第20話 蜜ジュース
私はさっそく蜜ジュースを購入してみた。黄金色の液体が炭酸でシュワシュワしていて、コップの縁には花が一輪ついている。
「お洒落~!」
まさに映えというやつだろう。
さすがにおはぎに飲ませることはできないので、水筒で持参している水を飲ませてあげた。嬉しそうに飲んでいるけれど、私の蜜ジュースへ向けられたおはぎの視線が痛い……。
蜜ジュースは爽やかな甘い香りがしていて、男女共に飲みやすそうな印象を受けた。
こくりと一口含むと、シュワッとした強めの炭酸が鼻を抜けていく。その後、口の中いっぱいに花の蜜の味が広がっていく。
「ん~、美味しい!」
炭酸ということもあって、そこまで濃い甘さではない。ほのかな甘みの後味はちょうどよくて、何杯でも飲めてしまいそうだ。
一面の花畑を見ながら、その花の蜜ジュースを飲む……なんとも至福な時間だ。私はのんびり花畑を堪能してから、街へ向かった。
隣国最初の街は、トットという名前の街だった。
名産物は石鹸やオイルのようで、それらを取り扱うお店が多いようだ。そういえば貴族時代、実家でもトットから仕入れていた石鹸を使っていたような気がする。
『にゃう~』
「この街はいい香りがするねぇ。石鹸の香りだけど……おはぎは大丈夫……そうかな?」
もしかしたら猫の苦手な匂いがあったかもしれないと思ったが、おはぎの様子を見る限りでは問題なさそうだ。
でも、猫はハッカの匂いとかアボカドの匂いとか、駄目なんだよね。そこは私がしっかり注意しなければ!
あとは……収入もどうにかしていきたいところだ。
今はドレスを売ったお金の残りが少しと、まだ売っていない装飾品がいくつか残っている。それを当面の生活費にして、もっと遠くへ行きたいところだ。
国外追放先が隣国っていうのはさすがに近いからね。問題はないだろうけれど、故郷から離れているに越したことはないと思っている。
というわけで、この街も長居はせず、買い物だけして先を急ぐ予定だ。
石鹸、包丁、クッション、それから麻縄やらキャンプに使えそうなものや、食料品をいくつか買い込み、私はさっさと街の外へ行ってキャンピングカーに乗り込んだ。
ちなみに石鹸は花畑の花を使って作られているものがあったので、それにしました。
ブロロローとキャンピングカーで草原を走り始めると、遠目には大きな山々が、左手には森が見えた。
高く跳んでいる鳥のピューイという鳴き声が、開けた窓から聞こえてくる。おはぎが『にゃっ!?』と反応して、じっと窓の外を見ているのが可愛い。
「大自然だねぇ」
『にゃっ』
今日はこのまま森沿いを走って、乾いた木の枝を拾って薪としてストックするのがいいかもしれない。
焚火、サイコー!
そんなことを考えていると、インパネから《ピロン♪》と音が鳴ってレベルが上がった。
「おお、やったぁ!」
『にゃあ!』
《レベルアップしました! 現在レベル5》
レベル5 空間拡張
「空間拡張……!?」
これはさっそくキャンピングカーをチェックしなければ!!
私はキャンピングカーを止めて、さっそくおはぎと一緒に居住スペースを見に行くことにした。
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