第5話 《マオ視点》僕の好きな人
3回目の王城での魔力検査で、不思議な女の子と出会った。
初めて見るほどの綺麗な子で、見とれてしまった。
眼鏡を貸してと頼まれて、
僕の眼鏡を度が合わないのに無理矢理かけた彼女は、当然気持ち悪くなり、倒れた。
止めておけば良かったと、申し訳ない気持ちになった。
父から彼女の訪問を告げられたのは、それから3日後だった。
父の旧友である侯爵様の家のご令嬢だった。
僕はそれから、父と侯爵様との間で話が盛り上がり、侯爵様の元で従者として知見を広めてくるようにと言われ、仕えることになった。
少しワクワクした。
もしかしたら彼女、リリアーナ様のせいかも知れない。
彼女は魔法が使えないらしい。
そして、特殊な能力、予知能力を持っていることを知った。
僕は元々魔法が好きで、魔法書を読み漁っていた。
その中でも特殊能力は文献が少なく、とても惹かれるものだった。
リリアーナ様は王太子妃候補だと知ったら、なんだか凄く落ち込んだ。
僕は英雄と言われるユキオ・ナカムラの孫だけど、ユキオ・ナカムラの三男である父子爵の、三男で…。
もちろん子爵家を継ぐわけでもない。
ちなみにユキオ・ナカムラは、普通の爵位ではなく、祖父の希望から「ナカムラ家」という唯一の爵位を授かっている。
通常の爵位に換算すると公爵家と同等となる。
リリアーナ様は「王太子妃になりたくない。王太子が苦手。」と言っていた。
侯爵様は、王家に嫁げばリリアーナ様を守れると考えている。
現王は、確かに賢王であり、幼なじみである侯爵様も陛下のことを心から信用している様だった。
しかし嫁ぐのは王太子なのだ。
リリアーナ様の美しい顔が、王太子に見られないようにと、魔道具で眼鏡を作った。
目の印象が全く変わるような幻影魔法をかけた。
我ながらよくできている。
ーーーーーー
夏になると侯爵様とリリアーナ様は、オーベル領で過ごすことになる。
僕は、初めて祖父の元で魔法を学ぶことにした。
祖父には三人の息子がいた。
三男が僕の父。
祖父には、膨大な魔力と能力があった。
それは、
息子達は魔力、能力ともそこそこだと聞いた。
周りの貴族階級の魔力と同程度らしい。
父の兄弟にも子供がいる。
僕の従姉妹だ。
大きな魔力や特別な能力を受け継いでいる者がいるとは、今の所聞いていない。
祖父が転移した時に授かったので、祖父の一代限りの魔力・能力だったのかも知れない。
王城では、ナカムラ家一族の魔力を時々検査していた。
それが、冒頭の魔力検査だった。
僕は生まれつき人より魔力が高かった。
魔力のせいで、視力が低いとも言われた。
視力は低いけれど、人の持つ魔力が見えた。
魔力への感受性が高かった。
魔力の色や暖かさ、雰囲気は人それぞれで、冷たい感じの魔力や、禍々しい魔力にも当てられた事もあった。
幼い頃の僕は外へ出ること、人に合うことが怖くなっていた。
ーーーーーー
祖父からは僕に魔力の制御の仕方を始め、新しい魔法の構築の仕方まで、様々なことを教えてもらった。
祖父の元いた
新しい魔法の構築は、《ニホン》のプログラミングに似ているらしい。
祖父は《ニホン》ではプログラマーという仕事をしていたらしく、仕事に没頭するあまり、睡眠を忘れ《駅のホーム》という場所から落ちて、気付くとこちらの世界にいたらしい。
魔法は、呪文と魔力で描く紋章で構築していく。
呪文、紋章にはそれぞれ意味があり、それを順番に積み重ねて行く。
その過程がプログラミングに似ていると言う。
《ニホン》の話をするとき祖父は懐かしそうで、時折寂しそうな顔をした。
そして僕に、「どんなに夢中になっても、睡眠だけは取るように」と口を酸っぱくして、言った。
僕は祖父に似ていると心配もしていた。
ーーーーーー
冬休みにはリリアーナ様の2歳年上の兄君、クリス様がタウンハウスに帰宅した。
クリス様は会って早々に、僕がリリアーナ様の側に仕える人間として値するか、決闘を挑んできた。
リリアーナ様がとても心配していたので、すぐに終わらせた。
怪我もさせたくないので、拘束魔法で一瞬で捕らえた。
クリス様は、自分と互角に戦えるから、認めようと言ってくれた。
その日から「弟と認める」とも言ってくれた。
そして僕は、この時侯爵様に、あるお願いをした。
侯爵様は「S級魔術士になれば認める」と約束してくれた。
S級魔術師は現在国内に3人。
そのうちの一人が祖父である、ユキオ・ナカムラだ。
魔法学園を卒業して、国家試験を受かると、魔術師と呼ばれる。
魔術師は強い方からSランク、Aランク、Bランク、Cランクと分けられている。
無理難題に思えるが、やるしかない。
僕は在学中にS級を取得することを誓った。
ーーーーーー
僕の魔法への探究心は潰えることなく、新しい魔法の開発と、リリアーナ様が不便にならないようにと魔道具の開発に勤しんだ。
祖父の遺言どおり睡眠だけはきちんと取った。
「まだ生きておる、勝手に殺すな。」と聞こえた気がする。
入学が近くなると、侯爵様から執務室に呼ばれた。
侯爵様は、時折僕の目を診てくれては、治療方法を探してくれていた。
白魔法は特殊な能力で、僕には使えない。
祖父にも使えなかった。
この日僕は裸眼で何でも見えるようになった。
魔力に集中すると、魔力も見えた。
リリアーナ様は時々僕の顔を見て、頬を染めるようになった。
可愛いが過ぎる。僕を殺す気ですか?
こうして僕とリリアーナ様の学園生活が始まった。
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