第26話 今に合った銃

「それじゃあ今に合った銃を作成しますね。雪菜さんは天買人ですから、オーバードライブで能力値が引き上がることを加味して、魔力値1500位で作らないと駄目かな。うーん、素材が見つからない」


「さすがにもう無理ですかねえ」


「いやいや、ガンスミスの矜持を賭して作りますよ。……そうだ、魔力に反応して剛性が上がるクリスタルエンペラーを使います。おじいちゃんが雪菜さんのために試作していた銃たちがそれなので、溶かして材料にします」


 私のために作っていた試作品類を溶かして銃にするという。おじいちゃんの遺作を壊して平気なのかな?


「使えない銃より使える銃。おじいちゃんなら笑って遺作を潰すと思います。グゥレイトォ! なんて言ってね」


 たしかに言いそうだ。じゃ、遠慮なく潰しちゃいましょう。


 潰したんだけど、キアちゃんは困り顔。どうしたんだいキアちゃん。


「材料がちょっと足りないです。クリスタルエンペラーはアマールの先の山にある金属なんですが、道も採掘もすべてが険しいので取る人が少ないんですよね。ジダンにならあるかなあ」


「じゃあ採ってくるわ。キア-06Rを左手用に改良できる?」


「え、出来ますけどほんとにすごい険しいですよ。行くんですか」


「私が採れないなら他の誰でも採れないよ。だって私だよ?」


「それもそうですね。それじゃあお願いします!」


 それじゃアマールまで行ってきます! オットーさんと会えるかな、楽しみだね。

 採掘をするのでコルベットじゃ搭載量が足りない。でも輸送艦じゃ撃墜の可能性があるし、大型艦は進入しにくい地形だということで、新規フリゲート艦を購入。運搬仕様にする。

 自衛用に艦隊魔導砲1門レーザー砲5~6門くっつければ大丈夫でしょう。艦隊魔導砲がつけられるとか、フリゲートはでかい。コルベットじゃ艦隊魔導砲とかお話になら無いっすから。乗り心地を考えるともっともっと大きい駆逐艦欲しいなって思うけどね。現代の主力艦艇、それが駆逐艦。


 ジダンに戻り、泣きわめいていた物を回収。アキちゃんである。

 ごめんね、ご主人様が置いて行っちゃったから悲しくなったよね。よしよしよし。

 漫画のようにギャン泣きするあきちゃんをライドしながらあやすのであった。悪いなアキちゃん、これも素材だ。

 私が戻ってからアキちゃん派の人口は2千万人ほど増えて現在1億人らしい。けいじばんでなんかそんなこと言っていた。

 TSSはプレイ人口が3億6千万人くらい、AI人口含めると30億人くらいだから30人に1人はアキちゃん派ということになる。結構すごい数だよね。

 私がいなくてディンゴがアキちゃんを撮影していた時期はライドで増やすのは出来なかったということ。可愛さで入った人は多かったらしいのだが、抜ける人も結構いたからね。

 やはりライドは遠慮なく図々しくやらないと面白くないみたいだ。ディンゴじゃいまギャン泣きしているアキちゃんを撮るなんてこと出来ないだろうな、出来ないな。

 アキちゃんとは関係ないけど、ライドは撮影者の体や脳と同期すること、私の身体がかなり鍛えられているということを利用して、疑似TSに使う人もいるって聞いた。私の身体にライドするとすごい気持ち良いとは聞く。鍛えられた肉体はそれだけで快感を生むらしい。

 榊雪菜のブランディングもありますからエッチなことはしませんが、まあ、ご自由にどうぞ。


 さ、アキちゃんの機嫌も良くなったしフリゲートに乗って出港。経験値もたまっているので操船スキルを一通り5まで上げる。私は初級スキルしかあげないけど、戦闘機乗りなんかは上級スキルまで取るとのこと。だから有人戦闘機が無人戦闘機に勝てるんだろうね。現実では戦闘機はすべて無人、空中管制機にて細かく指示するのが実際のところである。


「フリゲートは大きいですねー! ご主人様!」


「そうだねー。加速が終わったら甲板に出てみれば? 今回はマンボウみたいな形だから比較的甲板が大きいよ」


「そうしてみまーす。アマール行くのも久しぶりですねー!」


「久しぶりだねー。オットーさん元気かなぁ。ドスコードだけじゃわからないからねー」


 フリゲートでブイブイ進み、アマール-レングスをつなぐ街道まで進む。ここは田舎道なんだけど治安がその分良くないから賊もでる。

「艦借りるぜー、降りろ」、って言われても「榊雪菜でーす」って声を届けて照会が済めば「すいませんでしたー!」で済む。味気ないんだけど賊との戦闘は結構疲れるのでこんなもんで良いのだ。


 さて、アマールに到着。オットーさんのいるOrderに出向く。


「ちゃーらんでーす。皆さん元気ですかー?」


 私とアキちゃんが来たということで事務所の中は大盛り上がり。

 写真を撮る人、ライドする人、いろんな人がいた。

 ひとしきり盛り上がった所でオットーさんの所に案内して貰う。

 あれだけ盛り上がっていたのにオットーさんは参加していなかった。さすがというかなんというか。


 それではオットーさんとご対面と行きましょう、じゃじゃーん。


「オットーさんおひたしぶりっこでーす!」


 オットーさんは白いアラブ系衣装に白い顔隠しの様相で私たちを出迎えてくれた。


「やあ」


「おひたしぶりっこでーす!」


「そうか」


「おひたし、まあいいです。街道の警護はどんな感じですか?」


「極めて順調とは言いがたいが大物は出なくなったな。雪菜殿の本による利益で投資が順調に行えているからな、礼を言う」


 おほー、一番公共投資している感じがするぅー。


「いえいえそれには及びません。街道の安全は何より重要ですからね」


「うむ」


 寡黙だ。やっぱり寡黙だ。話変えよう。


「そういえばアマールの山にあるというクリスタルエンペラーを採取しに来たんですが、採取できる所ってどうなってますか?」


「今は駄目だな。魔物が群れをなして採掘現場に滞在しており採掘が出来ない状況だ。いなくなるのを待つしかあるまいて」


「群れ……いきなりですか?」


「いきなりだな。唐突に現れ、巣くっておる」


「なるほど。今回の目的地があそこなんですよね。行くのやめようかな」


「最終的にお前は行くようになっている。呪いが周辺に散布されているという情報もある。耐性をとっておけよ」


「うーんまあ、最終的に行っちゃうのが私かもしれない」


「わかりました。ばいばーい、おじちゃん」


「ばいばーい、アキちゃん」


 え、手を振ってにこやかに答えた!? デレた!? アキちゃんにはデレるの!?


 驚愕を胸にこの場をさる私たち。次は酒場に行って作戦会議だ。


「こんちゃらりーん。とりあえず2名で生ジョッキ大でお願いしまーす。あとお肉ください。ステーキで」


 真っ先に運ばれてくる生ジョッキ大。これを一気に飲み干す私。


「おかわり!」


「威勢が良いねえ、そんなにハイペースで大丈夫かい?」


「これくらいハイペースじゃないと酔わなくて」


 内蔵各種の機能強化スキルを10、総合強化を5までとってあるので、本当に一気に飲まないと酔わないのだ。アルコールとか一瞬にしてアセトアルデヒドにしてしまう。必要水分減少も10とってあるのでアセトアルデヒドの分解に必要な水分も極小で済む。

 肝臓のスキルをオフにすれば良いのかもしれないけど、内蔵のスキルをオフにするのはちょっと勇気が必要じゃない?

あ、毒耐性は5だけどこれは切ってる。アルコールも体内に入ると毒だから耐性5だと何の効果も示さねえ。切らねえとどうにもならねえ。アセトアルデヒド分解するならつけた方が良いんだけどね。毒だからね。


 だから飲む! 飲んで飲んで飲みまくる!


「おらー! ブランデーVSOP瓶でもってこいやー!」


「ご主人様今日は凄い荒れてますね」


「だって魔物の群れに突っ込むんだもん、怖いじゃん」


 死に戻りしてから戦闘が怖くなったのだ。対人は別なんだけどねえ……。


「それは確かに。私スキル集団隠密化を持ってますからそれでフリゲートごと隠して群れに接近してみるのはどうでしょうか」


「ほー、面白いアイデアだね。一応それやってみようか。それなら採掘まで全部隠密に出来るかもしれない」


 はたしてアキちゃんのアイデアは上手くいくのだろうか。


「なにかあったらアキが守りますから安心して下さいね!」


 それは頼もしい! なんたって現在の最強はアキちゃんだもんな!

 ゆうてあれですが。

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