第7話 いい湯だな
魚がぎゅっと入りの海水ボールの置き場に悩む櫂渡であったがここで櫂渡に冒険心がフツフツと沸いてきた。
「木が収納に入れてあったな、それ使って桶作れないかな?」
鑑定さんの指示に則り風魔法で木の皮を板材にして行きながら桶の材料の形にウインドカッターで切り分けていく。
竹を物体操作魔法でたがとして編み、できた輪っかに木材をたがに立てていく。
底を嵌めて完成!
人の背丈より高い、酒蔵や味噌蔵でよく見るタイプの桶が出来上がった。
「魔法ってすごいな。」
海水のボールを維持しながら木を切ったり削ったりなんて誰もできやしないとんでも魔法操作なんだが、比べる相手のいない櫂渡はただただ魔法に感心していた。
「桶に入れよう!あっ、あっ・・」
テストもしてなかったせいか、底と一部隙間から量は多く無いものの水が染み出て来て漏れる。
「調整してないからちょっと漏れるな・・ザルですくって・・」
急いで魔法でザルを操作してザルで魚をすくって、すくった魚から締めて行く、締めた魚は収納へ送る。かなりの数の魚を締めてまぁまぁ疲れた。
「魚とナイフを操作して収納に入れるって言う一連の動作をスクリプト的に魔法を組めないかなぁ」
楽をするためなら貪欲な櫂渡である。桶からの水漏れはそれほど多くなくすんだ。
「明日まで置いといてどのあたりから漏れるかチェックしよう。この形の桶見ると味噌や醤油を早く作りたいな。あと、日本酒だな。大豆と米がほしいなぁ。」
「それ以外にもホップとかかな。あ、砂糖も欲しい。パンも柔らかいタイプも食べたいしなー。アルコールのみてー。」
「どうしてもガマンできなくなったらホップ抜きでビールもどき作ってみてもいいかな。明日また、植物集め行ってみるかな」
ぼんやりそんな事を考えながら桶眺めてたら
「風呂つくれるんじゃないかな?昨日風呂入ってないし」
「それじやー、楕円形の浴槽を作ろう」
さっきの桶と同じような手順で作る。さっきと違うのは湯抜き穴と栓を作ったのと、切り口とかをヤスリの代わりに土魔法で作った細かい砂を風魔法で動かせて表面を磨く。
完成した後も入念に砂でヤスリをかける。どこにもとげが無いようにしっかりかける。
おかげでつるっつるの肌触り。
「できたー?!あ、床つくらなきゃ。せっかく風呂入っても足裏ドロドロになっちゃうじゃん。」
「囲いや屋根は後日作ろう。今日はスーパー開放感を味わう事にしよ。」
もともと木材は拠点に床を貼ろうとして。準備した木材だったが、すっかり別の用途に使ってしまった。そちらはまた、持ってくるとして、風呂桶を置く床作りをする。
土魔法で土台を作って床と言うかウッドデッキのようなものをつくる。
釘がないからぜんぶ木材を加工して継手で行う。設計も全部鑑定さんの言いなりで完成しましたよ。風呂桶を置くウッドデッキと拠点の立方体の入り口も廊下のようにして繋げる。
「よし!完成!」
早速、あちこちに溜めてある水を操作して水を風呂桶へ入れる。少し足りないので少し溜まるのを待ってさらに移動する。
櫂渡は水魔法で水を生み出せるのは知っていたが、飲料水にすると物足りなさがあったので純水に近いのでは無いかと考えていた。それで入浴するにはお肌に悪いかもなどと考えていた。
男28歳お肌が若干気になるのであった。
「近くに水溜めておく桶作っておくか。」
今までは石で樋を作っていたが今回は木の樋にしてみる。
「移すのは魔法があるから良いけど高さ同じだと魔法なしに風呂桶に移せないなあ。バケツ代わりに手桶つくるかな。まぁ、オレだけだしいいか。風呂桶の下掘って低くしてもいいなぁ。そしたら入りやすそうだし」
とりあえず改良はまた今度にしてお湯を沸かす事にする。お湯を沸かすにはファイヤーボールを水の中に落としていく。
「程よい湯加減になったし入ろうかな?一応かけ湯した方がいいかな、日本人としては。」
結局服を脱ぐ前に手桶を2つ作った。
一度拠点に戻り服を脱ぎ風呂へ向かう。
「誰もいないのがわかってるとは言え大自然の中で真っ裸は恥ずかしいな。」
自然にタオルで前を隠す櫂渡。
早く目隠し用に囲いと屋根作らないとかな。冬寒くないように。
「あ、暖房考えなきゃな。密閉されてるから一酸化炭素中毒になったら大変だから火は焚けないか。エントランスの立方体に煙突作ったり換気穴作ったりして薪ストーブ作ったりすればいいかな。やっぱり鉄がいるな。」
ぶつぶつ言いながらも体を洗って入る。
「石鹸とシャンプーもなんとかしないとな。石鹸もシャンプーも旅行用の小さいやつじゃなくて普通サイズのを新しく旅行のために買って持ってきて良かったな。お徳用のサイズじゃないからそこまで長持ちしないけど。」
きっちり体と頭を洗ってさっぱりしたところでお湯に入る。
「あー、極楽、極楽」
定番のつぶやきが自然に出てくる。どこまでも日本人である。
眼前に広がる海原。もう少しで沈む太陽が左の方に見えて、海や空を赤く焦がす。
三日目が終わっていく。
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