第25話 快適な新設備
至福の温泉タイムが終わったら、今度は過酷な洗濯タイムだ。今まで着ていた服や下着を洗って、木の枝に張った麻縄に吊るしていく。
途中でおはぎが手伝うと見せかけてじゃれてきたが、洗濯物は死守した。洗ったばっかりでまた汚れてしまっては大変だ。
「よしよし、後は乾くのを待つだけ」
今日は天気もいいし、そう時間をかけずに乾くだろう。
「乾かしてる間に、ご飯にしようか」
『にゃっ』
私が提案すると、おはぎが尻尾をピーン! と立てて返事をした。やっぱり温泉と仕事の後といえばご飯だよね。
今日は昨日ほど時間をかけずに鳥むね肉を茹でて、おはぎはそのまま、私の分には塩で簡単に味付けをして、その上にチーズを乗せてみた。
料理がそんなに得意なわけではないけど、チーズをのせてちょっと溶かせば大抵のものは美味しくなるはずだ。
あとはパンと水を用意すれば、簡単すぎるけどご飯の完成だ。
「いただきます!」
『にゃ~!』
おはぎは嬉しそうにはぐはぐ食べてくれるので、見ているだけで幸せな気持ちになる。
私もチーズをかけた鶏肉にかぶりついて、その美味しさに舌鼓を打つ――にはちょっとお肉が硬くていまいちだった。
……やっぱり一気に茹でちゃったからなぁ。
料理の道はなかなかに厳しいみたいだ。次の街に行ったら、食材を買うときにお勧めのレシピを聞いたりしてみよう。
『にゃふ』
おはぎは食べ終わると満足したようで、前脚を舐めて、顔周りを綺麗にしている。
「ごちそうさまだね」
『にゃ』
私が片付けるためにキャンピングカーに戻ると、ちょうど《ピロン♪》と音がなった。走行中ではないのに、レベルアップしたらしい。
「走るだけじゃなくて、キャンピングカーを出している状態がすでにスキルを使ってる状態、ってことかな?」
走っているときの方が経験値の獲得が多いなどはあるかもしれないが、出しているだけで経験値が溜まってくれるのは嬉しい。
私は食器を流しに置いて、急いで運転席のインパネを見に行く。
《レベルアップしました! 現在レベル6》
レベル6 空調設備設置
「空調設備……だと!?」
私の心がざわめいた。
「そういえば、運転席にはエアコンがついてるけど……居住スペースにはそれらしきものがなかった、気がする」
今は春なので問題なかったけれど、このまま夏を迎えていたら大変なことになっていたのでは……と考えてゾッとする。
「夏にエアコンなしだなんて、私もだけどおはぎだってやられちゃうよ」
『にゃん?』
私はおはぎを絶対守るのだと、ぎゅーっと抱きしめる。そうしたら嫌だったのか、顔に肉球を当てられてしまった。
……おはぎにとっては抗議かもしれないけど、私にとってはご褒美なんですが?
「って、エアコンだった!」
とりあえず確認だ!!
急いで居住スペースに戻ると、どこにエアコンが設置されたのだろうと天井付近を見る。が……見当たらない。
「うん? 空調がついたんだよね?」
エアコンを想像していたのだが、違ったのだろうか。私は首を傾げつつ居住スペースをうろうろして……ハッ!
「なんか見覚えのないのが天井付近についてる!」
それはエアコンではなく、商業施設などにある空調設備と似たような造りになっていた。長細い通気口がついている。
居住スペースの前方と後方、それからトイレにもついていて、どこにいても快適で心地よい温度になっているではないか。
「これ知ってる、CMで見たことある……全館空調ってやつだ!」
私のキャンピングカー、すごい!!
***
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