第30話 水回り掃除の達人 その6
「気が合うね。私にもつぶされる未来が見えたよ」
僕の予想にオリカが同調した。それから、トーが口を開いた。
「ヒデンの言ったとおりのやり方でたたけば〈不化〉は解けるのだから、それで減らしていくしかないんじゃないか?」
「有効な攻撃をすれば減らせるんだけど、乱戦になるとさっきみたいに増える方の攻撃をしちゃう可能性があるからなあ」
「一匹ずつ確実に誘導して倒す方法を見つけ出せれば良いのだがな。残念ながら私はそういうのを考えるのはあまり得意ではないのだ」
「僕だってそうだよ。みんなで考えようか。ただ、スライムたちの様子を確認しながらの方がいいかもね。僕が足場を作るから、トーは見張りを頼めるかな?」
「承知した」
いくつか 『
「そういえば青いのはなんていう〈不要品〉持ちなのかな? トーちゃん、読めるー?」
オリカに言われてトーが目を細める。青スライムの文字を読んでいるのだろう。しばらくして返事があった。
「ああ、読めたぞ。〈フテイケイ〉だ」
「〈フテイケイ〉? 赤いのと同じじゃない」
「いや、赤いのは”形”という漢字を使った〈不定形〉だったが、青いのは"型破り"や"血液型"の"型"だ。よく見ると〈不要品〉が"核"の近くに集まっている。赤いのとは違うな」
確かに赤い奴は〈不要品〉が体全体に散っていたな。〈不化〉を解く条件は赤がスライムの体全体への攻撃、青が"核"へのピンポイント攻撃だった。〈不要品〉の配置がそれを表している感じかな。なるほど。
「ところでスライム退治案の続きで、問題に気がついたよ。なんとか一匹ずつ誘導できたとしても、私は赤い奴、ヒデンでんは青い奴しか倒せなさそうなんだよねえ」
オリカがそう言った。確かにオリカの『ウインドボール』はピンポイント攻撃には向かないし、逆に僕の【枠枠連棍】はスライムに対して全体を攻撃することは出来ない。
「そうだな…… それなら私が攻撃役をやろう。【バチツチ】の"バチ"モードで青を"ツチ"モードで赤を叩く」
「難しそう。そんなに細かく切り替えできる?」
「そこはやりながら、なんとかする。二人には打ち漏らしたやつらのフォローを頼みたい」
「フォローの人数が多いほうが、対応力は高いかな。それが良さそうだね。了解」
「分かった」
攻撃の方はそれでなんとかなりそうかな。
「あとは肝心の誘導方法だけど、何か案はあるかな?」
「まあ、そこはヒデンでん頼みになるかなぁ。一匹だけ通る筒みたいな《枠》とか」
「あ、それ可能性ありそう。ちょっと地面を掘って『
「掘るのは私がしよう。〈フテイケイ〉は体温を感知して人間に襲いかかってくる性質がある。筒の先に誰か立っているだけで、自動的にそこから射出されるんじゃないか?」
「青いのもそうなのかな?」
「上から見る限りはそう見えるな。スライム達がこの壁付近に溜まってきて、積み上がってきた」
筒を通るプニプニした物体か、なんか思い出すな。この世界には"アレ"はないのかな"タピオカ"は。
ピンチではあるけどでっかいタピオカを想像するとなんだか面白くなってきた。ふふっ。
「よし! 後必要なのはなんだろう」
「〈不化〉が解けたスライム達をここから出さないと、みちみちになっちゃうよ?」
「そうだね。出す筒も用意しよう。でもこうなると人数が心もとなくなってくるね」
その時、それまで体を横にして体力を回復していたゴシンから声がかかった。
「スライム達を出す役目はオレらにやらしてくれへんか?」
「ゴシン! 大丈夫なの?」
「平気や、姉ちゃん。何とか《ドレス》も着れると思う。ユタンもいけるか?」
「ああ、なんとかいけそうや」
「猫の手も借りたいところだったから、それは助かるな。うん、希望が見えてきたぞ! みんなでこの状況を乗り切ろう!」
「方針は決まったな、すぐ取り掛かろう。外は〈フテイケイ〉達がみっちみちに増えてきている」
トーに『
『
続いて〈不化〉を解いたスライムの排出口となる『
こっちは高さを十分にとり、外に溜まった〈フテイケイ〉達の上に〈不化〉を解いたノーマルスライムたち落ちるようにした。直径も合体していないスライムサイズにして、ここから赤や青の合体スライムが入らないよう工夫してある。
人員配置は次のようにした。
流入用『
射出口正面にはトーが居て、迎撃を担当する。赤と青を瞬時に判断し、【バチツチ】のモードを変えながら攻撃する難易度の高い役目だ。
排出口『
「みんな準備はいい?」
「うむ」「オッケー」「ええで!」「まかしてや!」
カクッと片膝を折ってしまう。掛け声バラバラ。息合わすことできるかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます