第22話 一緒に居られる学校生活の始まり
冬休みも終わり、今日からまた学校が始まる。
いつもなら億劫になるのだが、今日は午前中に終わるので気分は上々だ。
それとは別に柊木さんと自然な形で接するために、これからは桜と永沢さん、成人と一緒に行動することが増えるので、いつもよりにぎやかな学校生活になる予感に胸が躍っているせいもあるだろう。
今日は朝から教室で集まることになっているので、早めに家を出て学校へ向かった。
学校に着いて自分の教室へ入ると、すでに桜と永沢さんが柊木さんのところに集まって話しているのが見えた。
自分の席へ荷物を置いてから僕も三人の元へ向かう。
「あ、おはよう拓道。今日は早いね」
「おはよう。集まるって話だったから早めに来た」
「おはよ」
「お、おはよう笹原君」
みんなに挨拶をするが、柊木さんだけ緊張しているのか若干ぎこちない。
教室でこうやって話すのは初めてなので仕方ないが、じきに慣れるはずだ。
「そういえばナルは来てないの?」
「あー、急に部活の集まりが入ったみたいでちょっと遅れるみたいだよ」
「新学期早々大変だな、南も」
「そういう樹木ちゃんだって、今日学校終わったらバイトあるって言ってなかった?」
「そうそう。アタシも休みたかったけどバイト先の店長がどうしてもって言うからさ~・・・はぁ・・・学校早く終わる日だったのに最悪だし」
「あはは・・・。頑張って樹木ちゃん」
柊木さんが机に突っ伏してバイトがあることを嘆いている永沢さんの頭を撫でながら慰める。
それにしても学校終わりはよく友達と遊びに行っているイメージがあったので、永沢さんがアルバイトしているのは少し意外だ。
僕もアルバイトを始めようと考えているので、後で参考程度に話を聞いてみてもいいだろう。
そんな風に考えていると、教室の入り口から少し息の上がった成人がやってきた。
「悪い遅くなった!」
「あ、ナルおはよ~」
「おはようナル。部活の集まりお疲れ」
「おう。柊木さんも永沢さんもおはよう」
「おはよ」
「お、おはよう南君。部活の集まりお疲れ様」
「昨日顧問から集まれって急に連絡もらってな」
「大変だなサッカー部も」
「まあ好きでやってることだからいいんだけどな。それより気づいてるか?」
「ん?なにに?」
「俺らいま注目集めてるぞ。教室の連中がチラチラこっちを見てる」
成人に言われて少し周りを見渡すと、たしかに他の生徒たちがこちらを見ている。
理由は十中八九柊木さんと僕らが集まって話していることだろう。
「まあ想定通りだし気にすることないでしょ。アタシらが一緒にいれば栞にちょっかい出す奴もいないと思うし」
「そうそう。それに私たち友達だし一緒にいるのは変なことじゃないんだからさ。なにか聞かれたら友達って答えればいいよ」
「それもそうだな。もしなにかあったら柊木さんも遠慮なく言ってくれ」
「だね。それにこのメンバーでいることも珍しくないって感じになっていけば問題ないしね」
ひとまず注目されることは仕方ないので、気にしない方針で話がまとまった。
一応どうしてこの5人で集まるようになったのか聞かれたとき用の回答も用意してあるので、おそらく大丈夫だろう。
それに、注目されている原因は男子である僕と成人が柊木さんと一緒に話の輪に参加していることなので、仮になにか聞かれるとしても同じクラスの僕に聞いてくるだろう。
「栞、もしなにかあったらアタシらに言いなよ」
「う、うん。わかった」
「はい。それじゃあこの話はいったん終わりってことで。せっかく集まったんだし、楽しい話しようよ」
「楽しい話?」
「今度このメンバーで遊びに行きませんかって話」
ここで桜が話題を切り替えて遊びに行かないかと提案をしてきた。
たしかにこの間の初詣はたまたま集まっただけなので、この5人で予定を立ててどこかへ行ったりはしていない。
「アタシは別にバイトない日だったらいいけど」
「私はいつでも大丈夫だよ」
「俺は部活ない日なら問題ないぞ。といっても日曜日くらいしか空いてないけどな」
「拓道は暇人だしいつもで空いてるから問題ないよね」
「どういう意味だコラ」
「そのままの意味でしょ・・・」
「自覚なかったの?」
「僕にだって予定くらいある。小説読んだり・・・小説読んだり?」
「暇じゃねえか」
「あ、あはは・・・」
小説を読む以外なにも思い浮かばなかったので、否定することができない。
柊木さんにも呆れられながら苦笑いされる始末だ。
これ以上暇人のレッテルを張られないためにも真剣にバイトを探すことを心に決める。
「っと、そろそろ予鈴も鳴るし、俺はそろそろ自分の教室へ戻るわ。今日放課後はどうするんだ?今日は部活ないって顧問言ってたし俺は空いてるけど」
「アタシはバイト。時間まで昼どっか食べにいくくらいならできるけど」
「じゃあ学校終わったらみんなでファミレスでも行かない?さっきの話の続きしたいし」
「いいんじゃない?柊木さんはどう?」
「うん、私もみんなと食べ行きたい」
「それじゃあ学校終わったら集合ってことで」
「了解。そんじゃまたあとでな」
そう言うと成人は自分の教室へ戻っていった。
「それじゃあ僕も自分の席に戻るよ。またあとで」
「あ、うん。またあとで」
3人と別れて自分の席へ戻ると、先ほどこちらのやり取りを見ていた男子生徒の1人がやってきた。
「なあ、ちょっといいか?」
「ん?なに?」
「お前、柊木さんと仲いいのか」
「まあ、そうだな」
「柊木さんは男子が苦手だったはずだろ?どうやって・・・」
予想通りの質問だ。
というか気になるのはそこくらいだろう。
とにかく何も答えないわけにはいかないので、予定通り用意しておいた解答を口にする。
「桜・・・戸田と柊木さんが友達で、その繋がりで冬休みに仲良くなったんだ。一応言っておくと柊木さんは変わらず男子は苦手だし、まだ僕と話すときもぎこちないところあるよ」
「そうか。お前戸田と仲良かったもんな・・・納得だ」
「納得してもらえたようでなにより。ほら、もうすぐ予鈴鳴るし席に着いた方がいいんじゃない?」
「お、おう・・・急に悪かったな。邪魔をした」
そういうと男子生徒は自分の席へと戻っていった。
ひとまずなんとかなったので一安心だ。
柊木さんのほうをチラっと見てみると、少し不安な顔をしてこちらを見ていた。
先ほどの男子生徒とのやり取りを見られていたみたいで、心配している様子だ。
席がそれなりに離れているので、スマホを取り出してメッセージで『大丈夫』と送っておく。
柊木さんもすぐさま確認すると安心したようで、『よかった』と返事を返してきた。
こうして学校始まって早々少し目立ってしまったものの、今後も問題なく柊木さんたちと一緒に居られることに一安心だ。
とりあえず先ほどの男子生徒とのやり取りで少し気疲れしたので、始業式が始まるまでのわずかな時間は机に突っ伏すことにした――。
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