第8話 石ころ

 櫂渡と遥香、英雄、小夜が戦っている隙に、フェリルとヨーセルはハティとスコルを伴って遺跡の中に入っていく。サンホゼーロやゴウヨを確保する為である。


 遠巻きに櫂渡達の戦いを見ているロゼリアナ軍への牽制としてゴーレム達をロゼリアナ軍に対峙させてある。


 ロゼリアナ軍にはもう戦意もなく、脱力して呆然と櫂渡達の戦いを眺めている。


 フェリルとヨーセルの向かう遺跡の中はあちこちに罠があったりしたが、二人と二匹にはなんの役にも立たなかった。


「もう少し楽しめると思ったのじゃがのう。」


「フェリル油断してはなりません。ほら、そこ。」


 足元から槍が飛び出して来るが、踊るように避けていくフェリル。わざとトラップ踏んで遊んでいるようだ。


「あらかた、ここの魔道具の類は発掘しつくしただろうな。どの部屋をのぞいても何にも残っとらんの。」


「それは、そうだろうな。少しでもガイアス様の痕跡を感じられたらと思ったが何にもないですね。」


 ヨーセルが寂しそうに言う。

 

 そんな中でフェリルが一つの石ころを見て


「なんじゃ?この石は?魔石とも違うが普通の石ころにしては魔力的な何かをすごく感じないか?」


「そうですね。カイト様なら分析出きるかも知れませんね。一応今時点でシシリーに聞いてみましょう?」


「シシリー何だと思う?」


『ん…分からないけど持って帰っても危険は無いよ。カイト様に魔素を注いでもらえばそれが何か分かるかも。』


「持って帰るか…無くしそうだし、忘れそうだな。」


「私が持って帰ります。」


 とヨーセルがフェリルから石ころを取り上げると自分の収納へしまった。


 そんなことがありつつ軽口をお互いに言いながら歩き回るが何もめぼしい物は無く、サンホゼーロ、ゴウヨ、メルザン、カタレーがいる場所へついた。


 この遺跡の王座とも言える場所、恐らく初代勇者にガイアスが討たれたであろう場所にいる四人を見てヨーセルは不快感が募った。


「良くここまでたどり着いたな。どうだ、あの男と手を切って我らと手を組まぬか?領地など好きなだけあたえるぞ。」


 と、サンホゼーロが言う。


「誰が魔王だか分からない台詞じゃな。」


 とフェリルがヨーセルに囁く。


「その台詞を言うなら、世界の半分って言うのではありませんか?」


 とヨーセルが、サンホゼーロに不快感を露わにしながら言うと。


「世界の半分とは強欲なやつめ。やはり魔王の眷族だけあって身の程を知らぬな。じゃが、もうしまいじゃさらばだ。」


 と何かボタンを押す。


「…」


「どうした?」


「では、さらばだ。」


 気を取り直してまた押してみるがやっぱり


「…」


「だからどうしたのじゃ?はよせぬか?」


「ゴウヨ、なぜ爆破装置が作動しないのだ?」


「私にもさっぱりと…もう一度押していただけますか?」


「ではさらばだ。」


「…」


「では私めが、さようなら。」


「…」

 

「どっかーん」


 と大声で驚かすフェリル


 ビックリした顔のサンホゼーロ、ゴウヨ、メルザン、カタレーの四人。腰が抜けていそうだ。


「ああ、爆破装置ならあちこちにあったからな、ここに来る途中で全部無効化してきたぞ。残念だったな。」


 とフェリル。


「くっ、仕方ないでは今度こそさらばだ。」


 とサンホゼーロが言うと下の魔法陣が輝きだす。転送陣のようだなとフェリルは見ていた。少し魔法陣が力不足だな。とフェリルは思い、少しバカにした感じで


「その大きさだと、三人が限界だぞ。」


 と、フェリルが言うとゴウヨがカタレーに


「ちっ。仕方ないお前が降りろ。」


 と告げる。


 カタレーは抵抗もせずに従順に降りた。すると、転送陣は光を増しサンホゼーロ、ゴウヨ、メルザンはどこかへ転送されて行った。


 ヨーセルがカタレーに


「仕える相手を間違えたのでは?」


 と聞くと


「本当にそう思います。」


 と答えるのだった。カタレーはサンドルア王国へ送られ裁きを受ける事になるだろう。


「三人はどこへ行ったのじゃ?」


 フェリルがカタレーに尋ねる。


「ロゼリアナにある神殿ですね。」


 もうカタレーは何も隠すことなく話す。


「フォベルトはどこにおるのじゃ?」


「ロゼリアナの王宮から出てないな。何せただのお飾りですからね。」


 改めてヨーセルが三人の去った辺りを調べている。転送陣はまた魔力を注げば使えそうだが向こう側をすぐに破壊すればもう使えないだろう。


 実際魔力を流して見たが相手側はもう閉じられているようだった。どうせ、こちらが片付いたらロゼリアナ王国本土へ攻めあがる事になる。


 慌てて追いかけなくても問題ない。


 ヨーセルが周りを見回すと、ガイアスの肖像画が残されていた。壁に直接描かれたフレスコ画のようなもので、持ち出す事は出来なかったのだろう。


 ヨーセルはフェリルに手伝ってもらい壁ごと切り離し収納へしまう。ものすごくうれしそうだ。


 壁の後ろにさっき拾った石ころと同じ様な物がたくさんあった。ほんと、これは一体何なんだろうとヨーセルとフェリルが首を傾げるが何も分からない。


 とりあえず、一端櫂渡の所へ戻ることにした。


 カタレーは素直について来て、こちらの質問にも素直に答える。そんなこんなを質問しながら外に出ると櫂渡と遥香、英雄は戦っていた。


 小夜は伸されていて戦闘不能になっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る