第13話 キャンプの始まり

 昼間の街道は、旅人や冒険者、馬車が多く行きかう。

 さすがの私も目立つのは避けた方がいいとわかっているので、街道から少し外れた草原の中を走っている。

 最初は石とかいろいろありそうだから大丈夫かと不安になったのだけれど、このキャンピングカー、めっちゃしっかり走る……!

 もしかしたら私のマナを消費してタイヤを補正したりしてくれているのかもしれない。自分のスキルだというのに、まだまだわからないことがいっぱいある。

 おはぎは助手席ですやすやしております★


 しばらく走っていると、インパネから《ピロン♪》と音が鳴った。


「よしきたレベルアップだ!」



 《レベルアップしました! 現在レベル4》



 草原のど真ん中なので気にせずキャンピングカーを止めて、インパネからレベルアップの状況を確認する。



 レベル4 簡易キッチン設置



「これは!!」


 今までは簡単な水道設備しかなかったけれど、ついに、ついに……我が城にもキッチン様が設置された!!

 さっそく見なければ!!


 私は靴を脱いで、居住部分へ移動する。

 すると、簡易水道があった周辺が簡易キッチンになっていた。

 水道はシンクになっていて、その横はまな板などを置けそうなちょっとした作業スペースがある。一番奥にはコンロが一口ついていた。

 そして小さいが冷蔵庫もついていた! 急いで購入したお肉を入れて、一安心だ。

 周りにも食器をしまえそうな棚や、調味料ラックが追加されている。


 そして今まであった簡易水道は、出入り口のドアとトイレのドアがある靴箱のところに移動している。

 帰宅時とトイレの後、すぐに手を洗えるという配慮をしてくれるとは……すごいなキャンピングカー! 優秀すぎる。最高。


「せっかくだし、ちょっと早いけど夜ご飯にしようかな?」

『にゃっ』


 ご飯という言葉に反応したのか、おはぎがやってきた。うにゃあぁぁんと鳴きながら欠伸をしてるのが最高に可愛いです。



 まず作るのは、おはぎのご飯。

 買ってきた鳥むね肉の皮を取り、観音開きにする。これで下処理は終了だ。


 マルルの街で購入したお鍋に水を入れて、火にかける。

 簡易キッチンはIH仕様なんだけど……たぶん私のマナ仕様だろう。


「ガスっぽい感じで火が出たら嬉しかったんだけど、まあ仕方ないか」


 サバイバルといえば水と火がとても重要になってくる。

 特に焚火をしてみたい私は、キッチンから火を拝借できたら……なんて思っていたけれど、そう上手くはいかないみたいだ。


 お鍋の中に鶏肉を入れて、弱火でゆっくり茹でていく。

 ご飯にしようとおはぎに言ってしまったけれど、できあがりまでまだちょっとかかってしまう。調理時間のことをあんまり考えてなかった……すまぬ、おはぎ。


「そうだ、せっかくだから焚火もしちゃおう!」


 上手くできるかはわからないけど、やるだけやってみよう。

 お店で加工してもらったタープ(勝手にミザリー命名)も使いたいからね。


『にゃう?』

「おはぎも一緒に焚火にあたろう。きっと暖かくて気持ちいいよ」

『にゃ!』


 ということで、トランク部分に積んである荷物をいくつか持ってくる。一番に使わなければいけないのは、魔物が嫌う匂いの草だ。


「使い方はちゃんと聞いて来たもんね」


 専用の小瓶の中に入れて、火をつける。

 それだけで、一束なら数時間、二束あれば一晩は持つのだと教えてくれた。


「って、火がないんだった!」


 でも大丈夫、ちゃんと火をつけるための道具も買ってきたからね。

 火花を散らす着火石という魔石を加工した魔導具だ。これを二つぶつけあうことで、火花を散らし、火種を作ることができるのだ。

 一応もっと便利な魔導具もあったけど、キャンプ動画を見て焚火の着火に憧れてしまった私は一番原始的っぽい道具を選んでしまったのである。


「ということは……薪集めをしなきゃだ」


 幸いここは草原で、細かい木の枝や葉などはたくさん落ちている。


「なんだか楽しくなってきたぞ~!」

『にゃ~!』


 私はおはぎと一緒に、枝拾いを開始した。

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