマシイを枯らせた毒素は含まれてる?」


「調べてみますご主人様。スキル、サーチ! んー、あります、神経毒ですね。タハジン。これは揮発しにくい成分なので水の浸透と共にハナダマシイまで届いた可能性が十分に考えられます」


「ってことは結構な時間この川は汚れているってことか。この川と連絡しているどこかにウンディーネはいるんだろうけど、全滅してないかねえ」



 ここを離れる。

 臭い川を遡上するように目標方向表示くんは方向を表示する。

 ただ黙々と歩いて行く私たち。

 会話はない。くせぇからだ。口で息したくない。


 川幅がだんだんと狭まっていき、湖に到着した

 生物の気配はない。


「うーん、目標方向表示は湖の真ん中方面を指しているんだよなあ。湖も汚いなあ」


「水上走りがありますから、私だけなら奥にいけますよ」


「でもアキちゃんじゃ対応できないでしょ? うーん、一旦汚れをなくせればなあ。でも毒があるか」


「範囲クリーンアップ範囲キュアしましょうか? 範囲化も多スキル同時使用も持ってますので!」


 そうだった。この子は何でも出来るチート存在だった。チートってこんな便利なのか。


「じゃあお願いするね。うまく出来たら、今日は私のしっぽで寝よっか。ARチップ全部取ればしっぽ出てくるからさ」


 同じおきつね族だからね。


「わーいわーい! 全力魔法! キュア! クリーンアップ!」


 現在世界最強なのは間違いなくアキちゃんである。

 そのアキちゃんが全力でキュアとクリーンアップを掛けたらどうなると思う?

 そうだね、湖が一気に綺麗になるね。そのまま飲めそうなくらい綺麗だ。


「アキちゃんよく出来ました! 今日は私のしっぽで遊んで良いよ!」


「やりました! ばんざーいばんざーい!」


 てんてけ踊りをアキちゃんがするのではやしたてていたら、湖の奥の方から複数の気配が。

 おだてるのをやめて全員警戒態勢に。


 何が出てくる。

 ウンディーネの集団しかないと思うけど。

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