第14話 スライムが現れた!

 焚火に適している薪は、ざっくり言えば乾燥しているものだろう。

 厳密にはより適している種類の木などもあるらしいが、残念ながら私にはそこまでわからない。


「あ、これなんかいいんじゃないかしら?」

『にゃう?』


 私は落ちていた小枝を手に取ってみる。

 とても軽いし、十分に乾燥している……と思う。試しに手で折ってみたら、パキッといういい感じの音がした。


『にゃっ!』

「わー、ごめん! びっくりさせちゃったねおはぎ」

『にゃう……』


 私の肩に乗っていたおはぎがびっくりして一瞬で私の頭の上に登ってきていた。瞬間移動したのかと思っちゃったよ。

 おはぎは時折、気配なく移動してることがあるんだよね……。


「うん、これよさそう!」


 私は似たような小枝を拾っていくことにした。

 もし雨が降るようなことがあるといけないから、多めに拾ってトランクに積んでおくのがいいかもしれないね。

 それこそ、お店に売ってる薪みたいに麻縄で縛って積んでおきたい! あの状態の薪の束を見るとテンションが上がるのは、私だけだろうか?


 小枝を拾い終わると、次は太めの枝はないだろうかと周囲を見回す。


「細い枝ばっかりだと、すぐに燃え尽きちゃうだろうし……」


 太い薪がなければ、焚火を長時間保つのは難しい。

 ほかにも、太い薪なら色々な組み方をして、その上にお鍋を乗せてスープを作る! なんてこともできるかもしれない。


「あ、でもそうすると鍋の底が焦げちゃうから、何かの道具で吊るした方がいいかな? フライパンで軽い炒め物をするくらいなら、大丈夫かなぁ?」


 うーん……。

 キャンプはなかなか奥が深そうだ。


 しばらく歩いていると、おはぎが『にゃっ』と鳴いた。見ていると、草原の草がガサガサッと動いているではありませんか。


「え……」


 思わず後ずさる。

 そうだ、この世界にはモンスターが存在するのだった。……でもたぶん、あの揺れは猫が隠れてるんだと思う。絶対。


 どうしよう。


 一応腰には購入した短剣を差しているけれど、今は木の枝を切ったりするために使おうと思っていたわけで……つまりその、あの草の向こうにいるのは猫ちゃんだ。

 と自分に言い聞かせていたけれど、草の隙間からスライムが出てきてしまった。


「スライム!!」

『にゃにゃっ!』


 初めてみた!!

 この世界に生まれて一八年。外に出る機会なんてまったくなかったので、私はモンスターを見たことがなかったのだ。

 スライムは最弱の魔物と呼ばれていて、子供でも倒せるのだという。


 これぞ冒険という感じがして、テンションが上がる。


「もしかして私でも倒せる……かな?」


 ちなみに今の私はクソ雑魚なので、スライム以外のモンスターが出て来ていたら詰んでいたかもしれない。

 ……草原あたりだと、ほかには角ウサギやミツスキーが出てくるはずだ。

 角ウサギは角がはえてるウサギのモンスターで、ミツスキーはこのゲームのマスコットモンスターみたいな位置づけにある、蜂蜜が好きな可愛いモンスターだ。

 両方とも強くはないけれど、私よりは強い。


 スライムは体の中に核というものが存在していて、それを斬ったり突いたりして破壊すれば倒すことができるのだという。

 よく見ると、薄水色の粘液の中に丸い物が浮いている。


「あれが核ってやつかな? ……よし。おはぎ、ちょっと地面に下りて待ってて」

『にゃっ』


 私はおはぎに頭の上から下りるように促して、短剣を構えてスライムを睨みつけた。

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