第10話 生きる前の、生きていた頃の誰か

どん、どん、ぱち、ぱち。

外から大きな音が聞こえる。

何の音だろう。

外国にあるっていう、夜空に咲くらしい花の音?

お祭りの音?

この村でやってるお祭りは、いつもこんな風に騒がしい。

でも生憎。

昔から大きい音は好きではないので。

穴の開いた布にくるまって、耳を塞いで今日が終わるのを待つ。

どん、どん、ぱち、ぱち。

どん、どん、ぱち、ぱち。

音は止まない。

たったった。

足音が聞こえる。

たったったったった。

段々と足音は大きくなる。

がちゃり。

私の部屋を誰かが開けた。

————ッ!!

そして何か叫んでいる。

耳を塞いでいたからよく聞こえなかった。

布から顔を出して目を開ける。

ああ、お母さんだ。

どうしたの、そんな怖い顔をして。

優しい優しい、お母さんらしくないよ。

お母さんが私に手を伸ばす。

無意識に私も手を伸ばす。

そして。




何も聞こえなくなった。

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