第30話 あの料理

 今日の夜ご飯は、実は前々からやってみたかったことがあるのでそれをします!

 まずおはぎ用の鶏肉は茹でて、私用は皮がパリパリになるように焼いておく。そしてパンを軽く焼いてお皿に載せておいて……。


「じゃじゃ~ん! チーズ!」


 毎度毎度チーズを食べている気がしなくもないけれど、チーズはそのまま食べて加熱して食べても美味しいという万能食材なので、私みたいに料理がそんなに得意じゃなくてもいい感じになる魔法のアイテムなのです。


 おはぎがワクワクしながら鶏肉が茹で上がるのを待っている横で、私は木の枝を取り出した。短剣で削って、先をちょっと尖らせてあるのだ。

 これにチーズをつけて……焚火であぶる!!

 そしてパンに載せて食べるのです。こんなの絶対に美味しいに決まっている。いつもハイジを見るたびに、絶対やってみたいと思っていた料理の一つだ。


 焚火にチーズをあてていると、ゆっくりとけはじめた。


「うわああぁ、いい感じだ」


 火に当てすぎると溶けすぎちゃうので、私はすぐにチーズをパンに載せる。適度なとろみがついていて、チーズのいい香りを鼻いっぱい吸い込む。


「あ~~、これだよおじいさんが作ってくれてたやつ!」


 あのアニメはどの料理も美味しそうで困る。家庭じゃなかなか実践できないので、今回できたことがものすごく嬉しい。


「ちょうど鶏肉も茹で上がったところだし、いただきましょうか」

『にゃあ』


 おはぎの分は食べやすいようにほぐしてからお皿に載せて、私の分はシンプルに塩コショウで味付けをした。


「いっただっきまーす!」

『にゃぐ、はぐっ』


 私は誰も見ていないのだからと大口を開けてパンとチーズにかぶりついた。パンのカリッとした焼けた食感と、とろ~りとろけたチーズの風味が堪らない。


「ん~~、美味しい!」


 毎日このメニューでもいいくらいだ。

 私はパンを半分ほど食べて、鶏肉もいただく。濃厚なチーズと違ってさっぱり食べられるので、塩コショウにしてよかったと思う。


「あ、今度はからあげも作りたいなぁ」


 そのためには油がちょっと足りないので、どこかの街で仕入れる必要がありそうだ。


「せっかくなら、焚火をするとき用の椅子とかもほしいよね。ブランケットがあってもいいかも」


 それで焚火にあたりながらのんびりした時間を過ごすのだ。

 日本だったら乙女ゲームをしてもいいけど、この世界にゲームはないから読書あたりだろうか? それか、刺繍や編み物、小物作りなんかをしても楽しそうだ。

 やりたいことが多すぎて困ってしまうね……!


 私はおはぎと食事を終え、片付けなどをして、キャンピングカーの中で就寝した。



 ***



 翌日、天気は快晴。


「んー、さすがは山の頂上だけあって空気が美味しい!」


 今日は下山する予定なのだが、麓を見下ろしたら何か見えるだろうか? 私は首をかしげつつ視線を下に向けると、山を下ったあたりに小さな村が見えた。


「おお、なんだかのどかな雰囲気の村がある!」


 もしかしたら、光る花のことも聞けるかもしれない。

 幸い、少し頂上から向こう側を見てみたら、来た時と同じように広い登山道が作られていた。物資などを荷車に載せて、あの村と行き来する道なのだろう。


「よしっ! 次はあの村に行ってみよう、おはぎ」

『にゃっ!』


 ということで、下り道に初チャレンジだ。

 ……大丈夫かな?

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