第4話 同床異夢

 教皇サンホゼーロは思案していた。もう半年ほどたつと聖女の修行期間が終わる。勇者達は本来の力を手に入れ教会騎士達を寄せ付けない強さを手に入れた。


 この力があれば念願のこの一体をロゼリアナ王国から、ロマンダル教だけが支配する地域に出来る。


 いや、あの力があれば、しかも三人もおればアウリエベを支配できるほどだ。


 しかし、勇者を用兵する口実が無い。せめてドラゴンでもでてくれれば、討伐を口実に少し勇者を手元に置いておけるし、各国へ影響力をしめせる。


 世界にロマンダル教を崇めさせたい。ひいてはこの我を崇めさせたい!我がこの地上の支配者に相応しい。勇者も聖女も我の手駒として相応しいのだ。


 我の今までの功績はお使い様を伴っての勇者奪還だ。


 しかし、勇者召還はロゼリアナ王国の独断と一応は世間で認知されているが、召還の魔道具の管理が行き届いていないのは、実は荷担してたのでは無いかと疑われている節もある。


 さらにはお使い様は聖女にべったりで我に近づこうともしなかった。聖女の威光は増したが、我の威光は霞んでしまった。


 聖女は我と意見対立する事もあり、忌々しい存在でもある。お使い様が現れる前は勇者奪還の方針ではかなり意見対立した。


 そういう意味では、ロゼリアナ王国のフォベルトは良い仕事をしてくれた。勇者を召還し、私に預けた上もろもろ失態をおかしてくれた。


 ロゼリアナ王国の領域はロゼリアナ王国を追い出しすべて私が治める口実はいくつでも挙げられる。


 あと何か欠点的な何かがあれば、勇者を使ってロゼリアナ王国を滅ぼす口実となる。その失態を待つ日々だ。


 勇者を用いる口実がありさえすれば、統制のとれていないロゼリアナ王国の軍隊など赤子の手をひねるようなものだ。


 勇者達の一人を相手に200人ほどの教会騎士は数分で伸されてしまう。あれが千人いても、一万人いても結果は変わらないだろう。


 三人はチームワーク良さそうだから連携したら万だろうが十万だろうが戦えるだろう。


 などと悩む日々を過ごしていた。


 そんな、ある日、統一商業ギルドのゴウヨとメロルビン王国の宰相メルザンが目通りを願ってきていると知らせを受けた。


 珍しい組み合わせだなとサンホゼーロは訝しがる。


 ゴウヨは言わずと知れたロゼリアナ王フォベルトの従兄弟にあたるものだ。


 メロルビン王国はゴウヨはと言うかロゼリアナ王国から何やら仕掛けていて聖女派遣求めていたと記憶している。


 ロゼリアナ王国が何やら条件を出していたと聞いた。


 修行中の聖女の派遣は教会のあるロゼリアナ王国の許可のあと教会の許可が必要となっている。


 修行中の聖女が派遣されるときの護衛がロゼリアナ王国の兵士を使うという取り決めの為、護衛が準備出来ている、安全が確保がされているかも含め確認し教会が許可を出す流れのためだ。


 ロゼリアナ王国は本来は許可をする立場では無いが、ロゼリアナ王国の兵士を動かすのに許可がいるため、結果として先に許可を取り付ける事になる。


 結局この案件は聖女派遣にいたらなかった。聖女派遣が出来たなら大々的に世間にアピールできたものを。忌々しいロゼリアナ王国め。


 そんな、二国に関係している二人が揃って目通りを願っているという。何があるのだろうか?目通りを許すとしよう。



 程なくの支度が整いゴウヨとメルザンがやってくる。目通りするなりメルザンが叫ぶ。


「魔王討伐に立ち上がって下さい!」



「魔王とは何のことだ?」


 いったい何のことか分からないサンホゼーロは訝しげを装って尋ねたが、内心では何か自分の願いを叶える物が転がり込んできたのでは無いかと期待をした。


「あ、あ、私としたことがとんだ不調法を…」


 とメルザンは改めて礼を取り直し、櫂渡のとんでもない魔力や能力を伝える。それを聞いたサンホゼーロは


「ふむ、魔王に違いないな…」


 と呟く。内心ではとんでも無い魔力で能力だが、人を害していないし、むしろ救世主のような人間かも知れない。けして魔王では無いと思っている。


 魔王と言うなら人をたぶらかしコカトリスやバジリスクをばらまかせた者であろう。おそらくそれはここにいるゴウヨだ。


 しかし、救世主と呼ばれるような存在は自分であるべきだと考えるサンホゼーロであった。


 考え込んでいるような、サンホゼーロへゴウヨが、


「教皇様、不幸な行き違いから、ロゼリアナ王国とロマンダル教は仲違いをしておりますが、従兄弟のフォベルトは野心もなく教皇様に従順です。魔王討伐の先兵をロゼリアナ王国へ任せて勇者方の露払いをさせてはいかがでしょうか?」


 とロゼリアナ王国を利用する事を勧める。ゴウヨはゴウヨでサンホゼーロが勇者を使いロゼリアナ王国を打ち倒す口実を探していると察していた。


 ここで協同行動をとることで、それを回避し、ロゼリアナ王国も攻め込んだ先を征服出来るのでは無いかと考えていた。


「話を聞くに、ファラント王国と関連が深そうだが、その魔王はファラント王国におるのか?」


「分かりませぬが、その内に動向も掴めましょう。」


「しかし、魔王と懇意の国が大国ばかりだな。討伐を世界に諮ると時間がかかるな。そうしている間に聖女の修行期間が終われば、聖女を通じての勇者への指示もこちらから出来なくなるな。」


「さようですな、迅速さを優先がよろしいかと。」


 かくして、

 メルザンは純粋に魔王討伐を

 ゴウヨはウンノ商会の瓦解を

 サンホゼーロは自分が世界から崇拝される姿を

 それぞれ夢見ていた。














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