第10話 従魔

「何だろうか?これは?鳥の巣?」

 雛鳥がぐったりしてる。


「生きてるだろうか?」 


 と思っているところに成鳥と思われる鳥が飛んできた、必死でコントロールしようとするが気流が乱れていて風が一方向だけでは無いようでうまく飛べてない


「あれは鷹か鷲かな?」猛禽類っぽい見た目。


 空中でもがいている鳥にめがけてシールドをかけてやる。


 急に鳥の周りだけ風雨がなくなりそれはそれでまた慌ててる。


 この巣の雛鳥たちの親だろうか?


 この風の中を飛んでケガをしているのか風雨が無くてもうまく飛べない。風が全く無いと飛びにくいのかもしれない。


 シールド毎こちらに寄せてシールドを一つにして腕を出してやるとそこに止まった。


 よくみるとあちこにちケガをしている。反対の手に持った雛達を気にしてる。雛達も巣ごと飛ばされてぐったりはしているが生きているようだ。


 風雨が強いので拠点にもどる。拠点の中は真っ暗なため、ライトの魔法をつかい中を明るくする。麦藁を出してばらばらと敷いてやりそこに巣と親鳥と思われる鳥を置く。


 入れ物を出してやり水を汲んでやる。水桶に流れる水で夜間に水音が気になるのではと思い、水の入口と出口の蓋を閉めている。


「蓋しておいて、雨水入らなくて良かったな。この蓋開いてたら風の音聞こえてていきなり濡れることも無かったのかな。ドアにさらに小さいドアつけるかな?外の様子を見てから出るように。んー作っても使わないな。やっぱりやめよう」


 拠点は狭いけど、かなり頑丈に出来てるようだ。おかげで夜は安心して眠れるしこんな暴風雨でも気づかないぐらい。注意して聞けば風の音が聞こえはする。


 この世界は魔物という存在のある世界であるがある程度の凶悪な魔物でもこの拠点であればおそらく安全だろう。魔物の他に危険な野生動物もいるかもしれないがおそらく大丈夫だろう。


 雛鳥と親鳥の様子を見るとちょっとかわいそうな状態だな。親鳥はケガしてるし雛たちは回復するかどうかあやしく思えるほど衰弱している。 


 こういうときにアレ使えるかな?アレ言ってみたかったんだよね~効果あれば、ラッキーぐらいで考えてね。


「ヒール!」


 ぼわっと鳥親子達の周りが光って集束していく。


「効いたかな?」


 見ると親鳥のケガは治っていて雛たちもさっきまでのぐったりした様子はなくなり、立ち上がって何が起きたか不思議そうにキョロキョロしてる。


 鑑定で見てみるとガルディッシュイーグルという魔物のようだ。


「魔物なんだ?へー大丈夫だろうか?」


 少し詳しく鑑定かけていくと「へー」な事がいろいろ分かった。


 普通魔物は細胞分裂させて増やす。新しく生まれて、最初からある程度は成獣と同じサイズで同じ能力を持っているらしい。


 長い年月生きると体がより大きくなったり固有能力を身につける特殊個体はでたりはするらしい。


 一方このガルディッシュイーグルは卵生で卵→雛→小鳥→成鳥と普通の鳥と同じプロセスを踏む。サイクルは短い。


 ガルディッシュイーグルは鳥系の魔物の中では上位種らしく知能も高いらしい。大きさも変えられるようで今のサイズは風の影響を考慮したサイズらしい。


 大きいサイズになると余裕で人を載せられるらしい。人を乗せる事は基本的には無いそうだ。残念。


 本来なら風をコントロールする能力もあるようだがこの嵐は風雨が尋常でないのに加えてこの雨が特殊で魔力を阻害する性質があってうまくコントロールできなかったそうな。


「鑑定さんそんなことも分かるのね。ん?あれっ?俺、普通に魔法使ってたよね」


 とんでもな魔力を持っている事を気づいていない櫂渡はひたすら不思議に思う。櫂渡が自分の異常性に気づくのはずっと先になりそう。


「野生の生物…この場合は魔獣か、って嵐とか予見できるもんじゃないのかな?」


 どうやら、嵐は櫂渡が召喚された影響で発生したらしく急に魔力の変動がおきその変動により大きな低気圧が発生し今日この島を襲った。


 そもそも産卵は予定外で強い魔力に押し出されるように生んでしまったらしい。そしてよりにもよって今日孵って速攻風で飛ばされたと。


「鑑定さんすごいな、なんでも分かるな。鑑定さんじゃなくて別の名前で呼ぼうかな?」


 鑑定さんによると、そもそもガルディッシュイーグルはめったに卵は生まないらしい。雌雄はなくどの個体も卵を生む能力はあるらしい。しかし二個生まれることはめったにないらしい。


「へー雌雄が無いとは魔物が仲間を生み出すのと似たような感じかな?」


 ふと鳥親子を眺めるとまぁまぁくつろいでいる。


「良かったね無事に会えて」


 と心から思う。


 あ、そう言えば朝ご飯食べてないな。


 パンと麦茶で朝食をとる。拠点の中は椅子がないから寝台に座って寝台のサイドテーブルに置いて食べようとしたが、自分だけが食べるのは気がひけた。


 蛇とかウサギ食べるかな?なるほど。食べられるのねOK!


 収納から蛇(未処理)とウサギ(革は採取済み)を取り出してやろうと思ったけど血抜きしてないから、床が血まみれはやだなと思ったので土魔法を薄く広くカーペットのようにひき藁もこちらにひきなおしてやる。その上に蛇とウサギを置いてやる。


 親鳥がやってきて、雛鳥達もトテトテと歩いてくる。さすが成長が速いって言うだけあるな。今日孵ったんじゃなかったか?


 親が小さくしてやり嘴に運ぶ微笑ましい状況を想像してたら、親鳥と共に二匹の雛鳥もすごい勢いで食べてる。足りんよねって事で足してやる。


 結局蛇5匹ウサギ6羽を食べきって満足そうにしたのでよしよしと三羽のアタマをなぜてやったら頭の中で


「三羽ともテイムしてほしそうです!名前をつけてあげてください」


 って響き渡った。



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