第17話 魔王戦後処理会議

 最初にサンホゼーロが尋問される。尋問はカノーペル王国のキシンドルが務める。


「カイト殿が魔王であると確信した理由を話してください。」


「メロルビン王国のメルザンが見た事を元に判断した。話に聞いた魔力は魔王以外には考えられぬ。」


「各国には極秘で勇者を利用したのは?」


「放置すれば世界を滅ぼされる危険があると判断いたし、速さを優先でロゼリアナ王国のフォベルト殿に協力してもらった。」


「しかし、勇者達は拒否した。それにもかかわらず、聖女を人質にとり勇者達にカイト殿討伐を強制したと聞いている。」


「先程も申したが速度が優先だと思っていたのだ。魔王を討伐するのに、魔王側に準備期間を与えず迅速に動くことを優先したからにすぎぬ。」


「カイト殿は魔王ではないとの神託が教皇だけは入れる部屋へあったハズであると聖女は申しておるが?」


「その神託はあったやも知れぬが見落としたのかも知れぬし、聖女が嘘を言っているやもしれぬ。」


「私は神に仕える身。神に関することで嘘など申しません。」


 ソフィアが反論する。


「この聖女の受ける神託は誰も証明できぬのでな、如何様にも好きなことを言える。我が見たはずと言うのもでっち上げだ?そうであろう?」 


 とサンホゼーロが水掛け論戦を仕掛けてきた。


「なんて、厚顔無恥な…」


 ソフィアが絶句する。


「教皇の証の宝玉はサンホゼーロ殿では輝かなかったと聞いておるが?」


 とキシンドルが聞く。


「宝玉が失われて二千年以上同じやり方で教皇を決めてきた。その正統な決め方で決まった我は正統な教皇である。二千年の時の間に伝承が変わってしまった可能性がある。あの宝玉は魔王を明らかにする為の物ではなかったかとさえ考えておる。いずれにしても、我は正統な教皇である。」


「なるほど、一理あるな。」


 とキシンドルが顎に手を当てて考え込む。


「そんな詭弁に惑わされ無いでください。」


 とソフィアが困惑しながら訴える。と、ソフィアに神託があった。


「カイト様、今、神託がございました。ガルデイッシュイーグルをお呼びだし頂けますか?神がガルデイッシュイーグルを通じて真実を伝えて下さるそうです。」


 櫂渡は眷属召還でホウとオウを呼び出した。


 ホウとオウがソフィアの両側の手すりに止まり話し始める。


 神託はソフィアは嘘はついていない事。つまり櫂渡は魔王ではないこと。


 サンホゼーロは数多くの枢機卿を買収したり、ライバル枢機卿を無実の罪で陥れたりし、とても正統な手順で教皇に決まっているとは言えない事。


 などがかなり具体的に語られ、買収されたと名指しされた枢機卿達が頭を床に打ち付けんばかりに神へ許しを乞うた事でより真実味を帯びた。


 サンホゼーロももはや強弁できなくなり、うなだれた。教会では既にサンホゼーロの権威は失われていたが、これで世間からも失われる事となった。


 次にメルザンに対しての尋問が始まる。


「カイト殿を魔王だと思った理由は?」


「先ほど、サンホゼーロ…元教皇が話した通り、あの魔力量は並みの者ではありませんぞ。簡単に世界など征服出来てしまう。現に、西ガルリア帝国、東ガルリア帝国の軍事大国が一捻りだ。」


「それは、カイト様がガルリア帝国の正統な皇帝だからだ!」


 と東ガルリア帝国の皇帝ルンダイが言う。西ガルリア帝国のランドルも同意を表すように頷き、


「一国の宰相如きが自分の信じられぬ者を見たからと言って魔王などと妄言を吐きおって。おかげで我らが主に弓引いてしまった。」


 と言う。


「皇帝だと?主だと?どういう事だ?」


 とメルザン。


「カイト様は我らが探していた皇帝と仰ぐべき方。皇帝の剣に選ばれし方以上に皇帝に相応しい方はいない。」


「皇帝の剣だと?二千年以上前に失われた物であろう。」


 そこへフェリルが恭しく一振りの剣と一つの宝玉と本型のブロンズを持ってくる。


「鑑定師よこれへ。」


 キシンドルが鑑定師を呼び鑑定をさせる。


「皇帝の証の剣、教皇の証の宝玉、大賢者の本でございます。」


 いつの間にか、ちゃっかりと大賢者の本も取り出していたフェリル。


 皇帝の剣、教皇の宝玉、大賢者の本の三点セットを恭しく差し出しキシンドルが


「カイト殿、こちらを手に取って下さい。」


 フェリル何やってくれちゃってるの?と思いながらそれらに触れる櫂渡。


 まずは宝玉から、もちろん蒼く蒼く輝く。そして剣。こちらは深紅の色に染まり輝く。


 最後に大賢者の本。これは初めて触るなぁと思いながら触れる櫂渡。


 触れた途端に辺りが金色こんじきの光に包まれ大賢者の本も金色に輝いている。


 みんな唖然としている。おとぎ話的な伝説ではこの三つを光らせられる者は救世主だとか言われている。


 その人物が目の前にいる。


 その場にいる者は全てが平伏した。櫂渡は何が起きたか分からなかった。


 少したった後、メルザンにキシンドルが告げる。


「これでも、カイト殿が魔王だと?」


「いえ、私の思い違いでございました。よもや伝説の救世主様だとは思いもよらず、私の不徳のなせる事にございます。いかようにでも罪を償います。」


 メルザンはすっかり憑き物が落ちたようにしおらしくなった。そこで、キシンドルはゴウヨに向かって、


「最後はゴウヨそなただな。」


「わしはただメルザンの言を信じて、サンホゼーロ様に伝える手伝いをしたまで、何も悪い事はいたしておりません。」


 と堂々としている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る