第7話 運命の対決

 翌日櫂渡達はロゼリアナ軍の防衛ラインをなんなく突破し、ガイアスが拠点としていた遺跡にやってくる。


 かつて、ガイアスの事を慕っていたが、島で打ち捨てられこの場所までついてこれなかったヨーセルを呼び出した。


 これからの戦闘で今以上に破壊されるかも知れないから、今の姿を見せてやろうと思ったのであった。


 遺跡のバルコニーのような所にサンホゼーロ、ゴウヨ、メルザン、カタレーが勢揃いで何か言っているが良く聞き取れ無い。


「死ねっ!」


 およそ聖職者とは思えない発声が最後に聞こえそれと共に遺跡から櫂渡の魔砲マジックキャノンによく似た魔道具の攻撃があった。


 櫂渡達はそれらを難なくシールドではじき飛ばしバルコニーの四人近くに打ち返した。


 たまらず四人は逃げ出した。


 何がしたかったんだろう?それにしてもメルザンはここにいたんだなぁ。後でメロルビン王国へ知らせてやるか、と櫂渡が思っていると遺跡の扉が開き、英雄、遥香、小夜が出て来た。


「久しぶりだな。」


 と櫂渡が声をかける。


「久しぶりね」


 と遥香が代表的して答える。


「英雄、ずいぶんでかくなったな。」


 前は体格はがっちりはしてたが櫂渡と同じぐらいの身長だったはずだ。今はそこから十センチ以上大きくなっていそうだ。


「そうね、ずーたいばっかり大きくなって脳みそは退化してるけどね。」


「そんなことはない。俺も心技体共に成長しているぞ。」


 小夜はそんな、二人を見ながらクスクス笑っている。


 出会った時とあまり変わらないやりとりしてるなと少し櫂渡が懐かしんでいると、さっきまでクスクス笑っていた小夜が、


「櫂渡さんも元気そうでなによりです。」


 ととびっきりかわいい笑顔で言ってくる。が、その後、表情を引き締めて、


「魔王になってしまうなんて。」


 それに、遥香は続けて、


「久しぶりに会ったけど、櫂渡さんを倒さなくてはならないの。私、勇者だから。」


「遥香が勇者なんだ、英雄じゃなくて。なんとなくそんな気もしてたけど。小夜は賢者だろ?英雄は何になったんだ?」


「俺は剣聖だよ。そろそろ無駄話は終わりにしようぜ!」


 と切りかかってきた。と同時に後ろからさっきの魔砲もどきが櫂渡を襲う。


 シールドではじいていると、英雄が目の前に迫って来ていた。


 英雄が振るう剣を避けようとするといつの間にかそこには遥香が剣を振っていた。 


 避ける場所に困り後ろに飛下がるとそこには小夜が持つメイスから魔砲のような物が放たれ退路を絶っていた。


 仕方なく櫂渡は前に踏み込み直し、遥香と英雄の剣を指で掴み、二人の腹に蹴りを入れる。


 小夜の攻撃をシールドで受けるだろうと予想しさらに踏み込んでいた二人は虚をつかれ吹っ飛ばされる。


 櫂渡が追い討ちをかけるのに合わせて小夜が、魔砲を放ってくるが、それはよけながら追撃する。


 しかし、背後にある遺跡から魔砲もどきが放たれそれをよけた所で遥香と英雄は立ち上がって櫂渡にまた向かって来た。


 櫂渡はあの遺跡からの魔砲は三人と連携がとれていて厄介だな。と思いつつ、誰が操作してるんだろうか?


 このスピードについていけなくてはならず、さっきバルコニーにいたサンホゼーロやゴウヨでは無理だろう。無差別に打ち出すならまだしも。


「聖女か?いや、そんなはずは無いな。」


 櫂渡には聖女はここにはいない確信があった。


「だとすると、小夜の遠隔操作か!なかなかやるな。」


 そんな独り言を言っていると、


「何ぶつぶつ言ってるんですか?余裕ですね?」


 と英雄と遥香の連携技で櫂渡を攻め立てる。背後に小夜がいるから、いいタイミングで櫂渡めがけて攻撃が入る。


 また、うまい具合に英雄と遥香の二人に連携を許してしまう。今度は剣を捕まれないようにしながらの攻撃だ。


 小夜が狙っていて後ろにも下がれないから、更に加速して前に踏み込む。


 二人の手を打ち抜き、刹那止まったところでまた二人をとばす。今度は追撃せずに小夜へ攻撃をする。


 肉迫してきた櫂渡をメイスの石突きで突いてくる。しかも殆ど動かさなくてもいい低い位置。


 メイスを振り回す時間は無いと判断したようだ。なかなか鋭い突きだが、櫂渡はかわし小夜に一撃をいれる。


 小夜は体をくの字に曲げて悶絶する。


 英雄と遥香が立ち直って来たがもう遅い。今度は背後や遺跡からの攻撃を気にせずに思いっきり前に踏み込む。二人の剣をまた指でつかみ砕く。


 砕いた刹那に二人共に蹴りを叩き込み追撃する。もう小夜の援護が無いからと一直線に追撃するが、魔砲が小夜からと遺跡から同時に飛んできた。


 かわして小夜の方を見ると小夜が意識を失う前の最後の力を振り絞ったようだ。見事だ。


「こっちも出し惜しみしてられないよ。覚悟決めな!」


 遥香が英夫に発破をかける。英雄は収納から一振りの剣をとりだす。


 遥香は短槍だ。


 遥香が英雄の後ろに隠れて、英雄が突進してくる。英雄が横にかわしたと思ったら短槍が飛んできている。


 単槍を投げた遥香は英雄が避けた方とは反対側から収納から剣を出して切り込んでくる。


 正面の短槍をかわして遥香に向かい蹴りを入れる。背後から英雄の剣が横殴りに繰り出されるのを屈んでかわし英雄の方へ後転して向かい手元を蹴り上げる。


 遥香への蹴りは少し浅かったようで立ち上がって来た。


 少し英雄の剣に違和感を覚えて櫂渡は改めて二人と対峙する。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る