第19話 建国
櫂渡の国の建国が満場一致で決まったが、思わぬ所から待ったの声がかかった。
聖女ソフィアからだ。
「建国よりも教皇としてロマンダル教をなんとかしてほしいです。」
通常このような国際会議は教皇が出席するが、聖女の参加は極めて異例だ。
今回、教皇が罪に問われていて関係者の証人としての枢機卿もソフィアも出席しているが、今日のソフィアは聖女の肩書きではなく、教皇代理として出席している。
櫂渡に指名されたからだが、枢機卿達も過去に不正などに荷担している可能性がないソフィアを代理に据えるのに反対はなかった。
そして、ここでのソフィアのつけた物言いは、櫂渡に国づくりもいいが、ロマンダル教を何とかしてくれという事だ。
「教皇の証を輝かせたカイト様にに教皇になってもらわねば信徒がついて来ません。」
とソフィアが詰め寄る。
それを聞いて西と東のガルリア帝国の二人も統一したガルリア皇帝になってもらわねばなりません。と言ってきた。
そうしたら、救世主様はガルリア帝国だけでなく我が国の君主でもあるべきだ。と各国が言い出した。
何が何だか分からなくなった櫂渡は念話でフェリルに聞いてみる。
『これ、どうなってるの?』
『結論から言うとみんな櫂渡にアウリエベ全体を治めろって言ってるのだな。政治、宗教、経済含めてね。』
『どうしてそうなるの?』
『救世主になったからだな。おとぎ話では救世主が現れたら主権を王家から救世主に移す。神に返す行為に近いとされておる。各王家は神から王権を授かったとされているからな。』
『主権は国民には無いのか?』
『ケアンドル獣人連合国ぐらいかな。』
『帝国は?』
『帝国は帝位は初代から受け継いだ者が指導者と考えているが必ずしも血は重要では無い。皇帝の証を輝かせる者がいなければ血筋を用いるが輝かせる者が現れた場合はそこから帝位はその者が持ちそれ以降は輝かせる者がいなければ輝かせた者の血筋で継承する事になるな。まぁ、輝かせたのは初代以来初めてだがな。』
『王国や帝国はそうとして、ケアンドル獣人連合国は国民主権なんだろう?』
『であっても、救世主が現れた時にはその者を君主と仰ぐとされておる。それがロマンダル教の教義の一つだからな。
『とすると、ひょっとして?』
『ああ、カイトが
少し頭を抱えたが、櫂渡は各国へ丸投げすりゃあいいじゃんと思い、
「分かりました。引き受けます。引き受けますが、今までと同じように各国で運営をお願いします。揉め事は俺が介入します。お願い事もたくさんします。」
「ちょっと、教皇は?」
と、ソフィアが聞いてくる。
「今までと同じように決めてくれ。ただし、その者は教皇代理とする。代理だが、教皇だけが入れる部屋へ入っていい。俺は神託は聞けるから、部屋に入る必要はない。」
「私は代理しなくて良いのね。」
「構わないよ。もう聖女修行も終わったろ?自由にして良い。」
「私の居場所はカイト様のいるところよ。シルビア様だけに良い思いはさせないんだから。」
なんとも不穏な雲行きだなぁ。シルビアと中良さそうだったし、シルビアが何とかしてくれるでしょうと軽く考えている櫂渡。
気を取り直して櫂渡は
「国家としてウミノワズリは承認してもらい、ありがとうございます。我が国家の全容をお見せしたい。」
櫂渡は魔法で球体を表示する。
「これが、この世界です。惑星ガイアスと言います。」
周りからどよめきが起こる。この場にいるものの中で理解しているのは、ソフィアぐらいだろう。
「このあたりのエリアがアウリエベです。」
一部を指し示して伝える。
「そしてこの輪っかがグレートオーシャンサークルです。皆さんがグレートデッドエンドフォールと呼んでいるところです。」
また、どよめきが起こる。
「このグレートオーシャンサークルは二重になっていて、内側と外側で流れる向きが逆向きに流れています。」
「このサークルの中にある島々がウミノワズリの領土となります。」
領土にある島々を指し示していく。オリンポス島は表示しない。オリンポス島は実際の場所も結界で隠している。
オリンポス島の代わりに首都機能を持たせる島をパルマーレのお宝の中にあった大陸を作る魔道具をそおっと使って人口島を作ってある。もっと小さい島にしようとしたが加減が難しくてオリンポス島より大きくなってしまった。
基本的には平坦に造れたので建造物やら道路やらを思い通りに作れて結果オーライとしよう。
作る街をウミノポリスと名付け、島をウミノポリス島とした。
「ここが、わが国の首都ウミノポリスです。今、急ピッチで街の建設をしています。」
とウミノポリスの場所を示した。
「ご覧の通り惑星ガイアスにはアウリエベ以外にも世界はあります。砂漠の向こう側にもおそらく人の住めるところがあります。」
「また、高い山脈の向こうにも世界はあります。グレートオーシャンサークルの反対側にも世界があります。」
「魔物も人もいます。文明もあります。」
「そういう人達と今後交流も考えています。」
「それぞれの国の事は、それぞれに任せます。ウンノ商会の特産品の種や栽培方法は教えます。豊かな世界にしましょう。」
櫂渡の挨拶を受けて満場の拍手が鳴り止まずに響き渡った。
第五章 魔王 完
第二部 アウリエベ冒険編 完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます