第3話 レベルアップ

 ブオオォォンとキャンピングカーを飛ばして街を出ると、クロードが馬に乗って追いかけてきた。その後ろには、何人もの騎士がついている。


 ……なんで私を追ってきてるんだろう?


「国外追放を言い渡したのは向こうなのにね、おはぎ」

『にゃうぅ』


 日中であれば街道には馬車が行きかっているが、幸い今は夜中。街道を走る馬車はないので、私はアクセルを踏み込んだ。ギュオンと勢いよくスピードが上がり、あっという間にクロードたちの馬を引き離してしまった。

 まあ、馬が自動車に敵うわけがないよね。思わず笑ってしまった。ゲーム補正とはいえ無実の罪を着せられて国外追放されたのだから、これくらいは許してほしい。




 しばらく道なりに走っていると、インパネから《ピロン♪》と音が鳴った。見ると、文字が表示されていた。


 《レベルアップしました! 現在レベル2》


「なんと!!」


 まさかのレベルアップに、私のテンションが上がる。固有スキルのレベルアップ方法はそれぞれ異なるらしいので、私も明確にはわからなかったけど……タイミング的に、走行距離だろうとあたりをつける。


 街道の端にキャンピングカーを停めて、じっくり見てみることにした。自分のスキルのことなのに、まだ何も把握できていないのだ。

 おはぎは疲れてしまったようで、助手席ですやすや眠っている。可愛い。


 運転席の目の前のインパネは液晶で、どうやらタッチパネル式になっているようだ。レベルという文字が書かれていて、それをタップしたら内容が表示された。



 レベル1 キャンピングカー(軽キャンパー)召喚

 レベル2 空間拡張|(トイレ)



「……って、トイレ!!」


 ものすごく大事な機能が拡張されていた。そういえばちらっと中を見たとき、トイレのような空間はなかった。きっと車内のどこかに設置されたのだろう。よかった。心からレベルアップしてくれたことに感謝した。ありがとうありがとう。


 インパネには、中央に現在地から半径100メートルほどの地図があり、左右に燃料計、速度計、走行距離、外気温、時計が表示されている。レベルが表示されている以外は、日本で乗っていた自動車とさほど変わらないようだ。


 しかしそこで、はたと気づく。


「燃料!?」


 自動車なのだから、走るためにはガソリンが必要だ。しかしこの世界は中世ヨーロッパな感じのゆるっとふわっとファンタジー乙女ゲームなので、ガソリンスタンドなんて存在しない。


 ……もしかして、詰んだ?


「あああああどうしよう……」


 駄目元で燃料メーターのところをタップしてみると、画面の中央に詳細が表示された。


「お? ……燃料は――マナ!? ってことは、私が持ってるマナがガソリン替わりになってるんだ!」


 なるほどなるほどと頷いた。確かに考えてみれば、キャンピングカーは私のスキルだ。スキルなのだから、使用するのに私のマナが使われていてもなんら不思議ではない。

 よかった、ガソリンじゃなくて……。


「私は闇属性だから魔法の教師は付けてもらえなかったけど……マナはそこそこあるんだよね」


 無理をしなければ、まだ100キロ程度は走れるみたいだ。詳細のところに走行可能距離が書かれていた。

 マナは休むと自然回復するので、こまめに休憩を取り、夜はきちんと休んでいくのがいいだろう。体調を崩すとマナの回復が遅くなるので、そういった面は注意していきたい。


「よし、次は後ろ――居住スペースを見てみよう!」

『にゃう……?』

「あ、起こしちゃった? ごめんね、おはぎ。今から後ろのスペースを見てみるから、一緒に行こう」

『にゃ!』


 おはぎが元気に返事をしてくれたのを聞き、私は一度キャンピングカーから下りた。運転席と居住スペースが繋がってないのは、ちょっとだけ不便だね。

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