第11話 陽キャの圧って強くないですか…?

教室に入ると、席を確認して座った。

座ったと同時に、後ろの席の子から話しかけられた。


「私コリン・カスター、宜しくね!あなたオーベル侯爵家のご令嬢よね?名簿見てビックリしちゃった!」


すごい圧ね、陽キャというやつ?

嫌な感じはしないけど……。

ハニーイエローのくるくるヘアーに、はちみつ色の瞳。太陽やヒマワリみたいね!

私、何か驚かれる事したかしら?


「はじめまして、リリアーナ・オーベルと申します。」


「ねぇねぇ、ウィリアム殿下ってどんな方?」


そうか、私じゃなくウィリアム殿下目当てなのね!


「えぇ、あの通り、素晴らしい方だと思いますわ。」


「そうなのね、良かったら紹介してよ!」


「ごめんなさい、殿下に私からお願いするのは不敬だと思うわ。でも殿下が先日、この学園内で身分は上も下もないと仰ってたから、機会があったらコリン様から話しかけたらどうかしら?」


「そうなのね! ナイスな情報ありがとう! これからも宜しくね、リリアーナ様!」


何に宜しくされてるのか、よく分からなかった。


授業が始まり、静まり返る。

賑やかだったコリン様も、授業は真面目に受けるらしい。






カーン カーン カーン カーン

授業が終わる鐘がなる。


「リリアーナ様、一緒にお茶しません?」

「ご、ごめんなさい。放課後は約束があって。」


コリン様、ごめんなさい。約束はないのだけど、もう少しゆっくり距離を縮めたいわ。


「リリアーナ、帰ろう」

ちょうどその時、背後からマオの声が聞こえた。

もう本当にナイス、マオ!助かった…


「ええ、帰りましょう! では、コリン様、失礼します。また明日。」


「あ、え、えぇ、ま、また明日。」

コリン様の声がうわずっていた気がする。



ーーーーーー




翌朝教室に入ると、早速またコリン様から声をかけられた。

「リリアーナ様! 昨日のイケメン、ナカムラ家のマオ様ですわよね? ご友人だったのね! お願い、紹介してくださらない?」


「えぇ、友人だけど……。」


「マオ様、とってもかっこいいのね! 私、王太子殿下より、マオ様派だわ! お友達なら紹介してくださらない? この通り!」


「だ…ダメよ、絶対ダメ!」


「もぉ〜昨日は王太子殿下の良い情報くださったのに〜!」


マオはダメなの!



ーーーーーー



あっという間に春は終わり、暑い夏が間近となった。

とにかくお喋りな彼女は、話題も豊富で、いつの間に化クラスの人気者となっていた。

私にも、休み時間のたびに話しかけてきて、私も段々と心を許しているところだった。


私がお菓子が好きだと話していたのを覚えていたようで、街に新しく出来た、人気のお菓子店のキャンディーをくれて。

「ありがとう。 桃の味ね、とっても美味しいわ! 中にゼリーが入ってるのね。」


「ええ、他にも沢山種類があったわ!」


「どんなものが、あったのかしら?」


「そうねぇ…イチゴや、メロン、あとフルーツ以外にもミルクや、《マッチャ》というのもあったわ!今日の放課後に一緒に行ってみる?」


「んーそうね、ご一緒させてもらうわ!」


近頃マオは試験が近いとかで、放課後は勉強に忙しく、一緒にいることが減っていた。

そう言えば、私達のクラスはまだ試験の話は来ていないのだけど、何の試験なのかしら。



ーーーーーー



制服のまま行くのは、貴族令嬢ということを宣伝しているようなものなので、

一度寮で着替えてから、門の前で待ち合わせることになった。

学校のある大通りから、お菓子店は近いようなので、歩いて行くことにした。



馬車でしか通ったことのない大通りにワクワクしてしまう。

甘い匂いと共に、店先で売っている食べ物もあった。

「ここのクレープも美味しいのよ!後で食べない?」

「いいわね!とっても美味しそう。いい匂いがするわ。」


目的のお菓子店は歩いて10分もかからずに着いた。

店の前では、まだ柔らかいキャンディーを伸ばしてトントントンと切っていて、切り口からは可愛いクマの絵柄がどんどん出てきた。


キャンディーの種類は豊富で、どれもキラキラ可愛い。

さながら宝石店のよう。

先程の可愛いクマのキャンディーは《キンタローアメ》と言う商品らしい。

《キンタローアメ》は沢山の絵柄があって、

眼鏡の柄があったので、マオへのお土産にした。


眼鏡、恋しくなっちゃうかしら?


中にゼリーが入っているキャンディーも数種類買うことにした。

マオが好きなブドウ味もお土産にした。


「リリアーナ様、沢山買ったわね。」

「ええ、ついつい買ってしまったわ!」


帰路を歩いていると、ドンっと人とぶつかり、気づいたら買ったばかりの袋を持っていかれた。


「ちょ、あなた何するのよ! 待ちなさい!」

走り出すコリン様。


「あ、コリン様、待って!」

コリン様を追う私。


追いかけるうちに、細い裏道に入ってしまった。


ーーーまずい

背後から、何者かに捕まれ、鼻先に布を当てられた。

薬品の匂いがしたと同時に、目の前が急に暗くなった。


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