第11話 久しぶりに

「そういやお前、最近柊木さんとはどうなんだ?」

「ん~・・・まあ、少しずつではあるけど、仲良くなれてると思う。遊びに誘ったりとかはまだ難しいけど、メッセージとかでやり取りは結構してるよ」

「ほーん・・・まあ、順調そうで何よりだ」


 時が経つのは早いもので、今はもう12月だ。

 ここ最近、なかなかに濃い日々を送っていることもあり、気が付けば今年もあとわずかとなっている。

 今は成人と一緒に約1週間後に控えたクリスマスのプレゼントを買う為に、二人で電車に乗って、ショッピングモールに来ていた。

 無事にプレゼントを選び終え、フードコートで遅めのお昼を食べているところだ。


「ところでタク。お前そのプレゼントは柊木さんへ渡すのか?」

「まあ・・・その、実は柊木さんのご両親からクリスマスの日、夕飯に誘われてて、せっかくなら渡そうかなと」

「えっ?柊木さんの両親に誘われてるのか?」

「うん」


 ハロウィンのお菓子を買いに行った日の華さんからのお誘いは受けることにした。

 その旨を華さんへ伝えると、メッセージで「OK!」スタンプと『25日の18時に来て』という内容が送られてきた。

 これでイブの24日は成人と桜と3人で集まって、クリスマスの25日は柊木家で2回目の夕飯となった。

 

「柊木さんのご両親と仲がいいって・・・段々外堀を埋められていってないか?」

「・・・ノーコメントで」

「まあ、仲良くできてるようで何よりだけど、それならそろそろ遊びにでも誘ったらいいのに。桜を見習って」


 そう言って、スマホのメッセージアプリの画面を僕に向けてくる。

 そこには、桜と柊木さんが、喫茶店で二人並んでピースしている写真と『栞ちゃんと喫茶店なう』というメッセージが表示されていた。

 知らないうちに二人は友達になっていたらしい。

 朝ランニングしていたら偶然会って、そこから話して仲良くなった、と柊木さんが言っていた。

 二人が仲良くなったのは喜ばしいことだが、柊木さんがランニングをしているのは少し意外だったと、聞いたときに思ったのはここだけの話だ。

 ちなみに成人に送られていた内容と同じものが僕のスマホにも届いていた。

 お返しに成人と二人でピースした写真を撮って、桜に送っておく。


「そう言われも・・・なかなか誘う勇気がないというか・・・」

「友達なんだからその辺気にしすぎてもしょうがないだろ。待ってばかりじゃ進まんぞ。当たって砕けろの精神だ」

「砕けちゃダメでしょ・・・ていうか告白するわけでもないんだからその考え方は違う気がする」


 一応何度か遊びに誘おうかと考えていたことがあったが、結局踏ん切りがつかなくて誘えていない。

 どこへ行くかも思いつかなかったというのもあるが、第一学校の誰かに見られたらいろいろ面倒になる心配がぬぐい切れなかった。


「それでも、いつまでもメッセージのやり取りばかりってわけにもいかないだろ。一人で決まんないなら、柊木さんに聞いたり、桜に相談したり、それこそ俺とかに相談してくれればいいものを・・・」

「そうだけどさ・・・。万が一学校の誰かに一緒にいるところを見られると後が怖いし」

「それなら二人で軽く変装して出掛ければいいんじゃないか?」

「えっ?」

「ようは、二人だと分からなければ問題ないわけだろ?だったら遠目で見ても分からない程度の変装をして出掛ければそんな心配いらないんじゃないか?」


 変装するという発想はなかった。

 たしかに、冬であればニットとマフラーなどを使えば、近くで見ない限りは柊木さんだと分からないか。

 僕もそんな感じでどうにかできれば、問題ないかもしれない。


「・・・なるほど。ありだね」

「だろ?それでも不安なら桜も呼んで3人で出かければいいだろ」

「・・・最初から相談すればよかったんだね」

「だから前からそう言ってるだろ。遠慮するな、友達なんだからな」

「・・・そうだね。そうする」


 一人で悩んでいたのが馬鹿らしくなるくらいに、あっさりと解決案が見つかった。

 といっても、まだ柊木さんと相談しないといけないから、そこはまた追々聞くとしよう。



 フードコートでお昼を済ませ、ショッピングモールを後にした。

 時間は15時過ぎくらいなので、成人の希望で二人で近くの様々なスポーツを遊べる施設へ来ていた。

 最初はサッカーコートが空いていたので、そこに入って1on1をすることになった。

 普段運動をしておらず、サッカーの心得も特にない僕が、サッカー部相手に勝てるはずもないので、当然負けた。

 試合終了時には、息も絶え絶えでコートに転がっていた。


「はぁ・・・!はぁ・・・!ナル・・・手加減ってものを知らないの・・・?」

「すまんすまん。つい真面目にやっちまった。でも、タクは運動ができないわけじゃないし、体力さえ付ければいい勝負できると思うぜ」

「ご冗談を」

「まあ、これを機に少しでも運動して体力つけることだな」


 成人の手を借りて、立ち上がって息を整える。

 まだ1種目しか遊んでいないのに、めちゃくちゃ疲れた。

 明日には筋肉痛になっているな、と少し鬱な気分になりながらも、友達と体を動かして遊んだのは久々だったので、なんだかんだ楽しかった。

 成人はというと、少し汗はかいているものの、息はさほど上がっていない。


「さて、次何やる?最初は俺が選んだから、次はタクが選んでいいぜ」

「ん~・・・それじゃあ、パターゴルフで」

「渋っ!」

「最初の種目で体力持ってかれたからね。休憩しながらやるにはちょうどいいでしょ?それに意外と楽しいよ?」

「まあ、いいけど・・・。それじゃあ、どっちが早く全コース回れるか勝負な」

「勝負ねぇ~・・・いいよ。負けたほう飲み物奢りね」

「いいぜ、望むところだ」


 そして始まったこの勝負、成人はゴルフクラブのコントロールに苦戦しているようだった。

 穴に向かって打っても、強すぎてあらぬところに転がって行ったり、加減しようとして、弱くしすぎて届かなったりと、全然進めずにいた。

 その間に僕は、どんどんコースを進んでいったので・・・。

 ―—結果は僕の圧勝だった。

 ちなみに、いちごオレを奢ってもらった。





「あいたた・・・。絶対筋肉痛になるね、これ」

「普段運動していないからな。たまには身体に鞭打っとけ」

「えぇ~・・・。まあ考えとく」


 そのあと18時過ぎくらいまで、バスケ、卓球、バッティング、バトミントンなどいろんなスポーツで遊んだ。

 それぞれの種目で勝負したが、運動部である成人がほぼほぼ勝っていた。

 僕が勝てたのは、卓球くらいだった。

 今は電車に揺られながら帰宅中である。


「いやぁ、それにしても久々にお前と遊べてよかったわ。プレゼントも選ぶのに相談乗ってもらえたし」

「それは僕も同じだよ。家族以外にプレゼント渡したことはほとんどなかったから、相談乗ってもらえて助かったよ」

「喜んでもらえるといいな、お互い」

「そうだね」


 成人は彼女である桜に。

 僕は桜と柊木さんに渡す予定だ。

 もちろん成人にも渡すが、お互いの分はまた改めて探しに行くことにしている。

 せっかくのプレゼントなので、当日までのお楽しみにしようと話し合った結果だ。

 なにはともあれ、あとはクリスマスを迎えるだけだ。

 僕はイブの集まりのほかに柊木家の食事会があるが、お邪魔するのも2回目なので手土産を持っていこうと思っているが、それの目星はつけているので問題ない。

 今年は久しぶりに楽しいクリスマスが過ごせそうだな、と思いながら電車に揺られていった――。

 


 

 

 

 

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