第9話 嵐

 ベッドに入ってこの三日間の事を考える。


 衣食住をなんとかしないとと考えて、住に関しては初日はとにかく安全に眠りたくて岩山をくりぬいて何とかした。二日目にベッドを何とか寝やすいものにして、三日目の今日は風呂。


 食はとりあえず2日目に採取出来た、大麦と小麦の原種が見つかったのが大きくて飢えることはなくなった安心感が大きい。時間を短縮できる収納や種に魔法をかけて突然変異を意図的におこさせるなどは魔法って反則だなぁ。でもものすごく助かる。


 里芋と蓮根見つけた時点でそれで当分しのごうと思ってたので嬉しい結果になった。


 藪の中のウサギはかなり美味しい。味もそうだけれども動物性タンパク質的にも思いがけずラッキー的にも。まだ鹿はたべて無いから実際おいしいかどうかはこれから。


 生活をもっと豊かにしたいけれど先にそろそろ衣に取りかからないとな。


 こちらに持ってきたもので今はまだ間に合っているけど、こっちに来てから何も新しく手に入れてない。ウサギの毛皮はあるけど糸も無いので服に加工出来ない。


 そんなことをつらつら考えて糸が作れる、綿、麻、亜麻などのが無い事には始まらない。


 ただ、これらの植物の元になりそうなものは藪から採取したものの中にあったので種採取からの魔法で突然変異促進、種採取のリピートで欲しいものは手に入れられそうだ。


 衣食住すべてに関わるけど。生活道具類が絶望的にまだない。糸紡ぐにも糸車必要だし。んー魔法の方が効率的かな?でも巻き取るの必要だよね。


 機織り機や編み機も作らず魔法だよりでもいけるかな。


 金属をさがしたい。ただ、道具類は魔法の方が役に立つケースも多いから作る作らないの見極めは必要。銛はいらんかったな。ナイフは役に立ってる。

 

 ウインドカッターもウォーターカッターもかなり細かな作業もできるようになったけど獲物を解体したり魚捌いたりはイメージつかない。 

 

 やれるとは思うけれどそのあたりは手仕事の領域かなぁ。手先も器用になってるし使わない選択肢はないな。


 ナイフは男の子ロマンだし金属でナイフ作って鹿の角の柄なんてかっこいいよねぇ。鍛冶をトッテンカッテンやるのも異世界のロマンだよね。


 明日以降も闇雲に探しまわるのが良いか、計画たてて動く方が良いか、計画立てるにしても指針になるものが無い。


 住(雨露がしのげて野生動物などの外敵から身が守れる)食(飢えないでいられる)はなんとかなった。次は何しよう。


 これから来るであろう冬に向けて服作りは必須か。里芋や蓮根、麦の原種の実り具合からおそらく秋なのは間違いない。今が9月頃とするなら、70日~90日ぐらいで寒くなる。


「ん?やっぱり季節は地球と同じ?たまたまか?」


切ってあったスマホの電源を入れる。ついた日に覚えてた時間から3日と半日分程度が過ぎてる。


「だいたいこちらも時間の流れは同じなのかも。」


 考えられるのはこの世界の日本に該当する位置とこの場所との時差。いや、それにしても時間が同じってことはないよな、、違う天体がそんなに近似値って考えにくい。


 異世界の設定であるのは遠い昔に別れたパラレル世界の地球とかかな。


 やっぱりそんなことはなくて、たまたま、1日の長さはにた感じだけど実際に正確に計っている訳では無いからちょっとずつズレがでるかもしれないし。 


 9月にこの世界につれてこられたこの地の環境が9月の実家近くの海の雰囲気感じたがら9月と思ったけどそもそもそれが違うのか。


 考えても仕方ないけどなと思いながら眠りに落ちた。


 翌朝外に出ようとドアを開けると暴風雨だった。拠点の中は真っ暗だし石で作った引き戸は外の音をすっかりシャットアウトしてるので静かなものだったがドアを開けたとたん雨が吹き込んできた。


 慌てて閉めたが、こっちに来てから雨は初めてなので、濡れでもいいやと嵐の様子を見に行く。


「こういうときシールドみたいな魔法使うよね~  シールド!」


「おーできた。できた。」

 すっかり雨や風が櫂渡のまわりからなくなる。


「嵐だな~。おっ!風呂とウッドデッキがどっかにとんでったー」


 昨日せっせと作ったウッドデッキごと風呂が土魔法で作った土台だけ残して姿を消していた。


「乗っけといただけだっけど風呂には水が入ってたし風呂用に溜めるための桶を置いておいたのに。そっちも水溜まってたろうに。」


 余程風が強いんだね。シールドは優秀だなぜんぜん風も雨も感じない。


 石で作った樋は無傷だけど木で作った樋はどこにもなかった。


 さて拠点にこもって、朝ご飯食べたら、植物を育成自分好みに変異でもするかな。

 

 繊維系綿、麻、亜麻にしよう。オイルもとれるし。綿はできるだけ繊維の長い品種に麻は陶酔しちゃう成分は生成できないようにして、亜麻は連作できる品種にしよう。


 拠点に帰ろうとしたら突風が吹いたのかぶつかって来るものがあった。


 シールドはがっつり固く守るのではなくて優しく少し距離があるタイミングからソフトに受け止めるように反応した。


 ぶつかるものでガードのしかた代わるのかな。間に緩衝物のあるような柔らかい受け取り方であれば、力の強いぶつけられ方をしても吹っ飛ばされにくいだろうね。


 ついシールド越しにキャッチしたけどこりゃなんだ?

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