第31話 山の下へGO

「やばいやばい、高いッッッ!!」

『にゃ~』


 いざ下山!

 ということでキャンピングカーを走らせているのだけれど、上りより下りの方が怖いね! 精神的に!!

 いや、上りも何もしないとバックしてしまうから怖かったけど、ブレーキを踏んでいないと加速してしまうのも恐ろしい。


「無事に下山できますように……!」


 そんな風に祈りながら、私は慎重に慎重に走り進めた。

 ちなみにちょっと大きめの石に乗り上げたときは、キャンピングカーが倒れるかと思ったよ。でも案外キャンピングカーはバランスがいいのか、まったく倒れる気配はなかったけれど……。



 それからちょこちょこ休憩をはさみつつ数時間後、私は無事に下山することができた。


「よかったー!」

『にゃ~!』


 おはぎと一緒に無事を喜びつつ、一度キャンピングカーを停めて軽くお昼ご飯を食べて、山頂から見えた村へ向かった。

 村はキャンピングカーで走って一〇分ほどで到着した。


 三六〇度山に囲まれているこの場所は、大きな盆地のようだ。

 村の周りはぐるりと低い木の柵で囲まれていて、立て看板には『フルリア村』と書かれている。規模から見て、おそらく人口は二〇〇人程度だろうか。

 家はオレンジの屋根にレンガ造りの建物で、端には風車小屋も見える。湧き水が川になって、村のすぐ横を流れているみたいだ。


 私は村から少し離れたところでキャンピングカーをしまい、おはぎと一緒に歩いていくことにした。

 ……とはいっても、おはぎの定位置は私の肩の上だけれど。もしかしたら筋トレになっているかもしれない。猫筋トレだ。これは流行るかもしれない。


「……なんか村だと街より緊張しちゃう」


 街は誰が入っても気にも留められないけれど、こういった村は全員が知り合いというイメージがある。

 ……宿屋とかあるかな?


 私は緊張した足取りで村へ入ると、すぐ近くで薪割りをしていたお兄さんと目が合ってしまった。こげ茶の短髪で、筋肉質な二〇歳くらいの人だ。


「あれ? 行商の人……? でも今日ってそんな予定だったっけ?」

「いえ! 私は商人ではなくて、ええと、そう、旅人です!」


 咄嗟に考えた割に、旅人はなんだかロマンがあっていいよな気がする。というか、旅人以外にしっくりする言葉もないからね。

 ……キャンパーだと通じないもんね。


「へえぇ、旅の人か! うちの村は滅多に人が来ないから、驚いたよ」

「そうなんですね。ちなみに宿屋とかって……」

「あ~、宿はないんだ」


 ですよねー!

 滅多に人が来ないっていう時点で、そうではないかと思っていましたよ。こういう場合、漫画やゲームだと村長の家でおもてなしされたりする気がするんだけど、実際はどうなんだろう?


「だから、大抵の旅人さんは村長の家に泊まってるよ」


 本当だったー!!

 と思ったけれど、この世界もゲームだった。


「村長の家に案内するよ。村の一番奥なんだ」

「あ……ありがとうございます」


 どうやら村では村長への挨拶が鉄板イベントみたいだ。

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