第4話 居住スペース確認

 まずはぐるっと一周、キャンピングカーの周りを歩いてみた。くるっと一周して、これが私のキャンピングカーか~! と、気持ちが昂る。


「はわあぁぁ~、すごい! よき!」


 キャンピングカーはモスグリーンを基調とした車体で、白の縁取りの丸窓がついている。中が見えないように、内側からカーテンが引かれているのもポイント高い。トランク部分は大きく開くようになっているので、荷物の出し入れもしやすそうだ。


「さっそく中に入ってみようか」

『にゃ!』


 車体の側面についているドアに手をかけようとして、はたとする。鍵ってどうなっているんだろう!? と。


 ……鍵がかからないと、安心して過ごせないよね?


 しかし私がドアに触れると、カチャリと開錠されたような音がした。同時に、自身のマナがわずかに使われたようなゆらぎを感じたので、おそらく私のマナが施錠に関わってくるのだろうと予想できた。


「検証はおいおいしたいけど、とりあえず防犯面は大丈夫そうかな……?」


 ということで、私は靴を脱いでキャンピングカーへ上がりこんだ。ドアのすぐ右横にシューズボックスがあったので、いったんそこに靴もしまった。


「おぉ~、思ったよりも広い!!」


 車内はオフホワイトを基調とした色合いで、モスグリーンと、私の瞳のコーラルピンクが差し色として使われているデザインで整えられていた。丸窓は合計で四つあり、天井部分にはダウンライトが仕込まれていて暖かな光が室内を照らしている。

 入り口のすぐ右手側にシューズボックスがあり、左手側には簡易水道が設置されている。その上は、運転席側に上部収納があって便利そうだ。

 そしてすぐ前には、テーブルをはさむように一人掛けのソファが計二脚ある。私とおはぎ、それぞれソファを自由に使うことができそうだ。ソファに触れてみると、ほどよい弾力で……座ってのんびりした時間を過ごしたいと思ってしまう。

 そして車体の後方には、トランク部分にあたる荷物などが置けそうな空間と、靴箱のすぐ横にはもう一つドアがあった。そのドアの横には、窓の下の位置まで収納棚が設置されている。これも便利そうだ。


『にゃ~』


 おはぎが警戒するように、私の肩の上で水色の瞳をキョロキョロしている。すぐ近くの壁に鼻を近づけて、鼻をふんふんさせて匂いをかいだりしているようだ。


「今日からここが、私とおはぎのお家だよ」

『にゃう』


 私の言葉が通じたのか、おはぎが返事をしてから私の頬に頭をすりりと押しつけてきた。どうやらわかってくれたらしい。

 すると、おはぎが私の肩からぴょんと跳んだ。その先は簡易水道だ。陶器のボール型の器があり、その上に水道が設置されている。おはぎはそれが気になっているようだ。


「これはね~」


 私はにやりと笑い、蛇口をひねった。すると、勢いよく綺麗な水が流れ出た。


『にゃっ!』


 おはぎの尻尾がぶわっとなって、『シャーッ!』と声をあげたが……すぐに水だということに気づいたようで、手でちょいちょいっと流水に触れ始めた。


「ふふっ、楽しい?」

『にゃにゃっ』


 どうやら楽しいみたいだ。私もおはぎと一緒に水道の水に触れて、ついでに手を洗っておく。冷たい水が気持ちいいです。

 おはぎはそのまま顔を近づけて、器用に蛇口から流れる水を飲み始めた。


「今一番の問題は、おはぎのご飯だよね……。街か村があったら、ドレスとアクセサリーを売って食料品や生活雑貨を買わなきゃね」

『にゃ』


 今まではおはぎをこっそり飼っていたことと、私への食事もまともなものではなかったため、あまりよいご飯をあげることができなかった。しかしこれからは違う。おはぎにも、美味しいものをたくさん食べさせてあげるからね!


「って、そうだ、もう一つドアがあったんだった」

『にゃう?』


 おはぎが水を飲み終わったのを確認してから、蛇口をしめて水を止める。そして向かったのは、入り口からシューズボックスをはさんで反対にあるもう一つのドアだ。ちなみに、外からキャンピングカーを見たときにこのドアはなかったので……別の空間に繋がっているということになる。


「もしかしてトイレかな?」


 レベルアップしてトイレが設置されたのは、インパネで確認済みだ。

 私がドアを開けると、そこには現代でよく見かける温水洗浄便座があった。何度でも言いたいが、キャンピングカーすごい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る