第12話 クリスマスイブのパーティー

 学校は冬休みに突入し、一番最初のイベントであるクリスマスを迎えた。

 季節はすっかり冬に染まって、吐く息が白く見えるほどに気温は下がった。

 街中の至る所では、クリスマスの飾りつけが施され、さまざまなお店ではクリスマスセールと銘打って、安売りを行っている。

 僕もこのセールに乗っかり、ケーキ屋でケーキを購入してある。

 今日はクリスマスパーティーをするため、僕の提案の元、桜と成人と三人で僕の家に集まっていた。

 僕が住んでいるのは、一人暮らしをするにあたり父さんと話し合って決まった、セキュリティーもばっちりの12階建てのマンションで、なかなかいい場所に住まわせてもらっている。

 部屋の広さも1LDKと一人暮らしには申し分ない広さだ。


「それじゃあコップは持ったね?せーの!」

「「「メリークリスマ~ス!」」」


 テンションが高い桜の号令で、ジュースの入ったコップで乾杯をする。

 『クリスマスは明日なんだけどね』なんて、野暮なことは言うまい。

 リビングのテーブルには、注文したピザや飲み物、ポテトやサラダなどが所狭しに置かれている。

 これらの品々は成人たちが場所を使わせてくれるならと、買ってきてくれた。

 乾杯も済ませたので、さっそくチーズたっぷりのピザを取る。

 伸びたチーズに気を付けながら頬張ると、ペパロニの辛さとチーズの濃厚さ、バジルの香りが口いっぱいに広がり、思わず頬が上がってしまうほどにうまい。

 やはりチーズは最高だ。


「それにしても、こうして三人でクリパするの小学校5年のとき以来じゃないか?」

「そういえばそうだね。おばさんたちは元気?」

「元気元気。うちのとこもナルのとこもあいかわらずだよ」

「そりゃあよかった。今度機会があれば挨拶に行くよ」

「そうしな。初詣に行くなら俺らも行く予定だから、来るならそのときに会えるぞ」

「初詣か。僕も行くから、そのときに挨拶しに行こうかな」


 成人と桜のご両親には、小学校のころにいろいろお世話になった。

 こちらに引っ越してきてからはなかなか会う機会がなかったので、初詣で会えるのが楽しみだ。


「初詣と言えば、栞ちゃんも行くって言ってたよ?」

「うん、知ってる。実は初詣一緒に行かないかって、柊木さんからお誘いがあった」


 昨日、柊木さんからメッセージで、明日の食事会についての話と一緒に初詣の話もされていた。もちろん華さんや敦さんも一緒だ。

 一人で行くよりは複数人と行った方がいいと思い、そのお誘いをOKしている。


「二人だけ柊木さんと仲良くて、俺だけ仲間外れって感じがして何とも言えない気持ちになるな」

「まあまあ。柊木さんも男子苦手が克服してきたら、ナルとも仲良くなってみたいって言ってたよ?」

「そうそう。まだちょっと難しいけど」


 実際ちょっとずつではあるけれど、僕と接するときにはぎこちなさは少しずつだがなくなってきている。

 僕と自然に話ができるようになってきたら、成人とも仲良くなってもらって、徐々に苦手克服に向かえばと考えている。

 といっても、これで本当に柊木さんが男子と接しても平気になるかどうかは本人次第だ。

 トラウマによるものは、最終的に本人が折り合いを付けていくしかないから、僕らにできるのはそれの手助けくらいなものだ。


「まあ、そんときが来るのを楽しみに待っておくとするか」

「えらいぞ~ナル。ご褒美にあ~んしてあげよう」

「あ~ん」


 そう言いながら桜が成人に向かってピザを差し出し、成人もそれに応じて食べる。

 二人が唐突にイチャつき出し、少し居たたまれなくなる。

 たまに忘れそうになるが、この二人は付き合っているのだ。

 この居心地の悪さを誤魔化すために、コップの中のコーラを一気に飲み干した。

 


 その後も雑談をしつつ、時折イチャつく二人の眺めながら飲み食いをしてから昨日買ってきたケーキを取り出す。

 チーズケーキ、ショートケーキ、チョコレートケーキの三種を買ってきたので、それぞれ好きなものを選んで食べた。

 ちなみに僕がショートケーキ、桜がチーズケーキ、成人がチョコレートケーキ。


「さて、ケーキも食べ終えたことだし、そろそろプレゼント交換でもする?」

「そうだね」

「だな」


 そして、お互いに用意したプレゼントの交換を始める。

 僕が用意したのは、成人には青に白のラインがデザインされたリストバンド、桜にはハンドクリームだ。

 二人に渡すと、喜んでもらえたようでよかった。

 

「はい、私からはブックカバーだよ」

「おお、ありがとう。ちょうど買おうかなって悩んでいた所だったからありがたい」


 桜からもらったのは白と赤のチェス柄のブックカバーだ。

 普段は本屋でつけてもらえる紙のブックカバーを使用しているが、呼んでいるうちにボロボロになってしまうので、そろそろ自分でブックカバーを買おうと思っていた。

 サイズも僕が普段読むラノベの合わせて、文庫本用を選んでくれたようだ。


「それじゃあ俺からはこれだ」


 そういって成人からクリスマスラッピングされた紙袋を渡される。

 開けてみると入っていたのはグレーのニット帽だった。


「ニット帽?」

「おう。お前普段パーカー着ることが多いけど、今後おしゃれするなら他の服装に合わせた防寒対策も必要になってくるだろ?だからニット帽だ」


 たしかに普段過ごしやすいという理由でフード付きのパーカーを着ることが多いし、寒い時はフードを被ればいいのだが、それ以外の服装をするときはたしかに寒いと耳まで冷えてしまう。

 そういった防寒対策のほかに、おそらくではあるが、柊木さんと出かけることになったら、パーカーじゃなくてちゃんとおしゃれして行けという意味と、気休め程度だが変装できるようにとの意味合いも含まれているだろう。


「なるほどね、ありがとう。ありがたく使わせてもらうよ」

「おう」



 そしてプレゼント交換も終え、夕方までゲームとかをして過ごす。

 愉快なパーティーゲームこと大戦闘クラッシュバスターズ(通称クラバス)を遊んだときは僕がほとんど1位だったので、二人の負けず嫌いが発動して結構大変だったことは言うまでもない。

 友達とこうして家で集まって遊ぶのも、ほんとうに久しぶりで楽しい。

 中学の時に友達はいたが、家でこうして遊ぶことはほとんどできなかった。

 一度だけ後輩の子が家に来たことがあったくらいか。

 それくらい誰かと遊べる余裕が、中学の時になかった。

 だから今こうして成人と桜が、変わらず友達のままでいてくれて、一緒に遊んだり出かけたりできることが本当にうれしい。

 いずれ、僕たちの輪の中に柊木さんもいることが当たり前になればいいな、とクラバスで二人を倒しながら思うのだった――。

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