最終回 やっぱり最推ししか勝たん!
炎の砂漠ダンジョンに現れた九本の火柱のような燃え盛る尻尾を持つ巨大ファイヤーリザードと対峙する真神。
「邪魔者もいなくなったし、俺と遊ぼうぜ」
チラリと出口に向かう御仁田達探索者の姿を見送ると、巨大ファイヤーリザードに向かって不適な笑みを浮かべ、鈍器を向ける。
「グルル………」
巨大ファイヤーリザードは唸り声を上げて火柱のような尻尾の先端から九本の火球が産み出されて次々と射出されていく。
真神は巨大ファイヤーリザードから射出された火球を右へ左へと回避して距離を詰めようとする。
「ガアッ!」
巨大ファイヤーリザードはまた火球を産み出して射出するが、今度は誘導性が付与されてるのか真神が避けようとすると軌道を変える。
「くっ!?」
真神は黄金のガントレットを盾に変形させて火球を受け止めていく。
「くそっ、簡単には近づけさせてくれないか」
火球を受け止めてた衝撃で後方に押し返され真神は悪態をつく。
「ウオオオオオオンンンッ!!」
「げっ!」
巨大ファイヤーリザードは雄叫びをあげると、九本の尻尾から産み出した火球を一つに纏める。
『なんでもありだなっ!』
『さすがにあれはていっ!は無理か?』
ドローンカメラも危険を察知してるのか距離をとり始める。
巨大ファイヤーリザードの九本の尻尾が同時に動くと、巨大火球が隕石のように落下し、地面に接触すると大爆発を起こし、爆風と砂塵にドローンカメラが巻き込まれて、真神の姿が画面から消える。
『ヤバいっ!』
『まじで何も見えねえ!』
『映像が出てるってことは、ドローンカメラは無事っぽいな』
砂塵が収まり、ドローンカメラに砂漠の風景が映り始めると、巨大ファイヤーリザードの姿しか見えない。
(真神さんッ!)
真神さんの姿が見えないことに私は最悪の展開が頭を過る。
巨大ファイヤーリザードは真神の姿を探すように頭を左右に動かして匂いを嗅ぐと、前足を振り上げて地面を叩く。
「外れっ!」
巨大ファイヤーリザードが攻撃した場所とは反対方向の砂が盛り上がると、真神が砂の中から飛び出す。
どうやら地面に潜って巨大火球を何とかしのいだようだ。
「ガアアアッ!」
巨大ファイヤーリザードは放射状の炎を口から吐き出し、砂の中から飛び出した真神に浴びせようとする。
「なんのっ!」
『あれ? 今真神さん、空中で軌道を変えなかった?』
『空気蹴って変えてる』
『スキルシャードかレガシーアイテムのブーツの効果かな?』
視聴者達がコメントするように、真神は空気でできた壁を蹴るように空中で軌道を変えて巨大ファイヤーリザードのブレスを回避する。
「おりゃああーっ!!」
「ギャアアッ!」
真神は空中で巨大ファイヤーリザードの背後に回ると火柱のような尻尾の一つを鈍器で叩き潰す。
巨大ファイヤーリザードは残りの尻尾で真神を追い払おうとするが、更に叩き潰されて悲鳴をあげ、残った尻尾を守るように真神に頭を向けながら前足で横凪に払おうとする。
真神は巨大ファイヤーリザードの懐に飛び込むように前に向かって走りだし、前足の攻撃を跳躍して回避すると巨大ファイヤーリザードの片目を叩き潰す。
「ギャアアアアアーッ!!」
巨大ファイヤーリザードは潰された片目から大量の血を流し、悲鳴をあげながら産み出した火球を無差別に周囲に飛ばしていく。
「あぶねーなっ!」
無差別に降り注ぐ火球の雨の中を駆け抜ける真神。
巨大ファイヤーリザードに近づくと、その頭部に鈍器を振り下ろし、ゴシャッと骨が砕ける鈍い音をドローンカメラのマイクが拾う。
「グオオオオオーッ!!」
「しぶといなっ!」
頭部に重症を負った巨大ファイヤーリザードは最後の力を振り絞るように自分の回りに炎の壁を形成し、真神を近づけさせないようにする。
「
真神は必殺技の前口上を叫びながら跳躍し、更に空気の壁を蹴り上げて高さを確保しする。
「No.28
最後に空気の壁を力強く蹴って勢いをつけて巨大ファイヤーリザードの頭上に落下していき、炎の壁を突き破って巨大ファイヤーリザードの頭部に鈍器を打ち込む。
真神の必殺技を受けた巨大ファイヤーリザードの周囲を覆っていた炎の壁が消滅すると呆然と佇む巨大ファイヤーリザード。
残った瞳から光が消え、尻尾の火柱も消滅するとぐらりと倒れる。
そして、巨大ファイヤーリザードが炎の砂漠ダンジョンの主だったのか、絶命と同時にダンジョンが崩壊していき、周囲の風景が砂漠から記者たちが待ち構える町並みの風景に変わっていく。
「炎の砂漠ダンジョンがクリアされたぞー!!」
外で待ち構えていた記者達が騒ぎだしフラッシュがたかれる。
「真神さん、無事だったんですね!」
先に脱出していたスサノオカンパニーの御仁田が真神に駆け寄る。
「おう、他の探索者は?」
「病院に搬送されていきました。真神さんのポーションのおかげで火傷を負いましたが、全員命に別状はありません。ファイヤーリザード討伐おめでとうございます!」
真神は周囲を見回しながら他の探索者について聞く。
御仁田は先に搬送されたことを真神に伝えると賛辞を送る。
「真神さん! インタビューよろしいですか!!」
「申し訳ないけど、すぐに魔石を加工しないといけないので。話はスサノオカンパニーの御仁田さんにでも聞いてください」
「え? わっ、私がですか!?」
真神は殺到してくる記者達を押し退けて車に乗り込む。
話を振られた御仁田は戸惑うが、そんなこと関係なしに報道陣に詰め寄られて埋もれてしまう。
「本日の配信はここまで。良ければチャンネル登録と高評価よろしくお願いします! ではまた~」
真神は車の中で最後に締めの挨拶をして配信は終わる。
『おつー』
『なんか今回急いでる雰囲気なかった?』
『インタビューに応えず、配信の締めもいつもよりおざなりだったような?』
(それだけ加奈子ちゃんのために動いてるのよ!)
配信終了後も視聴者達が真神の行動に対してあれこれ意見を書き込んでいく。
私は事実を知らせたいが、口止めされているためにジレンマに苦しむ。
配信翌日、勤務先の病院に出勤すると、加奈子ちゃんの病室に真神さんがきていた。
「私、本当に助かるの?」
「未来をプレゼントするって約束しただろ」
いつものジャージ姿の真神さんが加工された魔石を加奈子ちゃんに見せてる。
魔石は握り拳大で、深紅のルビーのように輝いている。
加奈子ちゃんの両親は娘が助かったことを喜ぶように抱き合い泣いている。
「私………生きてもいいの?」
「もちろん!」
加奈子ちゃんは何度も魔石と真神さんを見比べる。
「私、手術受けます!」
加奈子ちゃんは生きるために手術を受けることに同意し、手術室へと向かう。
「あの………」
「ん?」
手術室に向かった加奈子ちゃんを見送った両親が真神さんに声をかける。
「この度は本当にありがとうございます。魔石の代金なんですが………」
加奈子ちゃんの両親は恐る恐ると言った感じで今回の魔石の代金について話す。
「あ、それね。一生かけて払ってもらうから」
「もちろんです! 石にかじりついてても!!」
ボスクラスのファイヤーリザードの魔石ともなれば億単位になる。
加奈子ちゃんの治療費だけでもかつかつだったご両親は覚悟を決めたように頭を下げる。
「支払方法はあの子のこれからの人生を一緒に幸せに暮らすこと。定年退職しようが老人になろうが払い続けて貰うから」
「へ?」
真神が支払方法を伝えるとご両親はキョトンとした顔になる。
「今までずっと病気に苦しんできたんだ、これまでの分を取り戻して家族と貰わないと割に合わないだろ」
「あ………はいっ! 必ず、必ず一生かけて払い続けます!!」
加奈子ちゃんの父親は涙を流しながらその場で真神さんに向かって土下座する。
母親も深々と頭を下げて、ポタポタと涙で床を濡らす。
「それじゃギルドに報告があるから一旦帰るね」
真神さんはそう言うと病院を出て行こうとして、足を止める。
「あ、条件追加で。今回の話他言無用でお願い。下手にたかられても困るし」
真神さんは追加でそう言うと、今度こそ病院から出ていく。
「やっぱり最推ししか勝たん!」
私は真神さんの後ろ姿を見ながらこれからもずっと応援し続けようと決意した。
「推しのダンジョン配信探索者が色々オカシイ」完
推しのダンジョン配信探索者が色々とオカシイ パクリ田盗作 @syuri8
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます