第25話 お姉様が出来まして。

入学からもうすぐ1年が過ぎる。


兄とオリビア様は、卒業式を迎えた。

アスベル王立魔法学園はプロムがあるので、みんなソワソワしながらパートナーを探したり、この機会にプロポーズをする人もいる。

兄はもちろん、オリビア様をエスコートした。


私達、在校生は参加できないので、当日の様子はわからないけれど、後日オリビア様からは、素敵なパーティーだったと教えてもらった。




ーーーーーー




兄たちが卒業して、6月には結婚式。

結婚式はオーベル領で開かれた。

親族、友人が集まり温かい式になった。

マオも一緒に来てくれて、私はオリビア様からブーケをもらって。

「リリアーナに受け取って欲しいの、大切な人と結ばれて欲しい。」

「ありがとう。オリビアお姉様。」

「あなたのおかげで、私は幸せをつかめたのよ、リリー、ありがとう。」

花嫁からブーケを受け取ると、次に花嫁になれるというジンクスがある。

私はマオを無意識に見つめていた。

マオは兄と談笑している。




「マオ様なら、きっとリリーを幸せにしてくれるわ。」

そんな風に笑いかけてくれるオリビア様の隣で、お母様も笑った気がして、思わず空を見上げた。



「マオ、お兄様と何を話していたの?」

「あ、いえ、あの、その……今夜のことに浮かれていて。はい、クリス様の名誉のためにも、ちょっとリリーには聞かせられないというか。男同士の話です。はい。」

「ふうん、秘密なのね。お兄様もロマンチックな気持ちになったりするのね!」

ロマンチックとは無縁だな、ゲスい話ですよ。と小声で言っていたが、リリアーナには聞こえなかった。



オーベル領に入ってから、積極的に領民と関わっているオリビア様は、領民たちにも歓迎されて、とても素敵な結婚式になった。




ーーーーーー




以前よりマオは学園に来れるようになっていた。

少しずつ平常に戻ってきてるようで嬉しかった。


カフェテリアでコーヒーと紅茶を頼む。

「結婚式どうだった?きれいだったろうね〜!あの子スタイル良いからね〜、あたしも見たかったわ〜!」

と、ガシガシと食器を洗いながら、おばちゃんが話しかけてくれる。

写真を見せると喜んでくれた。

 

カフェテリアの入口では、キャーキャーとギャラリーがいる。

カフェテリアに入ってくれば、おばちゃんも喜ぶだろうに。なかなかお客さんは増えない。


私達は2年生になり、学園は新入生を迎えていた。

マオは新入生の間でも人気でヤキモキしていたけど、本人はいつも通りで、お構いなし。


「ユーリア様と婚約と聞いてたけど、一緒にいるのはリリアーナ様よね?」

「リリアーナ様は、王太子様と婚約なさるんじゃないの?」

「でも仲睦まじい雰囲気よ……。」


なんて会話が聞こえてしまう。わざと聞こえるように話してるのかも知れない。

ユーリア様はどういうつもりでそんな噂を流してるのだろう。


「マオ……ユーリア様から縁談のお話なんてあるの?」

「ん?あー、家には来てるみたいだね。」


「っ……ゴホゴホ……!?」


「大丈夫?リリー!お水飲んで?」


「ゴホ……。んぐっ。」

ただの噂だと思っていた私は、盛大に粗相をしてしまった。 


「え、公爵家から来てるのよ?返事、してないの?」

「あぁ、断っているよ。ずっと。」

あり得ない。公爵家からの縁談を子爵家が断るなんて、あり得ないことをサラッと言う。


「そ、そうなの……。断って家は大丈夫なの?」


「あぁ、大丈夫だよ。リリーが心配するようなことは無いから、気にしなくて大丈夫だよ。」


「家を取り潰されても文句言えない事態なのよ?」


「僕、それなりに頑張ってるからね。ミリオン公爵も文句は言えないはずだよ。」


なるほど。ミリオン公爵は魔道士団もまとめている、軍部の長官だもんね……。

今マオに抜けられたら軍事力が落ちるとか、そういう事があるのかも知れない。


んー考えても、無駄ね。


ーーーーーー




「リリアーナ、また新しいお菓子店ができたのよ!薄いクッキーにクリームがサンドされてるのよ。」

「流石コリン!わたし今夏休みに領地へのお土産を何にするか、考えていたところよ。」


「そう言えば、もうすぐ夏休みね。リリアーナは領地へ行くのね。」

「ええ、今年は兄が結婚して、オリビア様にも会えるから、楽しみにしてるのよ。」


「そうね、良いわね!お姉様かぁ……憧れちゃうわ。しかもあのオリビア様だなんて……。」

「そうだ、良かったら夏休みオーベル領に遊びに来ない?」

「いいわね、行くわ!お泊り会って憧れてたのよ。寮では怒られちゃうしね!」

「オリビア様もきっと喜ぶわ。」



翌日私は、シェイラに護衛を頼んで、薄いクッキーサンドで、ラングドシャというお菓子を買いに行った。


帰りには、またキャンディ屋さんにも寄った。

マオがイチオシしている枕柄の《キンタローアメ》を、なんとなく責任を感じて、店内に売れ残っているものを買い占めた。


これも、お土産にしよっと。




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