第14話 《マオ視点》魔術師試験

筆記は時間を割いた甲斐があり手応えがあった。

そして、実技試験に向かう。


闘技場での実践で、受験者同士で戦う。

魔力量や、年齢を加味して組み合わせが決められる。

僕は王太子とのペアだった。

そう、彼も今日受験していた。


「おお、君も受験していたのか。ナカムラ家を相手に出来るのは私ぐらいだろうからな、ハハハハ。手加減はしないぞ?良いか?」


「よろしくお願いいたします、殿下。」


王太子と僕はクラスメイトであるが、授業で実践はまだないので、どの様な戦い方をするのか予測はつかない。


試験は10分間の戦闘の中で、試験官がポイントを付ける。

戦闘不能、またはどちらかが降参したらそこで終了となる。

生死に関わる攻撃をしかけた場合は失格となる。


また、多少の怪我であれば、試験会場に控えている白魔術師に治癒してもらえる。



『始め』

ー僕は王太子の様子を見た。

ー大きな魔力を練っている。

ー次の瞬間、特大のファイヤーボールが飛んできた。


僕は避けずにそのまま受けることにした。

勿論、全身防御魔法をかける。


髪の毛一本も乱れない僕を見て殿下は驚いた顔をした。


対する僕は、殿下に徐々に重力をかけ、動きを封じた。

殿下は重力に抗えず、膝をつき、手を付き、途中身体強化を使ったようだが、体が地面にめり込みそうな所で、試験官の判断により試合が終了した。


立ち上がった殿下は、パッパと服の汚れを払い近付いてきて、ものすごい笑顔で、握手を求めてきた。

「良い試合だった!良きライバルとして、これからも頼む!」


こないだの『妃』発言のこともあり、王太子に膝を付かせるという、些か悪意を込めたやり方をしたのだが……。


爽やかだった。

前から思ってたが、アホだけど悪い奴じゃない。



試合があっけなく終わると、僕の実力が判断出来ないとのことで、その後会場に魔術師団の副団長のヒューゴ・ラッセルが呼ばれた。


ヒューゴ副団長は、赤髪のナイスミドルだ。

魔術師といっても、戦い方は十人十色だ。

彼は魔術だけでなく剣も振るうようで、精悍な体つきをしている。

深緑の魔術師の証であるローブを羽織、胸にはシルバーのブローチが光っている。


魔術師のランクはブローチの色で分けられている。

C級、B級は白

A級はシルバー

S級はゴールドである。


魔術師の中でもA級は一握りしかいない。

祖父のゴールドに輝くブローチを見慣れている僕だけど、シルバーを見るのは初めてだった。

普通、ゴールドこそ見る機会は無いと思うのだが。


試合開始の合図とともに、熱戦が始まった……。

ヒューゴ副団長は身体強化を自身にかけ、剣を振るいながら間合いを詰め、魔法も撃ち込むスタイルの模様。


流石にヒューゴ副団長の魔法は避けたほうが良さそうなので、僕は重力操作でブラックホールを作り、彼の放つ魔法を吸い込み無効にしつつ、剣撃を避ける。

押されてる間に、攻略方法を考える。

今の僕の力では、魔法耐性も強化されてるであろう彼に重力をかけると弾かれるだろう。拘束魔法も同じく。


ということで、力押しすることにした。

同じく身体強化で動きを早め、剣の代わりに無数の氷刃で応戦した。

10分間があっという間に終了した。


終了後、ヒューゴ副団長と握手をした。

「マオ・ナカムラ、もっと上を目指すなら俺のチームに来い。」

「ありがとうございます。僕まだ学生なので……。」

「分かってる。だがお前の実力では国が放っておかない。悪いようにはしない。」

「……ありがとうございます。」


確かに学生であろうと、一度魔術師団に所属してしまえば有事の際は団員として呼ばれる。

その際は、ヒューゴ・ラッセル副団長のチームに配属してもらうことにした。



こうして僕は無事にシルバーブローチを手にし、寮に戻った。



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