第4話 イケメンだったなんて、聞いてません!

領地では、台風による水害の地域が予知夢に出たので、父に伝えた。

その後、水害は最小限に抑えられたと父から聞いて、ホッとした。



予知夢は、予知夢だとすぐにわかる。

夢のようで夢ではない。

目が覚めて、でも体が起きない状態、すっかり意識はある状態で見ている。

まだわからないことは多いけど。



ーーーーーー



それからあっという間に、入学準備をする時期になった。

マオがうちに来てから1年経つのね。


私もマオも15歳になっていた。



あっという間、と言っても

その間、冬休みには兄が帰ってきたり、

なぜか兄がマオに決闘を挑んだり、

なぜか兄がマオに「アニキと呼んでくれ。」と言い出したり。


3歳違いである兄とは、これから学園でも会うことになるので、二人が仲良くなるのは嬉しかった。



学園は王都から馬車で1時間程度かかる。

基本全員、寮生活をする決まりなのだ。

寮生活で必要なものを揃えたり、制服を新調したりと、忙しく日々が過ぎて行った。



「僕は従者として入学したい。」


「マオ、あなたも貴族令息なんだから、貴族として生徒にならないとだめよ。」 

マオは、この1年で私に対してかなり過保護になった。


「クラスが分かれちゃうじゃないですか!何かあったらどうするんですか?」


「もう、大丈夫よ!危険なんてないわ。」


「自分で髪の毛、乾かせないじゃないですか!従者なら隣室を確保できます。」


「私にはマオが作ってくれた魔道具もあるし。大丈夫よ!」


マオは、魔法もかなり上達したと思う。

そして、魔道具も沢山開発した。

《ドライヤー》という魔道具は髪の毛を乾かすのに日々使っている。

魔道具は魔力があれば使える。

魔力だけはちゃーんとあるのよ。



マオは度々英雄ナカムラの元に通ったり、時にはお父様と、高位魔術師が研究所として使っている魔術研究所にも通っていた。

とっても前向きで、沢山努力しているのを知ってるの。


マオには上位クラスで、ハイレベルな勉強をしてもらいたい。



ーーーーーー



入学準備も殆ど整ったところで、私とマオはお父様に呼び出され、執務室に向かった。


「実はねマオの視力について、色々調べてたんだ。魔法は視力がなくても発動される。目を閉じてても詠唱できるね?魔力が高い者ほど目で見たものより、魔力の流れを感じて動くようになる。その為か、魔力の高いものには視力が低くなるという傾向があった。」


「はい、侯爵様。祖父からは魔力のコントロールが上達したら、治るかも知れないと聞きました。」


「そうなのだよ、流石ユキオ・ナカムラ様。魔力のコントロールができていない者には、たいてい白魔術をかけても弾かれてしまう。魔力のコントロールは、潜在魔力が高い者ほど難しいんだ。しかしマオ、君は魔力のコントロールも大分上達したように見える。」


「はい、侯爵様。コントロールが出来るように積み重ねてきました。」


「うむ、では私の白魔術で治癒してみても良いかな?」


「是非お願いします!」




私は魔力の流れも見えないので、全く気が付かなかったが、白魔術師は体内の魔力の流れを見て治療することが多く、魔力の流れを見ることには長けているという。


お父様の話によると、出会った頃のマオは、体内から溢れ出た魔力が、飛び跳ねているような状態だったらしい。




「では、ここに横になってくれ」

執務室の仮眠用ベッドに横になると、厚切りメガネを外し、目を閉じた。


お父様がマオの顔に、目の周りに手を当てて何か詠唱している。

すると、マオの目の辺りが、クリーム色の光に包まれた。

静かな時間が過ぎる。


「よし、ゆっくり目を開けてみてくれ。」


私も、ゴクリと息を飲み、マオの顔を覗き込む。


「ーーーリリアーナ様、よく見えます。」


今まで気づかなかった…

初めて見たの、マオの瞳。

黒くで、凛とした、とてもきれいな瞳だった。 


黒髪黒目の、イケメンが目の前にいる。


「マオ…?よね。」


「はい。マオですよ?メガネをかけてないと違和感がありますか?」


「いや…その…あまりにも、かっ、かっかっ、こよ、」


初めて見たマオの素顔に、顔が赤くなるのがわかった。


「(プフ)リリアーナ様、かっこ…何ですか?ちゃんと言ってください。」


「ーーー言わない!」

マオに揶揄われてると気付き、ムッとした。


「侯爵様、ありがとうございます。この御恩はいつか必ずお返しします!」

マオはベッドから起き上がると、深々と頭を下げた。


「フハハハ、良いのだよ。私からの入学祝いだ。学園生活、身軽に楽しんで、しっかり学んできなさい。」



「「はい。」」


二人は、声を揃え返事をして、執務室から出た。

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