第21話 獣道へGO!
居住スペースを覗いてみると、横幅が一メートル、トランクルームの縦幅が二メートルほど広くなっていた。
「おお、すごい!」
『にゃっ』
居住スペースが広くなるのは大歓迎!
そう思って手を叩いて喜んでみたけれど、そういえば外から見たキャンピングカーのサイズはどうなっているのだろうと思って首を傾げる。
運転席から直で居住スペースに来た私は、靴を履いてキャンピングカーの外へ出る。そしてぐるりと一周して……。
「うん、キャンピングカーのサイズは特に変わってないね」
軽自動車を元に作られたサイズのままだ。
やはり空間拡張というだけあって、魔法的な何か不思議な力で内部を広くしてくれたのだろう。
「前回は空間拡張でトイレが設置されて、今回は純粋に広くなっただけ……。スキルレベルが上がっていけば、めちゃくちゃ広くなったりするのかな……?」
それともキャンピングカーらしく、ある程度の広さや大きさまでしか拡張されなかったりするのだろうか?
う~ん、謎が多い。
「とりあえず、走れば経験値が入ってレベルが上がるんだから……走るのみ! って感じかな?」
『にゃうっ』
私が頑張るぞっと拳を突き上げてみると、おはぎも嬉しそうに返事をしてくれた。よし、二人で世界の果てまでドライブだ。
ということで運転席に戻ってきました。
キャンピングカーレベルアップのために、ガンガン走っちゃうよ!
シートベルトを締めて運転を再開させると、私はこのキャンピングカーはいったいどこまで走れるのだろう? という疑問が浮かんだ。
どこまで、というのは、どんな道かということだ。
岩だらけのガタガタの道や、獣道。ほかにも浅い川や泥、急斜面というパターンだってあるかもしれない。
「車体のサイズはそんなに大きくないから、細い道はまあまあ走れると思うんだよね」
タイヤの性能や、エンジンにターボがついているか、四輪駆動なのかどうなのか……など、自動車にはいろいろと装備やオプションによって走りやすい道などがある。
しかしどれも見て簡単にわかるわけではないし、タイヤだって安そうか高そうかのなんとなくしか私にはわからない。
しかしふと、これはガソリン車ではなく私のマナ車だということを思い出した。
「となると、元々の自動車うんぬんとは違う次元ということも……?」
これは走って確認するしかないだろう。もし何かあったとき、ぶっつけ本番で変な道を走りたくはないからね。
となると……まずは獣道にチャレンジしてみるのがいいのではなかろうか。
「よし、ちょっとガタガタ道走るからしっかり掴まっててね、おはぎ」
『にゃう?』
ちょうど森の横を走っていたので、私は思い切ってハンドルを切り、森の中に侵入した。幸い木々はいい感じに間隔が空いているので、キャンピングカーでも問題なく進むことができる。
獣道は木の枝や石などが落ちているため車体が揺れるけれど、難なく走っていく。
「おお~、すごい」
思った以上に快適に走れて、キャンピングカーを大絶賛だ。これならそこそこ斜面がある山にも登っていけるのではないだろうか。
そんなことを考えつつ、私は森の中を爆走した。
しばらく走っていると、野生動物がちらほら見られるようになった。木の上にいるリスを始め、見たことのない動物や鳥がいる。
……襲ってきたりしないよね?
森に入ってしまったのは浅はかだったかもしれないと思いつつ、入ってしまったのだから仕方がない。
「……今度、護身術か何か習おう。そうしよう」
この世界には騎士や冒険者など、戦いを生業にしている人が多くいる。お給料を払えば、何日か教師役をしてくれるだろう。
「街には冒険者ギルドがあるだろうから、そこで相談してみよう」
騎士でもいいけれど、基本的に貴族が多いため、今の私はあまり関わりになりたくない。そのため、平民の兵士か冒険者がちょうどいいのだ。
「……あれ?」
ふと、前方に何かけむりのようなものが見えた。
「なんだろう? 森火事!? ……ではないか」
けむりの色は黒ではなく白だし、何かが燃えている様子もない。私は首を傾げつつキャンピングカーでゆっくり近づいてみて――思わず歓喜の声をあげた。
「温泉だ!!」
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