第7話 突然の予知夢

「うぅ…ぅっ…………」


「お願い助けて…誰か…助けて……………。」


何処かしら…

声が反響してる。地下かしら。

真っ暗で、これ以上情報が見つからない。

若い女性の声ね。

声が震えて掠れてるわ。

時間帯も…分からないわね。



ーーーーーー

 


ガバッ!

もう日が傾いていた。

寮に着いて、休んでいたら寝てしまったのね。


それは予知夢だった。

でも、情報が少なすぎる。


捕らえられてるか、誤ってどこかから出られなくなってるか…





 

コン、コン、コン、、コン、


「…ん?」


ドア、じゃないわね、窓…?


コン、コン、


窓に、何かが当たってる。

窓に近づくと…あ、紙飛行機!

窓を開けると、紙飛行機は滑らかに机に滑り降りた。

永年勤続のパイロットが乗ってるはず。

そして机に無事着陸した紙飛行機は勝手にパラパラと開かれた。


《ご飯行きますよ》


何度も見てきたマオの字で、ただそれだけ書いてあった。

窓からマオの部屋を見ると、こっちを見て手を振っている。

手を振り返して、部屋に戻って、鏡の前で乱れた髪の毛を整えて…急いで外に出る。

夕方はまだ少し肌寒かったな。


噴水の前には、既にマオが居た。


急いで来た私は少し息が上がってる。

「ハァハァ…マオ、私予知夢を見たの。」


マオは目を見開いて、頷いた。

「どうする?ここではまずいよね、場所を変えよう。」


「うん。」


私達は寮から離れた広場でベンチを見つけて座った。


「今度は情報が極端に少ないの…。どうしよう。」

声が震えてしまう。


「落ち着いて、リリアーナ。ゆっくりでいいからね。」

マオが背中を撫でてくれた。

その手の暖かさに、少しずつ心が溶けていく。


「真っ暗な場所で光が一切無かったの。若い女性の声で、助けてって聞こえたわ。声が反響していたから、地下や、石造りの場所かしら。女性の声は震えていて、掠れていたわ。寒いから震えていたのかしら。」


整理されていない見たばかりの情報を、マオがゆっくり聞いている。


「確かに…情報が少ないね。」


「うん…。」 


「真っ暗ということは、《ライト》が使えない状態なんだね。魔力切れなのかな。震えているなら、今はまだ寒い時も多いよね。近い日に起こることなのかもしれない。」


「そうね、、、ひひひぇーっくしゅんっ!ごめんなさい!」


マオが何かを詠唱すると、周りの空気がふわっと暖かくなった。


「ごめんね、気が付かなかった。寒かったな。」


「ありがとう、マオ…」


私にはマオがいる。

私が見た予知夢の女性の声は、震えていて…。


「助けなきゃ!」


「そうだね、でもリリアーナは、お願いだから待っていてくれないかな。」


「そんな事出来ないよ!」


「うぅ…でも僕はね、リリアーナに何かあったら…」


「大丈夫よ、必ずマオと行動するわ!残念だけど、一人では何もできないことを、私はよく知ってるのよ?」


「そんなことはないよ。リリアーナは何でも出来るよ。分かった。必ず僕と行動しよう。約束だよ?」


「うん、約束するわ!」


「まずは情報を集めよう。行方不明者がいないか、学園と騎士団に問い合わせてみよう。」


「うん。マオが居てくれて、本当に良かった…。私にはマオがいるのに…」

あ…だめ…涙が出てくる。


「大丈夫、大丈夫だよ、リリアーナ。」

マオが言う大丈夫は、いつも本当に大丈夫なんだと思える。

マオの親指が私の涙を拭ってくれる。


お母様が亡くなってから、私はほとんど涙が出なくなっていた。

いつもこの世界を、映像を見ているような気持ちだった。

冷静でいること。

私ができることは限られていると、線を引いて。


でも私は一人ではない。

守りたい人もいる。


私達は学園内に先生が残っていないか探した。

もう日が沈み、残念ながら警備員しかいなかった。

警備員にも確認してみたけど、行方不明者の情報は無いと教えてもらった。


閉門時間以降に学園を出るには先生の許可が必要なので、寮の管理人に相談してみたら、騎士団員がこちらに来てくれることになった。

騎士団に相談してみると、ここ最近の若い女性の行方不明者は居なかった。

ただ、平民の場合、騎士団に捜索依頼を出さない事もあるとのことだった。


時間が過ぎてゆく。

もう消灯時間になってしまった。


「リリアーナ、今日はもう休もう。さっき、管理人さんからパンを頂いたので、これを食べて。食べられる?」


「マオ、ごめんなさい。もう食堂は閉まっちゃったわね。お願い、マオが食べて。」


「だめです。僕の分もありますから。じゃあお行儀が悪いけど、ここのベンチで一緒に食べましょう。ね?」


正直全く食欲が無かったけど、私がちゃんと食べるまで、見届けられた。


消灯時間に暗い廊下を歩くのは、《魔法・ライト》が使えない私には危ないので、マオは落ちていた石を拾い、石を握って眉間に近づけていると、石は光る石に変わった。 


「これを持って歩いてください」


石から出るこの優しい光は、マオの魔力だと、よくわかる。

私が何度も温められた心地よい魔力。


「どんな時でも、睡眠だけはきちんと取ってください。」 

「うん、おやすみなさい、マオ。」 


部屋に戻ると、軽くシャワーを浴びて

マオの魔力が残る石を握りしめてベッドに、入った。

それはとても安心できて、すぐに眠りについた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る