第2話 「柊木さんと友達になった。」

柊木ひいらぎさんと友達になった」

「「・・・はい?」」


 柊木さんから『友達になってほしい』と頼まれた翌日の放課後に、さくら成人なるとと三人でバーガーショップに寄っている。

 三人の注文を済ませ、商品を受け取って席に着いてから、柊木さんと友達になったことを報告した。


「すまん、タク。どういうことだ?」

「柊木さんってウチのクラスの子でしょ?あの男子が苦手で有名な」

「そう。その柊木さん」


 二人に友達になった経緯を話した。

 もちろん、柊木さんの男子が苦手な理由のところは、念のため伏せておく。


「へぇ~、ケガした柊木さんをたまたま拓道が助けたことをきっかけに、友達になったと。なんかラブコメみたいだね」

「それは僕も思った。まさか自分がそんな展開を経験することになるとは思いもしなかったけど・・・」

「それで?友達になったことを俺たちにわざわざ報告するってことはなにか相談があるんだろ?」

「なぜバレた」

 

 二人にわざわざ報告したのは、今後についての相談をするためだった。

 正直柊木さんとどう友達付き合いしていくか悩んでいたのだ。


「お前が自分から話すときは大体なにか相談したいときだ。昔からずっとそうだしな」

「自分からあんまり話さないけど、珍しく拓道から話すときは大体相談事だったね~」

「・・・なんか恥ずかしくなってきた・・・」


 あまり自覚はなかったけど、思い返してみれば思い当たる節はいくつかあった。

 自分のことを知ってくれていることは嬉しいが、照れくさくて落ち着かない。


「それで、相談っていうのは?」

「どうせ大方友達になったけど、どうすればいいのかわからない~とかでしょ?拓道のことだし」

「・・・」

「えっ?マジ?」


 ドンピシャに言い当てられてしまい、驚いて摘まんでいたフライドポテトを落としてしまった。

 僕のこと分かりすぎじゃない?ちょっとだけこの二人が怖くなってきた。

 エスパーか何か?


「・・・その通りだよ。友達になったはいいけど、女子と友達になったことがないからどうしたものか悩んでいるんだ」

「私も女の子なんですけど?私女子だと思われてないのかな?」

「桜はもう女子とか男子とか気にしないレベルまで来たというか・・・」

「鼻に揚げたてフライドポテト突っ込むぞ」

「すみませんでした!」


 桜の両手に10本ほどフライドポテトが装填されたので、速やかに謝っておく。

 こういうところが女子っぽくないなんだよな~とは口に出さないでおく。


「今失礼なこと考えてたよね?」

「滅相もございません」


 やっぱりエスパーじゃん・・・。


「まあ桜が女子かどうかはいったん置いといて、何にそんな悩む必要があるんだ?」

「いや置いとくな」

「まあ待て、このままじゃ話が進まん」

「ぐぬぬ・・・」


 成人の助け舟により、ようやく本題に入る。

 正直助かった。


「そんな難しく考える必要はないんじゃないか?普通に遊んだりとか、他愛のない雑談をしたりとか、そんな感じでいいと思うぞ?」

「それはそうなんだけど、学校内で普通に話しかけたりするのはまずくないか?柊木さんが男子苦手なのは学年内で噂は知れ渡っているし」

「まあたしかに目立ちはするよね~」


 一番危惧しているのは、過去のトラウマが原因で男子が苦手になってしまった柊木さんに僕が気軽に話しかけることによって、周りの男子たちから一気に話しかけられたりする可能性があることだ。

 現状柊木さんは、男子が苦手だという噂によって守られているような状態だ。

 最終的に男子が苦手であることを克服するという目標があるとはいえ、いきなり誰彼構わず話しかけられるのは精神的に良くないだろう。


「だったらさ、学校内でどうこうしなくたっていいんじゃない?一緒に出掛けて遊ぶのだって友達なら普通のことだし」

「たしかにそうなんだけど、友達になっていきなり、一緒に出掛けない?って誘うのはどうなんだ?」

「見方によってはデートのお誘いだしな、それ」

「いっそ私も一緒についていくとか?私も柊木さんと友達になりたかったんだよね~、可愛いし」

「俺もついていくぞ?」

「「いやナルはダメだろ(でしょ)」」

「ひでえ・・・」


 男子が苦手な柊木さんが委縮してしまう。

 いずれ柊木さんが少しずつ克服してきたら、成人にも協力してもらうこともあるだろうけど、まだ早い。


「まあ俺らが言えるのは、学校内でどうこうする必要はないと思うってことだな。学校の外でだって友達やっていける。学校の中でしか成立しない関係を友達なんて言わねえよ」

「それに、肝心の柊木さん自身にどうしたいのか相談しなくていいの?なんでも拓道が考える必要はないと思うよ」

「・・・確かにそうだね。なんか視野が狭かった気がする」


 柊木さんと友達になって、今後どうしていくかを考えていたはずなのに、肝心の柊木さんの意思を聞いていなかった。

 学校の中でどう接するかばかり考えてしまっていた。


「ごめん、なんか一人で空回ってた気がする。一度柊木さんとも相談してみるよ」

「もしなにかあれば、その時はまた相談してよ。力になるしさ」

「そうだな。遠慮なんかするな」


 何の迷いもなく、力になると言ってくれる友達がいるっていうのは、すごく支えになるのだと改めて感じる。

 僕も柊木さんにとってそんな友達になれるように頑張ろう。


「ありがとう、二人とも」


 また柊木さんと相談することにして、バーガーショップで少し雑談をして、そのまま解散となった。





「ふぅ~・・・」

 ピコン!

「・・・ん?」


 家に着いてからシャワーを浴びた後、少しラノベ読んでそろそろ寝るかと布団に潜ろうとしたとき、スマホから通知音が鳴った。

 スマホのロックを解除してから画面を確認すると、有名なメッセージアプリの通知が表示されていた。メッセージの送り主は・・・。


「柊木さん?」


 柊木さんだった。昨日の放課後、別れ際に連絡先の交換をしていた。

 一体どうしたのだろう。

 メッセージアプリを開き、内容を確認すると・・・。


『今週の土曜日、うちに夕飯食べに来ませんか?』


「・・・え?」


 いきなり、一緒に出掛けるよりもハードルの高いお誘い受けてしまった――。


 

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