異世界に巻き込まれて召還されたら無人島でした。
さーまる
始まり
序章 召喚
第1話 無人島
確かに沖縄旅行に行く途中ではあったが、飛行機はおろか駅から電車にすら乗っていない。沖縄が楽しみすぎて途中の記憶がすっかりぬけたのかと思ったが、この海は沖縄の海と言うには若干秋風を感じる。
9月中旬なのでまだ沖縄なら真夏の風情のはずで、この海の感じは櫂渡の父親の実家がある中部地方の9月の海と似た感じ。それにしたって誰も居ない事はない。
しばしボーゼンとしてたものの、はたと我にかえる。スマホを見ると圏外でGPSも拾っていない。時間もスマホは夜を指しているけれど、太陽の位置は午前中の感じがする。スマホは壊れたのだろうか?役に立たないスマホの電源を切る。暗くなったときのライトの代わりにはなるから充電は温存したい。
「さっきまで高校生三人といたよなぁ。」
偶然出くわしたこれから剣道の試合だという迷子の高校生男女三人を剣道場に送り届け、三人と別れ歩き出した時に急に光とともに穴が開き落ちたことを思い出す。
穴のなかを落ちているのか飛んでいるのか不思議な感覚でしばらく時間があった。少し先に三人の高校生が同じように落ちてるのか飛んでるのかが見えていた。途中で意識を失ったのかふと、気づくと森だか林だか木がうっそうと茂っている中にいた。空が開いているように見える方角に少し歩いたらこの海辺にでたのであった。
「そう言えばあの三人はどこ行った?」
と言ってみるが周りには誰も居ないのでもちろん応えはかえってこない。
「とりあえず周りを探すか」
と海沿いを歩いてみる事にした。海沿いを歩けば港など人のいるところがあるのではないかとの期待もある。
「荷物は、、、このまま置いておけばいいか、、」
キャリーバッグやしょっている荷物はそのまま置いて身軽になって散策を始める事にした。ペットボトルの水を持って。
高校生に差し入れようってスポーツドリンクを買ったらストラップのついたペットボトルホルダーをおまけにもらったのでそれを使ってペットボトルを水筒みたいにして持ってくことができた。
ストラップ付きホルダーは高校生達にもあげた。
海に出て左側は砂浜がはるか向こうまでつづきそのどこにも港はおろか人影一つ見えない。
右側は少し行くと岩場になっていて、岩場の向こう側が見えないので、とりあえずそちらの様子を見に行くことにした。
岩場まで来て岩場によじ登り、点々と続く岩場を移動する。岩に邪魔されて先に人がいるかどうか分からない。大きな岩が前を塞げばよじ登ったり降りたりを繰り返しながら進んでいく。
岩場の向こうはまた入江になってて少し離れたところに山のようになった陸地がみえる。その山のように見えるところまではかなり距離がありかなり行かないと向こうへは行けそうもない。
岩場の低い所は満ちた時には海の下になるのかあちこちの岩場の隙間に水溜まりができており魚がそこに取り残されていたりした。
行けども行けども岩場で人が見える気配はないし。海が満ちると取り残されてしまうかもしれないと思いその前に一度元の場所に戻る事にした。荷物も置いたままだし。
岩場の方へ出発してから二時間ほどで元の位置に戻って来たけど何も収穫なし。
迷子になったとか遭難したとか恥ずかしいので大声は出さずにいたけど
だんだん心細くなり、、大声で
「誰かーいませんかー」
と何度か叫んで見たけれど反応は帰ってこない。
今度は最初についた森だか林の方へ行ってみることにする。
今度は荷物を持って森の方へ向かう。
森の中の傾斜をしばらく登り、藪が覆い茂っている場所は避けて急な坂道を上がると岩が露出している場所があり水が岩場から染み出ていて汲めるような場所があった。
湧いた水は岩の隙間などから更に下へ流れていき水溜まりや川になってはいなかった。
「だいぶ登ってきたからちょっと休憩するか」
手持ちの飲料水は高校生たちに差し入れのつもりで渡したスポーツドリンクと同じものを買ったやつがキャリーバッグの中に一本あるだけだ。
散策時に手に持っていた水のペットボトルは残り少なくなっている。
「この水飲めるかな?」
「こんな時アニメとかなら鑑定って一声だよな、、」
水を見つめつつ
「鑑定!」
って言ってみるも
「われながら、こんな時に何言ってんだか」
こんなんで分かるわきゃないなぁと思いながら何か動物とか鳥とか飲みにこないかな、飲んでるようなら、一応沸かして飲んでみればいっかー、いや沸かすものないな、、と思ってたら、
『鑑定します!』って頭の中で聞こえてきた。思わず周りを見渡すけれど誰もいない。
「えっえっ」
って言っていると、
鑑定:
わき水
このわき水は2000年ほど前に降った雨が地層でゆっくりと濾過されて湧き出た水です。
たいへん美味しい水です。
雑菌がほとんどいないため汲んでから1日ぐらいならそのまま飲めます。
って頭の中に情報が音声で流れる。流れると共に記憶も同時にされたようでものすごく鮮明な感じ。
「鑑定ができてしまった。ちょっと思ってたのと違うけど」
鑑定ができてしまったしこの地に降り立った経緯からするとここは異世界なんだろうと思いいたった櫂渡である。
「ここに来る時に落ちたあれは落とし穴ではなくて、魔法陣のようなものだったか、確かに文字のようなものやら紋様のようなものびっしりだったし落とし穴というより光のトンネルがふさわしいな」
と独り言をぶつぶついう。
「あ、でもあれ魔法陣だったら、定番だと召喚されたわけで、大聖堂とか王宮の大広間みたいなとこに連れてかれるよなぁ、、」
「あ、3人の高校生を召喚したけども、巻き込まれたいらない人間だから途中で捨てられた??」
「3人は勇者パーティー的な目的で召喚されたんだろうか??」
「3人は無事だろうか、、3人確かに勇者パーティーっぽいなぁ、、」
と立て続けにぶつぶつ独り言を呟く、、
「いらないからって捨てちゃうの?定番ではいらない巻き込まれ人材はいくばくかの生活費を渡されて放逐されたりするんではないのー?」
「1から独りで生活できるすべを探さないとなぁ」
「とにかく人探していろいろ教えてもらわないと・・」
と絶望的な気分になっていたが、思い立って
「鑑定!この場所」
と言ってみた。
『鑑定します!』
鑑定:この場所
この場所はとある島の西部にある入江になっている砂浜の北端あたりを少し陸地に入った場所になります。
なお、現在この島にいる人は海野櫂渡さん1人です。
また、頭をかかえる櫂渡であった。
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