第6話 開戦
櫂渡が教皇サンホゼーロによって魔王認定され討伐軍を結成した。勇者も投入する予定だ。協力してくれるならロゼリアナ対岸の乾燥エリアに来られたしと檄文が飛ばされた。
それと同時にロゼリアナ王国の軍隊によりサンドルア王国への攻撃が始まった。急な事でサンドルア王国の準備が出来ない内の奇襲のハズだ。
ロゼリアナ王国軍の司令官が下知をする。
「かかれー!相手はまだ準備が出来ておらぬ。」
そこへ伝令がやってくる。
「すでに相手軍整ってこちらを迎え撃つ準備がなされています。」
ロゼリアナ王国は先制攻撃を仕掛け有利に進めるつもりでいたようだが、飛蝗の監視をしていたためロゼリアナ王国の動きは櫂渡には筒抜けであった。
遡る事、数日前のサンドルア王国内でのこと、
「どうやら、向こうから攻め込んで来るみたいだな。」
「わが、国も支度をせねば。」
とカッサルドが言ったが、櫂渡はそれを制し
「恐らく俺との因縁でしょう。前面へは俺が出る。後詰めだけ準備しておいてくれ」
と伝え、最前線は櫂渡がゴーレムを大量に並べて対応する事にした。
アントンとヤーレイに連絡をとり蜂ゴーレムの巣箱と監視用ディスプレイ一式を各国へ配ってもらい国境線を監視してもらう。
やはり西と東のガルリア帝国は南の方面に軍を展開している事がわかり、こちらは各国で対応して貰うことにした。
ロゼリアナ王国の魔王討伐の下知と同時に東西のガルリア帝国も周辺へ攻め込もうとした。
しかし、すでに準備万端で待ちかまえられていた為に身動きが取れずにらみ合いをする事になった。
ロゼリアナ王国とサンドルア王国国境でもにらみ合いになるとロゼリアナの指揮官が思った矢先、櫂渡が動いた。
「かかれー!」
の号令をかけ櫂渡は戦闘ゴーレム達を前進させた。ロゼリアナ王国軍は矢などで攻撃を仕掛けるが一向に効かず、じりじりと後退していく。
櫂渡は矢の嵐にも、変わらず、
「かかれー!」
の号令をかけるだけである。一方のロゼリアナの指揮官は
「退却~!」
と戦線を下げる事を繰り返していた。
ゴウヨへは戦況が伝えられるが、
「なぜだ?なぜ、あっちもこっちも準備が出来ているのだ?作戦が漏れたか?こうなったら騎士団を投入してでも戦線を維持しなければ総崩れになる。」
騎士団には魔法を使える者も多い。
「騎士団の魔法部隊は本陣を出て前衛の支援!」
本部からの指示に魔法師団が前衛の支援に向かうが一向に後退が止まらない。
今回櫂渡はハティとスコルを久しぶりに呼び出した。久しぶりすぎてハティもスコルもちょっとご機嫌斜めだったけど、フェリルがなんとか宥めてくれた。
ハティもスコルも鬱憤ばらしとばかりに最前線で暴れていて悉くロゼリアナ軍を無力化していく。
ついでにフェリルも暴れている。
無力化されたロゼリアナ軍の兵士達は後ろのゴーレムが回収していく。
怪我の酷いのは櫂渡のところまで運ばれてきて、死なない程度には処置されていく。
何にも考えずに完全なヒールをした方が楽なんだけど、攻め込んだ痛みは当分感じていないとねと櫂渡は思って面倒くさいけどそうすることにした。
相変わらずフェリルの攻撃を受けた兵士の怯えぶりが酷いけどな。
また、シルビアから笑顔の猛特訓受けるハメになるのだろうなと、この後フェリルに起こる不幸を想像してドンマイと心の中で呟く櫂渡であった。
大量の捕虜が出来て行くため、捕虜回収用にもゴーレムを出した。
国境をサンドルア王国へ少し入った所に仮設の収容施設を作り転送陣でそこへ送り込む。
教会騎士の魔法師団による支援や遠距離攻撃も始まったが全くハティ、スコル、フェリルには効果無し。
櫂渡は時々途中で進軍を止めて、蝗の卵や幼虫の退治もしていた。
一方、その頃ゴウヨは
「なんだって、こんなに弱兵なんだ。戦線の維持も出来ず後退するばかりではないか。」
「ガルリア帝国も何をしているのだ。まるで置物のように動かぬでは無いか。」
とイライラしていた。
ガルリア帝国の二つには、サンドルア王国の王宮の監視をさせていたホウを派遣している。最大サイズで飛び交えば複数の戦場の牽制には充分で帝国二つは全く動けなかった。
開戦初日は散々な結果のロゼリアナ軍。なんとか日暮れまでは持ちこたえた。
野営場所で急ぎ砦や陣地を作りながら勇者に希望を託すしか無いかと口々に話していた。
「こうなっては、勇者に活躍して貰うしか無いのか。勇者とはいえ、あの数と先鋒にいる、獣人とステビアスウルフ二頭と戦えるのか?三対三だが?」
「我々では何の役にも立てないからせめて出来るだけ足止め出来るよう砦やら防護柵やらを作るしか無いな。明日で我々も終わりかもしれんな」
「反対側の国境にはケアンドル獣王連合国の軍が張り付いているらしい。」
「退路も断たれたか。」
絶望の中での野営となる。
場所は変わってここは、ロゼリアナ軍の本拠地。ガイアスが本拠地に使っていた遺跡を使っている。
ここに、サンホゼーロ、メルザン、ゴウヨ、カタレーが集まって決戦の時を待っている。
魔王を倒すにはここ以上にふさわしい場所は無いだろうとサンホゼーロもゴウヨもメルザンも思っていた。ここで勇者達を用いて
戦況が良くないのは分かっているが、勇者がいれば大丈夫だと信じて疑わなかった。
彼らと少し離れた位置に、遥香、小夜、英雄が静かに佇みその時をまっている。
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