第28話 いざゆかん頂上へ!

 斜面が一気に急になっていて、岩肌が増えた。木々も多少はあるけれど、キャンピングカーが通れる隙間程度はある。


「……ちょっとずつ、ゆっくり進んでみよう」


 それで駄目そうだったら引き返そう。

 私はドキドキしながら、慎重にアクセルを踏む。


 登ってきた道より石が目立つけれど、通れないほど大きな石はない。たぶん、徒歩で通っている人がある程度いるのだろう。

 キャンピングカーは危なげなく、山道を登って行く。


「これは結構……余裕そうかも?」


 落ちてる木の枝や、野球ボール位の大きさの石だったら、森の中でも散々乗り上げて問題なく進んでいる。

 うんうん、いい感じ!


『にゃっにゃっ』


 おはぎも嬉しそうだ。

 私は慎重に運転し、どうにか頂上までやってきた。少し開けていて、地面もありがたいことに平になっていた。

 ちょっと休憩とばかりに、キャンピングカーを停める。


 すると、《ピロン♪》とレベルアップの音がした。


「もうレベルアップ!? 今回かなり早くない……?」


 やっぱり森や山など、険しい場所を進むと経験値の入りが早いのかもしれない。私はうきうきで今回のバージョンアップを確認する。



 《レベルアップしました! 現在レベル7》

 レベル7 シャワー設置



「………………シャワー!?」


 あまりに嬉しい機能すぎて、思わずフリーズしてしまったのを許してほしい。

 私はさっそく靴を脱いで、居住スペースへ移動する。早くシャワー設備を見たいのだ。どういう風に設置されているのだろう。


「さて、さて……ん?」


 居住部分はテーブルとソファ二つがあるのだけれど、奥側のソファに今までなかった仕切りのような壁ができていた。

 あそこに何かあるとみた……!


 さっそく行ってみると、椅子の後ろと棚の間がちょっとした通路のようになっていて、お風呂だとわかるようにのれんが掛かっていた。

 なんとも粋なことをしてくれるではないか。

 のれんをくぐると、今までなかったドアがあった。ドアの前は、狭いが脱衣スペースとして使うことができそうだ。


 いいねいいね!


「ではさっそく、シャワー室を……!」


 ドキドキしながらドアを開けると、天井に設置するタイプのシャワーがあった。壁の下の方には蛇口もついているので、桶などを購入してもよさそうだ。

 シャワー室の広さは一畳弱というところだろうか。壁には二つほどラックが付けられているので、石鹸を置いたりすることができそうだ。


「なるほど、そういうパターンか!」


 日本人的には、手で持つことができるタイプのシャワーがよかったけれど……まあ、そこまで贅沢は言っていられない。

 レベルが上がれば、シャワーもグレードアップしていくかもしれないからね!


「試しにちょっと使ってみよう。水圧チェックは大事っていうからね!」


 シャワーで濡れないように端に移動して、蛇口をひねる。すると、すぐに温かいお湯が出てきた。

 わあ、一瞬でお湯が出てきてくれるのは嬉しい!!


「う~ん、水圧はそこまで強くないね」


 ……残念。

 ちょっと物足りないくらいだけれど、キャンピングカーの中にシャワーがあるだけでよしとするしかないだろう。


『にゃ~!』

「あ、ごめんごめん、急にシャワー出したからびっくりさせちゃったね」


 おはぎがシャワー室のドアの隙間から、こちらを窺っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る