第8話 新設備

「いい人たちだったねぇ、おはぎ」

『にゃっ』


 腹ごしらえもできたので、私のテンションは上がっている。やはり人間お腹が減っていてはいかんのだ。


「あと20キロくらいでマルルの街だから、そこでいろいろ揃えよう。クッションとかも買って、キャンピングカーを充実させなければ!」


 う~ん、考えただけでも楽しそうだ。

 すると突然インパネからピロン♪ と音が鳴った。



 《レベルアップしました! 現在レベル3》



「わっ、レベルアップした!」


 二回目のレベルアップだ。

 私はワクワクしながらインパネをタッチして、何ができるようになったか確認する。



 レベル3 ポップアップルーフ設置



 なんと!!

 私は慌ててキャンピングカーを街道から草原にちょっと入ったところへ停める。そしておはぎと一緒に居住スペースへ行き、ポップアップルーフの確認を行う。


 ポップアップルーフとは、キャンピングカーの屋根の部分の設備だ。

 天井を持ち上げることにより、上に空間――二階を作ることができる。後方部分が開く形になっているので、走ってきた道が一望できてそう快感がある。

 できあがった空間部分はテントが張られていて、虫などの侵入を防いでくれるし、透明部分があるので空や周囲を見ることも可能だ。

 確認するとテント部分のつなぎ目にはチャックがついていたので、テントを外して開放的に使うこともできるみたいだ。

 床の部分ははめ込み式の板があるので、それを敷くと寝転ぶことだってできてしまう、最高のまったりスペースなのだ……!


「おおおおお、すごい!!」

『にゃ~!』


 おはぎは新しい空間に興味津々で、ふんふんとテントの匂いをかいでいる。そのまま体を擦りつけて、ここは自分の縄張りだと主張しているのがとても可愛いです。


 私もポップアップルーフに上がって、おはぎの隣に座る。

 さすがキャンピングカーの屋根部分ということもあって、遠くまでよく見える。――というのも、どうやら朝陽が昇る時間みたいだ。山の向こうからゆっくり明るくなってきている。


「綺麗だねぇ、おはぎ」

『にゃ~?』


 私は朝陽の美しさに感動したけれど、おはぎは興味がないらしくぐぐーっと伸びをしている。脚を片方ずつ伸ばしているのが最高に可愛い。器用だ。

 そのまま私のところへやって来たおはぎは、ぐりぐりと頭を擦りつけてくる。手の甲をおはぎに向けると、これでもかと頭を擦りつけてきた。


「んん~、可愛いがすぎるんですが?」

『んにゃ~』


 ぐりぐりすりすりと甘えてくれるおはぎに、私はメロメロです。

 しかしおはぎは満足したのか、座っている私の膝の上に乗ってきて丸まってしまった。どうやら眠たいみたいだ。


「そうだよね、今日はいろいろ連れまわしちゃったもんね」


 わずかに聞こえてくるおはぎの寝息に頬を緩めながら、私は優しくおはぎを撫でる。ふわふわのもふもふで、最高級の肌触りだ。

 ……あ、もう膝が温かくなってきた。

 おはぎの体温を感じると、私も自然と眠くなってくる。


「……そういえば、今日は寝てなかった」


 舞踏会で婚約破棄をされ急いでセルフ国外追放をしたのだから、休むどころではなかった。けれどこれからは、好きなときに休めるだろう。

 もう妃教育だってする必要ない! そう思うと、晴れやかな気分になる。

 それに王子よりおはぎと一緒にいる方がいい。


『にゃふ……ん』

「ん? ……寝言かな? 可愛いなぁ」


 おはぎの眉間を撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らしてくれる。

 猫は本来旅などを嫌うと言われているので、ストレスなども溜まってしまっているかもしれない。私が撫でることで、ちょっとでも癒えてくれますように。


 ……これからは、このキャンピングカーがおはぎの家になってくれたらいいな。

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