第20話

……。

原理はわかる。

確かにこれを体内に潜ませていたら、直に死んでしまうだろう。

でもなぜ?

いつ、どこでこれを。

私には覚えがない。

私はこれを入れた覚えがない。

それだけのことをする理由がない。



錠剤を一つ取り出し、近くにあった手ごろな硬いもので押しつぶす。

粉末状になったそれを、あいつがくれた顕微鏡で覗いてみる。

……ある。

なんで?

こんな覚えはない。理由もない。

一歩ずつふらつくように後ずさりする。

はあ、はあ。

覚えがない。

覚えがない。

記憶にない。

信じられない。

ああ、どうしよう。

どうしよう。

どうしようもないじゃないか。

……。




                   いや、これでいいんだよ。

                   私がずっと望んでいたことだ。

                   病める必要なんてないじゃないか。

                   これからもみんなを助けていこう。

                   変わらずに、ずぅーっと。

                   だって、みんないなくならないなんて。


                   とても理不尽じゃないか。

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