第31話 マオ視点 陛下救出

転移した先は敵国への国境付近の深い森だった。

すでにヒューゴ・ラッセル副団長率いる魔道士団が

控えていた。

陛下、宰相の誘拐、救出は、隠密行動になるため、精鋭を20名ほど集めた。


「お待たせしました。」

「あぁ、慎重に行こう。敵の手段に何があるか、全く見当がつかない。」




捉えた刺客は早々に自害したが、武装兵器から、ここ最近、動きが怪しかった元プラーデンの者だとすぐに目星がついた。


元科学大国であっただけに、所持していた武器はアスベル王国では決して作れない物だった。

また、侵入経路は見つからず、魔力の痕跡もない。

恐らく転移に準ずる、何かを使ったと見られた。


「そんな事が可能なのか……。」

その場にいる誰もが、焦燥感に襲われた。







祖父から聞いた話では、元プラーデンには祖父と同じ、異世界人がいるかも知れない。という情報だった。

ミサイルにしても、武装兵器にしても、異世界の情報を持っている者がいると、考えたほうが自然だと。

この魔法の世界で、唯一科学が発展した国。






深い森の周囲には、国境線となる崖がある。

崖の上が西側の国だった。

紙飛行機で周囲を探り、陛下とオーベル侯爵の魔力を探りながら進む。

崖を登り、国境を超えてもなお、深い森は続いている。



身体強化を各々にかけながら、2日ほど進んだ所で、大きなドーム型の建物を見つけた。

周囲には、重厚な車両が何台も停めてあることから、軍事施設と伺えた。


アスベル王国では移動手段は馬車が中心となっている。

魔力を動力として動く、小型車を開発中ではあるが、これほど重厚な車両を動かすことは、現在のところ不可能である。

動力は、魔力なのか・・・それとも・・・。





紙飛行機を通じて、魔力の残滓を探ると、この施設に僅かながら、陛下の魔力を感じた。


ヒューゴ・ラッセル副団長に告げ、作戦をたてる。


ドームには、魔力への干渉は無いようなので、カゲを出して、中に侵入した。

カゲは魔力を持つ者からみても、猫にしか見えない。

また、影にもなるため、姿を隠しながら進める。


ドームの中には、あまり多くの軍人は居ないようだった。

ドームの入口には穴の空いた形状の鍵はなく、カードのようなものを翳して入るようだった。

およそ30人前後。

こちらの兵力は精鋭20名

科学技術がどれほどのものなのかが未知数で。



作戦が組まれ、決行は本日深夜となった。



深夜2時


先に施設に送り込んでおいた、カゲが鍵を解錠する。

入り口付近の部屋にいた、敵兵2名の顔にさウォーターボールをまとわりつかせた。

顔だけが水風船に入れられて、抜けられない状態……。

敵兵は、一瞬何が起きたか分からずに、驚いた顔をして、少しもがいたあと水を吸い込み、息ができずに、静かに崩れ落ちた。

侵入が見つかるまでは、ほとんどの敵をこの方法で沈めていく予定だ。



僕は、魔力感知が得意なので、ヒューゴ・ラッセル副団長の隣で陛下と宰相の魔力を探る。

陛下の魔力は膨大なので、嗅ぎつけやすい。


もう近い。


この部屋の奥の、扉の向こう。


扉を開けると、敵兵が3名ほどいた。

すぐにウォーターボールを投げるも、1名とり逃がし、敵兵は壁についていた【非常用】と書かれた赤いボタンを押した。


【ビービービービー侵入者発見!】

警報音がなる。



「マオ、お前は陛下を連れて、安全な場所へ転移してくれ!」

「はい!」


「はは、私がそんなに腰抜けだと?久しぶりに腕が鳴るわ。なぁ、クラーク。」

「はぁ…あまり無茶はせんでくださいよ。昔から陛下のヤンチャには、参ってばかりだ。」

そう言うと、オーベル侯爵は陛下に、防御魔法をかけた。

虹色の眩い光が陛下を包み、陛下の中に吸収されたように見えた。

それから、オーベル侯爵はヒューゴ・ラッセル副団長、騎士達へと次々に防御魔法をかけていった。


扉から出て来た道を戻る途中で、前方から何か飛んできた。

拳サイズのそれは、着地すると煙を吐いた。

辺りが煙に覆われる。

「恐らく吸い込むのはよくない。なるべく吸うな。ある程度は防御魔法で、防げる。」


ヒューゴ・ラッセル副団長は、煙に巻かれる前に、前方へ突進し、剣を構えた。


僕はブラックホールを2つほど展開し、先程の煙を吸い込んだ。

あたりから煙は消え、視界も戻った。



バンバン!バン!

次に、こちらを目掛けて、《銃》という武器を構えた敵兵から、大きな音がした。

この武器は、世界大戦でプラーデンが使っていたものだ。

ものすごい速さで、小さな弾丸が飛んでくる。

なかなか避けられない。

防御魔法で貫通はしないかもしれないが、試したくはない。

手前にシールドを展開して、備える。


ーーーーーズン!ズン!

その弾丸はシールドに阻まれて、身体には当たらなかった。

が、しかし、シールドにもかなりの衝撃が感じられる。

手強い。これがいくつもあれば…


「気をつけろ!小さな弾丸が飛んでくるぞ!各自シールド展開!」

ヒューゴラッセル副団長が叫ぶ。



バンバン!バンバンバンバン!

一斉に弾丸が飛んでくる。

僕は重力魔法を展開した。

パラパラ、パラパラ……

弾丸の軌道に、大きな重力をかけて、一気に落とした。


バンバン……

パラパラ……

「くそっ……ええい、退却!!」

敵のリーダー格の男が叫ぶと、一斉に退路に向かう。



「逃すものか!ファイヤーウォーーーール!」ゴォォォ…

炎に阻まれ、逃げ道を失う敵兵。



「陛下…!また無茶を……。」

「フハハハハ、どうだ?私の魔法もまだまだ現役だろう?よし、まだまだ行くぞ!」


また一斉にこちらに《銃》を向ける敵兵。

僕は重力を操作して何度も弾丸を落とし続けた。

ヒューゴ・ラッセル副団長ら前衛が、一人また一人と捕らえていく。


全て捕らえると、外はもう明るくなっていた。


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元従者だったチートな厚切りメガネくんに、どうやらキュンが止まりません! 青々 @nomeri

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