第22話 天然温泉発見
私は目をキラキラさせながらキャンピングカーを下りた。おはぎは私のテンションの高さにつられたのか、尻尾をピーンと立てて肩に乗ってきた。
「天然温泉だよ、おはぎ! これが秘湯ってやつなのかな~」
『にゃふ~?』
温泉は地中から湧き出ているようで、かなりの熱風を感じる。
その大きさは直径一メートルほどの湯だまりだけれど、そこから流れ出た温泉がすぐ横にある小川の水と混ざり合い、すぐ横にちょうどいい温度の温泉ができあがったみたいだ。
周囲に石や岩などがあるため、露天風呂っぽく見えるのもポイントが高い。
小川と合流した温泉はさらに下流へ流れ、再び小川と合流しているようだ。ずっとお湯がたまっているわけではないので、温泉の状態も綺麗で地面まで透き通っている。
まさに自然の恵みだ!
「ようし、さっそく温泉を堪能――の前に、一応周囲を確認しておこう」
もし覗きにでもあったら大変だ。
「そもそもこの温泉、誰か入りに来る人っているのかな?」
近くの街に住む人や、狩りに来た人が使っている……ということもある。その場合、私が入ってる間にお客さんが来てしまう。
温泉の周囲を歩き回って見て、道のようなものや、人間の足跡がないか確認してみる。
「……動物の足跡はあるけど、人間っぽいものはないね。道っぽいものもないし」
おそらくここを使っている人間はいないか、いたとしても滅多にはいないのだろうと結論付けた。
……もしかしたら、動物が入ったりしてるかもしれないけど。
私が入ってる間に動物が来たらちょっと楽しいかもと思いつつ、入浴準備を始めることにした。
まずはタープをキャンピングカーと近くの木にくくりつけて、温泉のすぐ横に屋根を作る。これだけで開放的すぎる温泉にちょっとした安心感が生まれるね。
それから、二本の木の枝に麻縄を繋いでピーンと張る。ここには使ったバスタオルと、ついでに衣類の洗濯をして干そうという作戦だ。
何着かあるけれど、こまめにやらないと洗濯物が溜まるし着るものもなくなっちゃうからね。
「石鹸はトットの街で買ってあるから、バッチリ!」
もし乾ききらなかった場合はキャンピングカーの室内で部屋干しをしよう。
「焚火にあてれば一発で乾くじゃん! なんて思っていた時期が私にもありました……」
実は焚火をすると、髪の毛や服に燃やした臭いがついてしまうのだ!! 焚火はロマンを感じるけれど、きちんとお風呂に入れる環境が大事だということを実は学んだのです。
……それでも焚火は好きだからまたやるけどね!
キャンピングカーにお風呂が実装してくれたらいつでもどこでもウェルカムさあこい焚火! になるんだけど………………どうぞお願いします、私のスキルさん。期待してるよ!
ということで、今日は焚火なしの予定だ。
「あとはバスタオルに、体を洗う用のフェイスタオルも用意して~っと。ふんふふん~♪」
温泉が楽しみすぎてついつい鼻歌まで。
それから温泉といえばやはり牛乳ではなかろうか。キャンピングカーに冷蔵庫ができたので、トットの街で食料品を買うときに牛乳も買っておいたのだ。
温泉のすぐ横に比較的平らな岩があったので、そこに石鹸、タオル類、冷えた牛乳を置いた。ちょっと時間がかかってしまったけれど、準備はバッチリだ。
「いざ、温泉!」
そう告げて私が服を脱ごうとしたら、バッシャーンと水しぶきが上がった。
「何事!? って、おはぎが温泉に入ってる~~!」
『にゃふ~』
「気持ちいいの……? 猫ってお風呂嫌いだと思ってたけど、おはぎは特殊なのかな……?」
それともずっと外で生活していたから、体を洗いたかったのだろうか?
「まあ、嬉しそうに入ってくれるならいいのかな?」
温泉に動物が入りにくるかな? なんて思ったけれど、おはぎが入ってくれるという可愛い展開に私はにっこりしてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます