第11話 オアシス
大声で呼びかけてくる英雄に、
「なんだー?」
と返すと、
「おにぎりお代わり無いですかー?」
と、返してくる。そりゃあれだけ図体デカけりゃ食べる量も半端ないよなと思いながら、英雄のもとへ行きおにぎりを出してやる。他の物でもいいぞって言ったが、おにぎりを食べたいようだ。
遥香が
「さっきあっちで、結婚がとか聞こえたけど…」
「ああ、俺、結婚することにしたんだ。ファラント王国の第一王女のシルビアと。」
「おめでとう!前会ったとき彼女と別れたばっかりとか言ってたもんな~。あの時は職無し彼女無しだったのに。今や魔王で王女様のフィアンセ持ち!異世界ロマンだな!」
ってデリカシーの無いことを英雄が言って、遥香にどつかれていると、
「…おめでとうございます。」
なぜかハイライトの消えた目で小夜が祝福の言葉を櫂渡にかける。
さっきまで英雄をどついていた遥香は目を輝かせて、
「おめでとうございます!詳しく聞かせてっ!」
って言ってきたがそれを遮って小夜が
「そういえば、あっちで携帯がとかも聞こえたけど!」
「耳がいいな。二人とも。この通信機を見せてたんだ。」
「え、、もろスマホじゃん。私たちの分はある?」
「あるぞ。みんな同じだからな…スマホカバーとか色違いで作ってやろうか?」
「え、いいの?じゃあたし赤!」
と遥香が、そのあと小夜が
「あたし紫がいい。」
最後に英雄が
「俺は黒かな」
といっていたら。いつの間にかやってきたソフィアも
「あたしのは白にしてほしい」
と言ってきたので、ささっとそれぞれのスマホカバーを錬成してやった。
日が暮れて来たので、夜はバーベキューで騒いだ。
この世界なら遥香達が酒類を飲んでも問題無いものの飲み物はお茶やジュースにしておいた。
英雄は大量の肉を前に大はしゃぎしていた。そして、遥香に命ぜられるままに肉を焼き、せっせと遥香、小夜、ソフィアの元へ運んできた。
英雄も無論、運ぶ傍ら、焼けた肉を食べている。運ぶ量より食べる量の方が多そうだな。
英雄の運ぶ肉を受け取り頬張る、遥香、小夜、ソフィア。英雄が肉を焼くのに悪戦苦闘している姿を楽しそうに眺めていた。戦いに赴くとき緊張していたから、緊張がほぐれて本当に楽しそうだ。全員助かってよかったと思いながら櫂渡も肉をほおばった。
櫂渡達はこのあとどうするか話しあった。とりあえず協力関係にある国々に通信で連絡を取る。
フェンダル王国にあずけてあった蜂ゴーレムたちでロゼリアナ王国を偵察してもらうことにした。
偵察してもらっているし、翌日はここでのんびり過ごそうと話し合った。
櫂渡はここは砂漠だしちょっと過ごしずらいから、いろんな植物の種は収納にしまってあるからそれらを使って、一時的に植物魔法で緑化しようかと考えている。
バッタの卵や幼虫は駆除してあるため緑化しても問題ないだろう。
日が改まり前日に話し合った通り、しっかり休暇をとる日だ。
櫂渡は昨晩考えた通り、持っている種と植物魔法で辺りを緑化し、水魔法で大量の水を出しオアシスを出現させる。周囲に日陰を作るようにヤシの木やらを成長させる。
デッキチェアとパラソルを並べて、くつろぐ準備万端にする。遥香、小夜、英雄、ソフィアがやってきて、
「とんでも無いわね。これ、この緑も全部出したの?」
「種やら元になる植物は収納に保管してあったからな、植物魔法で育成したから早めに枯れるけど、まぁ一週間ぐらいはもつかな。今、ロゼリアナ王国内を偵察してもらっているから、とりあえずば休息だ。」
「砂漠だし暑いかとおもったら結構過ごしやすいわね。」
と小夜が不思議がる。
「ああ、ここから少し離れた南側にも森とオアシスをつくってあって、風をそっちの方向から吹くようにしてあるからね。少し気温の下がった風が来るはずだ」
「やっぱ、とんでもないな。戦おうってのが無理があったな。」
と英雄があきれたように言う。
「まぁ、今日はゆっくり休息を取ってくれ。」
と櫂渡が四人と話していると
「シルビアが来たぞ」
と、フェリルから話しかけられた。遥香達と話している間に、フェリルとヨーセルもオアシスの脇に来ていた。一緒にシルビアを伴っている。
シルビアには蜂ゴーレムを使った飛蝗の監視とドローンを使った駆除の効率的な配置を全面的に任せていた。
ロゼリアナ王国内の砂漠の中のバッタの卵や幼虫の駆除は終わったから、運転ゴーレムもつれて車で来たらしい。
「ずいぶん飛ばしてきたのか?」
とシルビアに聞く。
「そうでもないわよ。でも、障害物とかなんにもないしね。センサーもあるし問題はなかったよ。ところどころ、防御用の砦みたいのはあったけど、センサーが避けてくれるし。」
そう言いながら、ソフィア、遥香、小夜、英雄の方を向いて、
「こちらが聖女様と勇者の方々ですね。お初にお目にかかります。ファラント王国の第一王女シルビアといいます。」
「久しぶりですね、シルビア王女。王女のご活躍は聞いております。」
と、ソフィアが思いがけない返しをする。
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