第2話 勇者召喚
櫂渡とともに光のトンネルに巻き込まれた高校生たち、
召還に成功したと思いきやざわざわと不穏な空気が流れていた。あからさまに頭を抱えているものもおり、三人は召還されたとも気づいておらずここがどこなのか、いったい自分たちの身に何が起こったのか周りの明らかに自分たちを見る不穏な視線に戸惑っていた。
周りにいる人たちはいかにも西洋人という頭髪や目の色の持ち主で服装は中世ヨーロッパの宮廷の服はこんな感じだろうかと思えるいでたちで、さらに、一段高くなった所にひときわ豪華な服装の人がいて王様ってあんな感じかなぁと思える。先ほどから三人の周りには同じく中世ヨーロッパの騎士のような人たちが取り囲んでいた。
英雄が遥香と小夜に
「ここは何処だと思う?というか、さっきの光ってるトンネルみたいの何?それに櫂渡さんも光るトンネルにいたよな」と話しかける
遥香が
「映画か何かの撮影にまぎれこんじゃったのかしら、外国人ばかりだし、衣装も中世ヨーロッパ風だし、、」
と推測する。それに対して小夜は、
「にしても、全然聞いたこと無い言葉話してるよ…さっき来たこの騎士みたいな人たち槍の穂先をこちらに向けて、緊張感がはんぱないし。なんか賊として囲まれてるんじゃない?突拍子もない事言うけど…異世界に飛ばされたのでは??」
と突拍子もない事だとは思いながら答える。
二人の意見を聞いて英雄が
「今ってどういう状況?もしかしてオレら急にわいた賊認定されてる?え、あれ?殺される?」
と取り乱しているのに向かって遥香が、
「あんたしっかりしなさいよ剣道は私より強くなったけど心は弱っちい昔のままね」
と容赦なくけなす。
二人は幼なじみで小さい時から練習含めて数多く対戦しているが遥香に英雄はまったくかなわなかった。
しかし高校にはいって5月が過ぎる頃から徐々に勝てるようになり夏を過ぎると英雄の方が勝つことが多くなった。
剣道の腕は未だ遥香の方が明らかに上だが昨年から体格がぐんぐん大きくなった英雄の力技に遥香が押し負けることが増えたのであった。
しかし、勝てるようになっても、長年の上下関係はなかなか変わることなく英雄は遥香にアタマがあがらなく今もやりこめられているのだった。
そんな二人のやり取りを見ながら小夜は少し冷静に周りを見てみる。段の上の方では王様らしき人に神官ぽい人が慌ただしく何か説明をしている。
こちらをチラチラみたり時々声を荒げたりしていてこの場では小夜たちだけでなく、おそらく召喚したであろう側のここにいる人たちにも不測の事態が起こっているようである
そんな状態が長く続き、周りを警戒する集中力がとぎれてしまい、ぼんやりとこの世界へ来た時の事を思い出してみる。
櫂渡と試合会場前で別れた後、その後ろ姿に向かって遥香が大声でお礼を言ったら、立ち止まり振りかえって「試合頑張れよ」って応えてくれたその瞬間に三人と櫂渡が光のトンネルにとらわれてしまったのだった。
「やっぱりここは異世界かなぁ…定番では最低言葉は通じるものなのに、いざ召喚が現実となるとそんな特典無いのかな…言葉を覚えないと生きて行けないなぁ…」
「櫂渡さんは無事なのだろうか?」
小夜は独り言を言うが、英雄と遥香は言い合いを続けていた。言い合いと言っても一方的に遥香が英雄を言い負かしてるのだけども、
「楽しそうだからいいか」
思考は櫂渡との出会いに移る。
櫂渡と三人が知り合ったのは光のトンネルにとらわれる少し前にさかのぼる。試合会場へ電車で向かっていた三人だったが乗る路線を間違えてしまった。
試合会場の最寄り駅だと思って降りたら似た名前の別の駅だということで途方にくれて駅員と相談していたその時に櫂渡が現れた。駅員と知り合いだった櫂渡は事情を聞いて試合会場まで車で送る事を申し出てくれた。
電車に乗り直すと時間がとんでもなくかかるけど車で直線距離ならたいした距離ではない。
しかし、タクシー呼ぶにもこのあたりはなかなか来てくれないって駅員に教えられてホトホト困っていた所であった。櫂渡の出現は神が降臨したかとおもった。
櫂渡は沖縄旅行に出かけるところで(うらやましい)、こちらの駅からでも向こうの駅からでもどちらから乗っても問題ないからって言っていたが、車は駅の近くの個人商店所有の駐車場に止めいて、一週間分駐車場代は前払いで払ってあった。
お金もたいした金額じゃないからそっちも気にしないでって言いながら商店にいって戻って来た櫂渡の手にはスポーツドリンクと駅弁フェアやってたからって某有名な釜飯を持っていた。
商店の人に車を出庫する旨伝えたら全額返してくれたらしく、そのままだと申し訳無いのでって事で試合をする3人への差し入れとしてスポーツドリンクを買い、どうせどこかでご飯を食べるからと、たまたま売ってた駅弁を買っていた。
「つい自分の分も同じ飲み物にしちゃったけど釜飯にはお茶だったなぁ、ははは失敗、それにしても、駅弁フェアなんてやってて釜飯置いてあって買ってしまった。空港までの特急で食べよっと」
って笑っていた。
小夜はくすっと笑いながら
「笑ってる顔、なんか可愛かったなぁ。ちょうど一回り上のお兄さんにかわいいって失礼だけどね」
と思い出しながらボソッと呟いた。
英雄を笑顔で追いつめていた遥香がそれを耳聡く聞いていて
「え、なになに櫂渡さん好きになっちゃった?」
ニヤニヤからかってくる。
「好きになるもなにも二度と会えないでしょうよ」
って小夜が反論する。
「トンネルには一緒に入ってきてたよね…どこに行ったのかしら?ここが異世界っていうなら、どこかこの世界の別の場所に送られてたら、また会えるかもよ。無事に会えるといいな」
と小夜の反論を受けて遥香がしんみり話す。
好きになっちゃったのは遥香のほうじゃないかと小夜は思いつつ、小夜も小夜で櫂渡の事が気になっていた。
周りの警戒をといていたため、周りの騎士たちの槍の穂先が目の前にあって三人ともびっくりした。
騎士たちに槍で促されて立たされる。気づかないうちに段の上の王様らしき人は消えていた。
槍と盾で周りを囲われながら歩くように誘導され、三人は見合わせて頷きあい、逆らわずについて行くと…
…そこは牢屋でした。
いきなり投獄されるとは異世界生活いきなり詰んだかもと頭をかかえる三人なのでした。
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