第15話 サンホゼーロ

「そんなものは偽物だろう?二千年前に失われたと伝承にありこの世に存在などしない代物だ。」


 フェリルが取り出した宝玉を見てサンホゼーロが言う。


「鑑定が使えるものがいるであろう?鑑定をしたらどうだ?」


 フェリルが周りを見渡しながら言うと、シオンと名乗った女性聖騎士が


「私が鑑定いたします。」


 と申し出た。鑑定をしてくれるようだ。鑑定をしているシオンはものすごく驚いた顔をし、


「本物の教皇の証の宝玉です。神に認められた教皇が持てば蒼く輝くはずです。」


「サンホゼーロといったかの?ほれ持ってみるが良い。」


 と言ってフェリルがサンホゼーロへ宝玉を手渡す。もちろんなんの変化も起きない。


「本物だとしても、過去に蒼くなったのは初代だけだと記録にあった。しかもこの宝玉は二千年以上失われておった。蒼くなるなどとは伝承にすぎん。」


 とサンホゼーロが強弁する。するとフェリルはサンホゼーロより宝玉を奪い取り、櫂渡へ放り投げる。


 あっという間の出来事でサンホゼーロも唖然としていた。


「おい、乱暴に扱うなよ。」


 といって櫂渡が受け取る。受け取った途端に、宝玉は蒼く輝き強い光を放つ。


 しばし周りは騒然としたが、教皇の証が青く輝くのを見てまず、ソフィアが跪き、シオン始め騎士たちもソフィアに続いて恭順の姿勢で跪いた。教皇の周りにいた枢機卿も同じように跪く。


 サンホゼーロもこれを見て強弁もできずうなだれ跪く。


「え、あれこれおれ持っちゃいけないやつじゃん。フェリル何やってんの?」


「お主が神に認められた本当に教皇の資格のある者じゃ。」


 とフェリルが告げる声が教会本部で響き渡ったあと、シオンがそれを受けて告げる。


「神を欺いたサンホゼーロを引っ立てろ。」


 そうして、サンホゼーロは連れていかれた。引っ立てられる時サンホゼーロは憎々しげに櫂渡を見て、聖女であるソフィアを一にらみし出て行った。


 残った聖騎士たちや枢機卿たちは櫂渡に平服している。櫂渡は念話で聞いた。


『フェリル、これどうすりゃいいの?』


『教皇になってしまえばいいのではないか?』


『そういうわけにはいかないだろ?ロマンダル教の教義とかも知らないし。』


 などを念話で話していたら、枢機卿の一人が聞いてくる。


「教皇となっていただけますか?」


「それはできません。ロマンダル教の教義も知らないし、宗教家になる修行をしていないので、もしかすると、能力はあるのかも知れないですが、やはり教義をよく知っているどなたかになっていただきたいと思います。」


 とあわてて逃げ腰に櫂渡が伝える。


「サンホゼーロがあのように神に対して罪を犯してしまった以上、今までの教皇の決め方では正しき教皇が決められないのでどうかご指導いただけないでしょうか?」


「ソフィア何とかならん?」


「なりませんよ。カイト様、カイト様に教皇になっていただく他はありませんね。教会改革もしてください。」


「むちゃぶりじゃん。教義もなんも知らんし。」


「新しく教義を再定義したらいいと思いますよ。ロマンダル教じゃなくて、カイト教でもいいと思います。」


 周りの枢機卿や聖騎士たちもうんうんとうなずいている。櫂渡はうんうんじゃないって、と内心で誰か助けてくれと思っていた。


「よし、じゃあ、ソフィアに一任する。うん!ソフィアが聖女兼教皇で!」


「それもありじゃのう。」


 とフェリルが同意する。フェリルの事が神だと知っているソフィアはそれを受け入れるかどうか悩み黙ってしまった。


「ゴウヨに呼応して東西のガルリア帝国が動いているのでそちらへの対応が残っているから、教会の今後も戦後処理を考える時に考えよう。まずは世界の信者が不幸にならないように枢機卿たち共同で対応してくれ。ソフィアも協力してくれ。聖騎士団もソフィアを護衛してくれ。遥香たちも頼む。」


「「かしこまりました。」」


 と枢機卿と聖騎士の声がそろう。


「いったんは承ろう。」


 とソフィアがちょっと不承不承の感じで返事する。


 遥香たちは


「「「まかせといて!」」」


 と頼もしい。ロゼリアナ王国は彼らに任せて西ガルリア帝国へ行くことにした。


 櫂渡とフェリル二人で向かう。移動はホウとオウにそれぞれ乗っていく。ランは肩に乗れるサイズに小さくなってソフィアの護衛につける。


 ハティとスコルは向こうに行ってから呼び出す予定だ。それまでは遥香、小夜、英雄が遊んでくれるだろう。


 櫂渡とフェリルはメロルビン王国軍とシャレオ王国軍と対峙している西ガルリア帝国軍の低空を飛び威嚇した後、一途西ガルリア帝国皇都へ向かう。


 皇都に到着するやいなや皇宮を大量のゴーレムで囲む。西ガルリア皇帝ランドル12世が皇宮にいるのは確認ずみだ。


 皇宮内では突如現れた軍勢に囲まれて蜂の巣をつついたように大慌てになった。


「どうなっておる。どこの軍なのだ?いきなり皇都の中に大軍勢を展開するとは?どこかで戦闘が起きたのか?」


「いえ、そのような伝令はありません。例の魔王軍かと思われます。」


 一番絶望的な推測が宰相によりなされ皇帝に報告された。

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